晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

服部真澄 『GMO』

2011-12-26 | 日本人作家 は
何の作品か忘れてしまいましたが、故・児玉清さんが、服部真澄
と真保裕一の作品は海外に“輸出”すべき、みたいなことを書いて
いて、それはもう、強く肯きました。

この『GMO』も、アメリカ北東部、南米と、服部真澄作品では
お馴染みの海外が舞台で、主役は日本人。海外を舞台にする理由
としては、例えばCIAといった諜報機関が、まあ日本にもある
にはあるのですが、どうにも馴染みが薄く、そういった「怪しげ」
な組織を使えるという点では、やはりアメリカ辺りを活動範囲に
するのがいいのではないでしょうか。

この『GMO』はGenetically Modified Organismの頭文字で、
意味は「遺伝子組み替え食品」。アメリカ在住の翻訳家、蓮尾一生
が、あるワインに関する書籍の翻訳依頼があり、そこからトラブル
に巻き込まれ、いや自分から巻き込まれに行った、という話なの
ですが、物語は、蓮尾の住む隣家が火事で全焼するところからはじ
まります。

その家は、あまり近所付き合いの無い家庭だったのですが、蓮尾は
シングルトン家の息子アダムと(親友)と呼べるくらいの仲。
といってもアダムは8歳で、生まれつき片手が無く、それでもそん
な不自由を感じさせないほど、ボートを操縦したりして、日本では
かつてジャーナリズム作家として一躍時の人となるも、ある不始末
から落ちぶれてしまい、アメリカへ移住し、堕落しそうな蓮尾にと
ってはアダムは大切な存在でした。

蓮尾の家の倉庫に眠っていたワインも燃えていまいます。ワインを
大量に保管していたのは、著名なワインジャーナリスト、シリル・
ドランの著作の日本語翻訳を手がけるにあたって勉強しようとして
集めたもの。
地元警察に聞く限りでは、放火の疑いがあり、さらに家に火がつけ
られる前に一家は殺されていたというのです。

消沈した蓮尾でしたが、ここで落ちるところまで落ちるわけにいかず、
有名な科学ジャーナリスト作家、レックス・ウォルシュを訪ね、新作の
翻訳権を獲得します。が、レックスから提示されたのは、契約書を交わ
さずに、前金として150万ドルを払ってほしいというもの。

シリルの作品を翻訳することで一度本人に会うことになり、あるパーティ
ー会場へ。そこでシリルと彼女の夫で有名なワインコンサルタント、
ティエリ・ドランと口論をしているところに出くわします。
そしてシリルが一人になったところへ話しかけようと蓮尾が近づくと、
パーティーのホスト役である大手アグリ会社「ジェネアグリ」社長の
ダグラス・タイラーにいきなりぶん殴られ・・・

この「ジェネアグリ」という会社は遺伝子組み替え食品の世界シェアの
トップで、農作物の安定供給といえば聞こえはいいですが、かなり「悪
どい」手法で儲けているのです。
そんなジェネアグリと、ティエリ・ドランが、南米のボリビアで何かの
研究と新ビジネスを手がけていると聞き、シリルは蓮尾を連れてボリビア
へ向かうことに。

蓮尾はアダムの死の真相も知りたくて、探偵にお願いします。そこで
浮かんできたのが、麻薬ビジネスでした。なぜアダムは殺されなければ
ならなかったのか。

そこに、レックス・ウォルシュが、一方的に翻訳をキャンセルしたいと
言ってきて、前金は返すとのことですが、いっこうに振込まれません。
しかしボリビアへ向かおうとしたその日、レックスから原稿が届きます。
その原稿を出した先はなんとボリビアでした。

はたしてボリビアでは何が行われているのか。麻薬ビジネスはアダムと
どう関係してくるのか。そしてシリルと蓮尾の見たものは・・・

とにかくスケールの大きい作品。フレデリック・フォーサイスやジェフリー・
アーチャー的な、そしてテーマも、現代に警鐘を鳴らす、マイクル・クライトン
的な、海外のアクションエンタテインメント作品がお好きな方はハマること
請け合い。

コメント
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