晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

佐々木譲 『エトロフ発緊急電』

2013-09-04 | 日本人作家 さ
基本的に読書タイムは寝る前の1時間くらいでして、ベッドに横に
なりながら小さなライトを点けるのですが、この時期はそのライト
が熱くて本なんか読んでられなくなるので、ちょい涼しい夜でないと
読めません。じゃあ電球をLEDに替えればいいだろという話ですが、
LEDだと明かりが弱いんですよね。

以上、更新が遅れた言い訳でした。

さて、今年に入って「警官の血」を読んで、ようやく佐々木譲の面白さ
に気がつきました。この『エトロフ初緊急電』は初期の作品で、山本周五郎
賞、日本推理作家協会賞長篇部門、日本冒険小説協会大賞の3冠を獲得。

話は、1938年のスペインから始まります。36年から39年にかけて
スペイン内戦があって、ここで謎の東洋人という男が登場します。名前は
ケニー。

そして舞台は日本へ移ります。昭和16年1月。アメリカ・イギリスとの
戦争はもはや避けられないところまで追い込まれていた当時の日本、帝国
海軍連合艦隊司令長官、山本五十六は、対米戦にあたり、ひとつの答えを
出します。それは、ハワイに集結している米国海軍を先制攻撃する、という
もの。
それまでの予想は、まずフィリピン、グアムで米国海軍と戦い、主力部隊
を日本におびき寄せて、という艦隊決戦だったのですが、山本は、もう艦隊
決戦は時代遅れで、対米戦は航空母艦が主力になると予想していたのです。

この計画を軍令部の検討課題にしてもらおうと、部下の大貫中佐を呼び、
東京まで計画書を極秘で運んでもらうことに。

同じ月の北海道、函館。水産加工場で働いていた岡谷ゆきは、社長に呼ばれて、
不景気を理由にクビに。
ゆきは北海道の択捉島出身。ロシア人とのハーフで、岡谷家は「駅逓」といって、
公共交通機関が無く、馬が主要な交通手段の島内で、官馬を管理し、宿泊所も
やっていて、それなりに裕福で、しかも歳を重ねるごとに美しくなっていって
それが同年代の女子からは羨望と嫉妬の目で見られます。
やがてゆきは根室の高女に進学、そして19歳になって、駅逓に泊まりに来た
函館出身の写真家を追って択捉を出ます。

それから5年、写真家の愛人となるも捨てられて、水産加工の職も失い、どうし
ようかと思っているところに実家から手紙が・・・

択捉に戻ったゆき。伯父が亡くなり、ゆきは駅逓の後を継ぐことに。

ここで舞台はニューヨークへ。ケニーという謎の東洋人は、アメリカに戻り、
今では暗殺請負人のようなことをしているようです。ニューヨークで”ひと仕事”
を終えて、次はカリフォルニアへ。そしてまた”仕事”を終えて逃げようとした
とき、追っ手が。逃げるケニーの前に一台の車が。敵か味方かわかりませんが
とりあえず車に乗るケニー。
ところが、その車内にいたのは、米国海軍で、ケニーはサンディエゴにある基地
に連れて行かれることに・・・

ケニーことケンイチロウ・サイトウ、斉藤賢一郎は、アメリカ生まれで両親は
日系移民。そんなケニーに与えられた任務は、日本に潜入して情報収集、ようは
スパイ活動。

さっそく偽造パスポートで入国するケニー。そこで、案内人に連れられて向かった
先は、東京の教会。そこでスレンセンという宣教師と会います。
30歳くらいの北欧系のスレンセン。日本に来る前は中国に宣教に行っていたの
ですが・・・

ケニーは、スレンセンや案内人の金森の協力のもと、諜報活動をはじめます。
そして、海軍艦隊がこの年の11月に”ある場所”に集結することを突き止めます
が、憲兵に捕まりそうになり・・・

このブログ冒頭で「暑くて読む気にならない」と愚痴ってしまいましたが、じっさい
読み始めたら手に汗握る緊迫シーンの連続で、もう夢中になってあっという間に
ラストに。
スパイアクション的な面白さもあり、この時代の日本の暗黒的な空気感というのも
肌にチクチク刺さるように伝わってきます。
コメント
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