晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

葉室麟 『乾山晩秋』

2021-11-21 | 日本人作家 は

ここ最近のプライベート話。仕事に行くときに水筒にお茶など入れて持っていくのですが、500ミリのやつなんですけど、家から車を運転しながら飲んで職場に着いて仕事してる最中や食事の時に飲んでまた運転して家に帰るまで飲んでってやってると500ミリじゃとうてい足りないので、途中のコンビニに寄ってペットボトルのお茶を買ったりしてこれじゃイカンということで、今使ってるのは車内用、あと仕事のとき用にと新しい500ミリのマイボトルを買いました。なぜ前のは「水筒」で新しいのは「マイボトル」なのか。前のはホームセンターで買ったやつで、新しいのはイギリスのブランドで、ステンレス製のオシャレなデザイン。

 

はい、鼻持ちならないブランド野郎です。

 

この作品は短編集で、共通しているのは、主人公が、テレビのお宝鑑定番組などで聞いたことのある、戦国・江戸時代の画家や陶工。この時代の主流といえば狩野派ですので、5話中3話は狩野派にまつわる話。

 

有名過ぎる兄、尾形光琳。その弟も、後世になって有名にはなるのですが、どうにもくすぶっている尾形乾山。野々村仁清に弟子入りした陶工。お兄さんは生前、超有名人でしたが内証は豊かではありませんでした。ある日のこと、京の乾山の家に男の子を連れた女性が来ます。ということは、光琳の子なのか。という悩みの種がある中、乾山の焼き窯が廃止されるという知らせが・・・という表題作「乾山晩秋」。

 

狩野源四郎が出かけようとしたところに、土佐光元が絡みます。土佐家は朝廷の絵師。一方、狩野家は幕府御用絵師。「近衛の家に向かうなら急いだほうがいいぞ」と意味深な言葉を投げかけます。源四郎が近衛家に着くと、織田信長の命令で家が破壊されています。襖絵や屏風絵を収めたばかりで、この所業に腹を立てますが、じつは、御邸が壊される前に、信長のお付きの小姓が絵画を持ち出していたのです。「ならず者の田舎大名にわたしの絵の価値がわかるもんか」と思っていた源四郎のもとに、その小姓が訪ねてきます。これからは信長様の天下になるので、ぜひ信長様の絵師になっていただきたい、というのです。ですが、この当時、信長および将軍の足利義昭は土佐家を重用しています。

数年後、源四郎は永徳と改名します。永徳は信長に呼び出され、近江の安土山に城を築くので、その障壁画を書いて欲しいと・・・という「永徳翔天」。

 

甲斐国の武田信玄のもとに、越前朝倉氏からの使者がやってきます。その中に絵師がいるというので、信玄は肖像画を描いてもらいます。絵師の名は長谷川又四郎信春。のちの長谷川等伯です。信春は能登の武家の生まれでしたが染物屋の長谷川家に養子に出されます。武田家から肖像画の報奨金をもらった春信は能登に帰る道中、一緒にいた侍に報奨金をよこせと脅されますが逃げて谷を転がり落ちます。猟師に助けてもらい、家に連れてってもらいます。するとそこの娘が「わたしを能登に連れてって」と・・・という「等伯慕影」。

 

京は島原の遊郭で宴会が開かれています。招かれていたのは井原西鶴。西鶴は宴会にいた花魁の着物に目を留めます。花魁に聞くと、その着物の絵を描いたのは「清原雪信さま」というではありませんか。幕府の御用絵師で狩野探幽の姪の娘である雪信がなぜ京にいるのか。花魁にたずねると「長い話になりますえ。恋の話どす」というのですが・・・という「雪信花匂」。

 

絵師の多賀朝湖は、知り合いから「面白い儲け話がある」と聞きます。朝湖はのちの英一蝶。遊びが過ぎて狩野派を破門され、絵師というよりは幇間みたいな暮らしの朝湖はその話に乗ります。なんでも、吉原の噂話をするだけで金がもらえるというのです。ところが、その話す相手というのが、大奥の奥女中というのですが・・・という「一蝶幻影」。

 

現代風にいえば「アーティスト」が主人公の話ですが、身も蓋もない言い方になると生きていくのに特に必要のない職業、職種ではあります。まあそれをいったら武士も江戸時代の元禄あたりからぶっちゃけ無用な存在ではあったのですが、この人たちのもがきながらも必死に生きてる様は傍から見てる分には面白いです。手先は器用でも身過ぎ世過ぎは不器用な人たちですから家族にしたらたまったもんじゃありませんけどね。

 


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