晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

髙田郁 『あきない世傳金と銀(五)転流編』

2021-10-02 | 日本人作家 た
十月に入って初投稿。このシリーズの前の作品「みをつくし料理帖」がドラマ化されて映画化もということで、「あきない世傳金と銀」も映像化の話とかあるんかいな、などと思ったのですが、ちょっと今作は、公共放送でやるのはちと難しいかな、と思いました。ああでも「吉原裏同心」も公共放送でやったことですし、やれますかね。タイプ的に昼ドラのドロドロ系っぽいですが。

五鈴屋にとって恩のある同じ天満の呉服商「桔梗屋」が、川向こうの「真澄屋」との業務提携の話と思いきや、じっさいはほぼ乗っ取られるような話で、これを知った桔梗屋の主の孫六は卒中で倒れます。(川向こう)とは、天満から見て大川(淀川)の向こう、北と南の商業エリア。川向こうのほうが商業地として歴史も古く、商売の規模も川向こうのほうが大きく、天満は格下扱いされています。同じ呉服商でも天満は(掛け売り)といって期日を設けて後で支払ってもらう信用取引で、金利手数料(掛け値)が価格に上乗せされますが、この営業スタイルがほとんどで、一方北と南は(店前現銀売り)といって客が店に来てその場で決済する、いわゆる(掛け値なし)の営業スタイルがほとんど。真澄屋は販路拡大でほとんど騙し討ちのようなかたちで桔梗屋を手に入れようとしますが、天満の呉服商仲間は猛反対。結局「契約金の銀二十貫を戻してくれれば話をチャラにしてやってもいい」というので、幸が「うちが出します」と宣言。どうにか桔梗屋を守ることに成功します。

話はそれますが、江戸では主に金貨を用い、単位は(両、分、朱、文)で、大坂では主に銀貨で、単位は(貫、匁)でした。交換レートは一両が六十匁なので、銀一貫だと約十六両(一貫=千匁)。現在の金額に換算すると江戸のいつごろかにもよりますが、分かり易く「一両=十万円」とすると、銀二十貫とはけっこうな額ですね。

ここで問題が。「桔梗屋」の屋号をどうするか。主の孫六は「五鈴屋が買い取ったんだから五鈴屋になる」というのですが、奉公人たちはかわいそう。かといって桔梗屋を残すのも「上納金逃れのためだろう」なんて痛くもない腹を探られるのもいやなので、幸は「当面は五鈴屋を名乗ってもらい、今の桔梗屋の奉公人たちが頑張って独立したら屋号を桔梗屋にすればいい」と提案。これで幸は桔梗屋の番頭をはじめ奉公人たちのハートをがっちりキャッチ。

江戸進出を具体的に考え出したり、幸の故郷の津門村から妹の結が五鈴屋にやって来て暮らし始めたり、反物ではなく帯を主力商品にしたりと大忙し。
というわけで「次巻につづく」と平和に終わってほしかったのですが、そうは問屋が卸しません。いちおう背表紙では「新たな試練」と書いてありましたが、うーん、どうなんでしょ。

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