晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

奥田秀朗 『ガール』

2010-02-05 | 日本人作家 あ
フランスのシモーヌ・ド・ボーヴォワールという女性が「女の人が
男の人と同じことをやったところで、それは真の意味での男女
平等ではない」という言葉を残したのですが、昨今の「草食系」
だの「肉食系」だのといったブームは、男女雇用均等法ができて
20年以上経ち、しかし未だに社会では女性の地位向上は男性と
同等には遠く及ばず、男性と同じレベルの仕事をしたとしても
「女にしてはよくやった」、ミスをすれば「女だから」、そして
賢い女性はたとえ大手企業総合職に入ったとしても、20代の
うちに寿退社なので、結局世の中は変わっておらず、そうして
かつて全否定されていた男性の「おれについて来い」風な価値観
が見直されてきたのでしょう。

じゃあだからといって、世間の草食系を忌み嫌う女性は「女らしい」
かというとそうでもなく、男性ばかりに強くなれと要求しても、
それはフェアではありません。

まあ、しょせんはブームなので、もう5年もすれば、またマッチョな
男性の価値観は否定されるんでしょうけど。

『ガール』は、30代OLたちの、孤軍奮闘あるいは社内の身の置き方
などを描いた短編集。
役職につくも、部下の扱いと態度に悩む女性社員の話、独身ながら
マンション購入を考える女性社員の話、ガールでい続けるのは現実的に
つらくなってきた女性社員の話、子育てを言い訳にしたくなくても
つい家庭の問題を仕事に持ち込んでしまう女性社員の話、新人研修
で好男子の指導につくも周りの若いOLの好奇からなぜか嫉妬して
しまう女性社員の話。

男性作家の描く「女性」は、ちょいちょい理想が入りがちですが、
『ガール』に登場する女性の描き方は、まあおよそ男性の求める
理想像とは違う、現実的で、しかもその現実をただ毒々しく描く
のではなく、皮肉的に、ユーモアも交えて、みんな愛すべきキャラ
クターとなっています。

ただ、ひとつ気になったことが、すべての話に出てくる30代OLが、
人物描写から推察するに、おしなべて容姿は良いということ。
話の中で独身の人物は「その気になればいつだって結婚できるん
だから」といった雰囲気が感じられます。

報道などで「美人OL殺人」とか「美人プロゴルファー」というふうに
なぜか容姿がタイトルに乗っかるのですが、これは男性上位な世界の
女性の捉え方なのでしょうね。

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