晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

ネルソン・デミル 『プラムアイランド』

2024-01-31 | 海外作家 タ
もしかしてこれが今年に入って初投稿かしら、と思って当ブログを見たら前回の投稿が去年の大晦日。つまりそういうことです。
というわけで今年もよろしくお願いします。

さて、ネルソン・デミル。個人的にすごく好きな作家ではあるんですが、日本ではあまりメジャーというわけではないようで、たしか他の作品のあとがきで故・児玉清さんでしたっけ、日本での知名度がいまひとつなのを残念に思ってるとかなんとか。

この作品はジョン・コーリーシリーズの第1作目。2作目「王者のゲーム」と3作目「ナイトフォール」はすでに読んで、まあ順番がバラバラではありますが、前作を読まないと理解できないといったふうではありません。

ニューヨーク市警殺人課刑事のジョン・コーリーは、勤務中に銃で撃たれて負傷し、今は療養休暇中でロングアイランドの伯父のコテージにいます。ある日のこと、この地域の警察署長であるマックスがコテージにやって来ます。そこで、トムとジュディのゴードン夫妻について知ってるかと訪ねます。知ってると答えると、マックスは「現場を見てほしい」と頼みます。というのもこの地域には殺人課の刑事はいないので、ふたりと知り合いだったコーリーにお願いするのがいいということ。ゴードン家は裏庭がデッキになっていて海に面していて、階段を降りるとボートが繋留されています。ふたりは銃で頭部を撃たれてデッキで横たわっています。隣の家の住人は銃声は聞こえなかったと話しています。

そこに、スーツを着た女性がコーリーに「どなたですか」と聞きます。女性は殺人課刑事でこの事件の担当のベス・ペンローズといい、マックスから依頼されたと話すと名前を聞いて「あのときの・・・」と思い出します。

ゴードン夫妻は、ロングアイランドの端から離れたプラムアイランドという名の小さい島にある国立の生物研究所の科学者で、コーリーはふたりのボートに数回乗せてもらっていて、ボートにアルミの箱がないことに気づきます。ひょっとしてふたりは研究所の未知のウィルスを勝手に持ち出してアルミの箱に入れたのを何者かに撃たれてウィルスが奪われた・・・などと考えます。

捜査チームはプラムアイランドの研究所に行って調べることに。ですが特にこれといって解決につながることはわかりませんが、島に渡るフェリーがあるのにふたりはたまに自家用ボートで通勤していたのをコーリーは知っていたので、それについて聞いても事件とは関係なさそう。そして、持ち出したのはウィルスではなく、ひょっとしてワクチンなのでは、それを内緒でどこかの組織に売って大儲けしようとして交渉が決裂して殺されたのか。

捜査で、ふたりが海沿いの使い道のなさそうな荒れた土地を購入していたことがわかり、土地を売った老婦人に聞いてみても、じっさいにその土地に行ってみても、怪しいことは何一つ見つかりません。電話の通話記録から地元にあるワイナリーのオーナーを訪ねて聞いてみてもわかりません。
ところでふたりはこの地域の歴史協会に参加していて、古い資料や数百年前の建築物などの研究をする会なのですが、その協会の会長にコーリーは会ってみることに・・・

はたしてふたりはウィルスかワクチンを持ち出して謎の組織に売ろうとしたのか。でなければなぜ殺されなければならなかったのか。

物語の展開はアメリカの歴史が関わってきて、ただの殺人事件ではなく歴史ミステリーも絡んできて、ものすごく壮大なことになってきます。
ネルソン・デミルの作品は、本筋の話の面白さもさることながら、なんといっても醍醐味は思わず笑ってしまうセリフや描写。ここにオフザケはいらないというようなシリアスなシーンでも笑える登場人物の会話を入れてくるのですが、それが不思議と邪魔になっていません。
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帚木蓬生 『襲来』

2023-12-31 | 日本人作家 は
今年の読書の投稿が17。このブログをはじめた当初は目指せ年間100冊なんて思ってましたが、まあ今年はちょっと学校のほうが忙しかったのでしょうがなかったのであります。

というわけで、帚木蓬生さん。この作品のタイトルの意味は元寇ですね。モンゴル帝国のフビライ・ハンが日本を2度に渡って攻めてきて、嵐に遭ってほうほうの体で帰っていったという、例のやつ。といってもこの作品のメインテーマは日蓮とその弟子の見助の話。

安房国(現在の千葉県南部)の片海(現在の小湊)の漁師、貫爺さん。一緒に住むのは孫ほど年の離れた見助という少年。じつは見助はみなし子で、ある嵐の翌朝、壊れた船に男女の遺体と泣いている赤子がいたのを見つけたのが貫爺さんで、乳を分けてもらったりしながら子育てをします。魚とり名人の貫爺さんから船の漕ぎ方や釣りのコツなどを教えてもらいますが、見助が13歳のとき、貫爺さんは亡くなります。
この片海一帯は下総国の守護である千葉氏の飛び地の所領になっていて、千葉氏の家来の富木氏が年に数回片海にやって来ては貫爺さんが魚や貝を差し上げたりしていました。貫爺さんの葬儀は富木様も訪れ、さらに清澄寺から僧侶までも来ます。そこで富木様は見助を呼び、僧侶に「この子が片海で貫助に拾われた見助です」と紹介します。その僧侶は「気落ちしているだろうがそなたにはきっと良い人生が待っている」と見助に言うのですが、拾われたような自分がなんで幸せになるのだろうと不思議に思います。

富木様に魚や貝を届けるのは見助の役目となり、ある日のこと、獲った大鯛6匹を館まで持っていくと、富木様に呼ばれます。すると、貫爺さんの葬式の時に来た僧侶がいます。この僧侶は清澄寺の蓮長といい、蓮長も片海の生まれで、12歳で清澄寺に入って18で鎌倉に上り、その後比叡山で修行して、法華経こそが民草を救う教えであることを見つけます。しかし時は鎌倉、念仏宗や禅宗が全盛で、清澄寺でも念仏に染まっていて蓮長は危険思想とみなされ、地頭の東条景信に命を狙われるようになり、蓮長は清澄寺を出て行くことに。そして、蓮長の教えに賛同するふたりの僧に、新しい宗派を立ち上げて名前も日蓮にすると宣言します。

そうして日蓮は鎌倉へと旅立ちます。その目的は、数年のうちに国中が天変地異で荒れ果て国が乱れ、さらに外敵が襲来すると予言され、それを防ぐには国主が法華経に帰依すべし、ということなのですが、つまり現在の北条家の政権批判です。そこで富木様は見助に日蓮との仲介役になってくれと頼みます。そのために数の数え方と字を覚えてくれということで、見助は練習をします。翌年、富木様が片海に戻ってきて、練習の成果を披露し、富木様を驚かせます。すると、清澄寺の浄顕坊という僧といっしょに鎌倉の日蓮のもとに行って荷物を届けてほしいというので、見助はあのお坊さんに会えると喜びます。そうして鎌倉の外れの松葉谷というところの小屋に着きます。

日蓮は鎌倉で辻説法を行いますが、その内容とは現政権批判と主流の宗派の批判、この国はだめになる、それを防ぐには南無妙法蓮華経を唱えなさい、といったもので、信者が少しづつ増えますが、同時に日蓮を憎む者も増えます。
そんな中、日蓮が駿河国にある実相寺に一月ほど滞在するので見助がお供をすることに。そこで出会った伯耆坊という少年僧がいるのですが、日蓮の門下に入りたいと告げます。
鎌倉に戻った日蓮は、書き上げた「立正安国論」を北条家に上奏します。ところがある夜、草庵が襲撃を受け燃やされ、見助は日蓮といっしょに裏山へ逃げ、いったん下総国の中山にある富木様の館で身を寄せることにします。
そこで、日蓮が見助を呼び、「対馬まで行ってほしい」と頼むのです。立正安国論によると他国の侵略は西方の海の向こうからで、最初に攻めるのが対馬であろうというのですが、今のところ対馬の守護に警戒せよという命令は出ておらず、見助に偵察に行ってほしいというのです。
下総国から鎌倉へ、途中の駿河で実相寺に寄り、京の都から難波、播磨へ、そこから瀬戸内を船で博多へ。そして肥前小城の千葉氏の領地に着いて、書状を渡します。そして、馬場冠治という武家といっしょに対馬へ・・・

というあたりで上巻が終わって、下巻になると史実とおりに実際に海の向こうから蒙古が船で来ます。対馬も壱岐も壊滅状態、いよいよ九州上陸となったところで嵐に遭って朝鮮に引き返します。そこで幕府はようやく防衛のために兵を九州に派遣し、博多の海岸に石築地を作ることになりますが、対馬と壱岐の防衛は無視。二度目の蒙古襲来も嵐で引き返します。これがのちに「神風」と呼ばれるようになるのですが、それはさておき、見助が対馬に滞在中、ずっと日蓮と文のやり取りをしていて、その間に日蓮は流刑されたり、甲斐国の身延というところに移ったことを知り、そして日蓮が病に伏せていると知って、日蓮のもとに帰る決意をするのですが・・・

日蓮の本弟子「六老僧」のひとり、日興は実相寺にいた伯耆坊で、日蓮亡きのち、身延山を下りて別の流派を立ち上げます。

いくら尊敬する方のたってのお願いとはいえひとりで20年以上も九州に行かせるのは日蓮さんちょっとあんまりじゃないのと思ったりもしましたが、見助本人が「日蓮さまの手足であり耳目になる」ことを幸せで喜びに感じているならどうしようもありません。
日蓮の布教の「お前らは間違ってる、このままじゃ地球は終わる、俺のいうことを聞け」という、現代のラップバトルよろしく煽っていくスタイルで味方ばかりか敵も増やしていくんですけど、古今東西どこも宗教家はそうなんですよね。まあ当時の教育水準だとそういった恐怖心が結局のところ一番有効なんではありますが。

さて、こんな大晦日に今年ラスト投稿。また来年もよろしくお願いします。良いお年を。
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チャールズ・ダーウィン 『種の起源』

2023-12-09 | 海外作家 タ

先日は自転車の投稿をしたばかりですが、読書もものすごく久しぶりの投稿です。ちょっと学校関係のほうが忙しくて、といってもその間、ちまちまと本は読んでました。

さて、ダーウィンです。だいぶ前ですが、あるクイズ番組にお笑いタレントのパックンが出てまして、問題が「中学校の理科の教科書に出る単語」というもので、パックンに出されたのは「(し)から始まるダーウィンの著書」で、パックンは回答時間中ずっと「On the origin of spieciesって日本語でなんて言うの?」と言ってて、時間切れで不正解だったんですが、まあ本来は正解なんですけど。

ジョナサン・ワイナーという人の「フィンチの嘴」という作品で、ガラパゴス島に住んでいるダーウィンフィンチというさまざまな嘴の形をした鳥を研究した生物進化学の研究者のグラント夫妻が20年の調査で、じつは今現在でも進化を遂げているということを発見したのですが、『種の起源』では、その部分は実証できていなかったのです。

この作品が世に出た当時のヨーロッパではまだすべての生物は神が創造したと信じられていて、というか「当時」ではなく現在でもキリスト教保守派が経営する学校などでは進化論は教えていないと聞いたことがありますが、この作品の裏テーマは、創造説では論理的に説明できないことを証明していく、といったものになっています。

まずは「飼育栽培下における変異」で、つまり人間の管理下での植物や動物の個体間の差はどのようにして生まれるのだろう、というもの。もともとの原種というか野生種から現在の人間の管理下のハトだの牛だの野菜だのに変わっていったのは、それが何かしらの「有利な状況」があった、そしてそれを「選抜」という表現を使っています。

「自然条件下での変異」では、そもそも自然状態で変異は起こるのか、について書かれています。

そして「生存闘争」では、「自然淘汰」との関係性について、そして「闘争」とは捕食と被食、あるいは動物同士の縄張り争いやメスをめぐる争い、または虫と植物の共依存や植物の寄生も闘争の結果そうなったといえるのですが、地理的にも環境的にも影響がある、としています。

「自然淘汰」では、人為選抜との比較、そして絶滅について説明されています。生物の生存にとって有用な変異が起きたなら、その形質を持った個体は生存闘争で保存される可能性が高くなり、よく似た形質を持った子孫が生まれ個体が保存されていくことになる原理が「自然淘汰」であると説明されています。

「変異の法則」では、気候変動といった外的条件の効果、適応について書かれています。

「学説の難題」では、種は移行しているというのなら、その中間種が見つからないのはなぜか、コウモリの飛翔能力、ハエを追っ払うキリンの尻尾、または眼のような特殊な構造をした器官はどのようにしてできたのか、について書かれています。

「本能」では、本能と習性の違いについて、人間が幾何学の法則を発見するはるか前からミツバチは機能的で素晴らしい形をした巣を作っていたのはなぜか、本能はその生物にとって有利なだけではなく過ちも犯すことについて説明されています。

「雑種形成」では、最初の種間交雑、変種について書かれています。

「地質学的証拠の不完全さについて」では、中間的な変種の不在について、古生物学や地質学から説明されています。

「生物の地質学的変遷について」では、前の章の続きで新種の誕生と種の絶滅の地質学的関連について書かれています。

「地理的分布」では、物理的条件、気候変化、氷河時代における分散や集合、といったことが書かれています。

「生物相互の類縁性、形態学、発生学、痕跡器官」では、生物どうしの類似性は「由来の近さ」である、変化を伴う由来、適応による相似形質、絶滅による分類、形態学と発生学、痕跡器官(萎縮または発育不全)について説明されています。

「要約と結論」では、どのような器官や本能も完成度には段階があって、種にとっては有益なものであり、ごくわずかに変異を生じる。そこに生存闘争のもと、構造や本能に生じた有益な変異が保存される。そこには地理的、気候的な要因もおおいに関係する。そして現在のすべての生物の「始まり」はたった一種類の生物で、そこから枝分かれしていったというもの。

つまり、ビジネスシーンや政治の世界で「強いものが生き残る」の例としてこの『種の起源』が使われているのは間違いであって、読んだことがないか悪意を持って誤用しているかのどちらかで、神が創造したわけではなく、現在のすべての生物は「たまたま偶然」生き残ってる、ということです。

この進化論を真っ向から否定している側の方たちは「我々のような高等な人類が下等なサルから進化したはずはない」としていますが、この文中には人類は猿から進化した、といったような記述は一切ありません。

また、面白い部分として、陸から離れている島はかつて陸の一部だったことは説明されていますが、大陸移動については具体的に触れられていません。というのもこの本が出されたのが1859年で、ヴェーゲナーの大陸移動説が発表されたのが1912年で、じつはそれ以前から「南米大陸の東海岸とアフリカ大陸の西海岸って形がピッタリ合うよね」ということは論じられてきて、ただこの時点ではまだ大陸が移動する原動力がわかっていなくて、だいぶ後になってプレートテクトニクス理論が出てきます。

さらに興味深い話をいくつか。この作品は学術書ではなく、一般書店で発売されたということ。ダーウィンの母はウェッジウッドの創業者の娘。父親も父方の祖父も医師で、つまり「良家のお坊ちゃま」です。まあ、軍人でもないのにイギリス海軍のビーグル号に乗せてもらうには金とコネがなければ無理だったことを考えれば、そういうことですね。

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久しぶりの自転車で妄想フランス旅行

2023-12-01 | 自転車

ものすごく久しぶりの投稿です。ブログに飽きたわけではありません。

自転車に乗るのも久しぶりです。今回はフランスの旅(妄想)です。お付き合いください。

パリの喧騒を離れ、愛車のルノー(これは本当)でちょっと郊外に行くとセーヌ川ものどかである。

 

そうしてたどり着いたのはマルセイユ。港に行ってみた。

さらに足を伸ばして、ニースの海岸へ。

・・・、はい。というのもですね、今日はお休みなので、家でレタスとハムとチーズのバゲットサンドを作って、ボトルにお湯を入れて紅茶のティーパックとマグカップも持って、ベンチに座って海を眺めながら波の音をBGMにバゲットサンドとお紅茶のランチをしようと思い、ただそれがやりたかっただけで妄想フランス旅行をしたというわけ。

海に着いたときは風は冷たかったのですが太陽が出てポカポカ暖かかったのですが、食べ終わったあたりで曇ってきて寒くなってきたので1時間もいなかったかな、とっとと帰ってきました。妄想フランス旅行おしまい。

オ・ルボワール
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池波正太郎『熊田十兵衛の仇討ち(本懐編)』

2023-09-21 | 日本人作家 あ

池波さんの「真田太平記」という作品があって、文庫で全十二巻という大長編なのですが、まだ読んだことはなく、老後の楽しみにしているのですが、老後になってそのような大長編を読むだけの気力が残っているのかという不安がちょびっとだけありまして、もちろんご高齢でもすごい読書家という方は個人的にも知っていますし、そんなの「人による」といってしまえばそれまでなんですけど。

以上、老いを考える。

さて、『熊田十兵衛の仇討ち』のもう一冊のほう。

織田信長がいよいよ天下統一までマジックナンバー点灯といったときに明智光秀に裏切られて果てます。さて、このとき本能寺には忍びがいまして、明智側に忍ばせていた松尾九十郎から報告がなかったと信長側にいた忍びは悔しがりますが時すでに遅し。その松尾九十郎は、中国地方に向けて急いでいました。じつはもうひとり、松尾伝蔵という忍びがいて、光秀は「毛利へ行け」といって書状を伝蔵に持たせます。光秀は、信長亡き後に毛利と連合で天下取りという計画があり・・・という「鬼火」。

甲賀忍びの岩根小五郎は「明智光秀を見た」と助七という別の忍びのから告げられます。じつは山中で山賊の格好で光秀に竹槍でとどめを刺したのは小五郎。そんなはずはないと疑いますが、今では別名を名乗ってる、とまで具合的なことを聞き、小五郎は確かめに向かいます。しかし、助七から光秀を見たという場所の小屋に近づいた時に矢が・・・という「首」。

豊臣秀吉がいよいよ小田原の北条を攻めることとなり、籠城するか戦うか意見が二分します。鉢形の城主、北条氏邦ははじめは籠城派だったのですが出撃すべきと言い出したのは、忍びの小出寅松の裏切りのせいだと気づいた別の忍びが。じつは寅松は秀吉が北条側に放った忍びだったのです。寅松は鉢形の武将、山岸主膳之助の娘婿になっていて、はじめこそ秀吉側となって動いていたのですが、なんと寅松が義父の主膳之助と風呂に入っていると「おぬしはいずこの忍びなのだ」と・・・という「寝返り寅松」。

服部小平次は播州赤穂藩の浅野家、京都屋敷に務める藩士の次男坊。学問も武術の稽古もせず遊び歩いていて両親もさじを投げています。ある日、小平次が遊郭をふらついていたところ、船頭と揉めていたところにある武士が助けてくれます。その武士は「なんだ、服部小平次ではないか」というのです。その武士の正体は浅野家御家老、大石内蔵助。蔵之介は小平次ろいっしょに遊郭で遊ぶことに。そんなとき、小平次の兄が急死し、小平次が家の跡継ぎに。しかも江戸屋敷詰めを申し付けられ・・・という「舞台うらの男」。

宴会の席で熊田勘右衛門が山口小助という下役をみんなのいる前で罵ります。じつは小助は女癖が悪いのでまったくの言いがかりとはいえないのですが、小助は怒りのあまり帰りに勘右衛門を斬って、そのまま逃げます。勘右衛門の息子、十兵衛は父の仇討ちとして小助を探しに出かけます。二年後、ボロボロの坊主の格好をした小助は、茶店で十兵衛を見かけ、そのままあとを付いていくことに。仇討ちに出て五年。十兵衛は小助を見つけることができず、しかも目の病にかかって・・・という表題作「熊田十兵衛の仇討ち」。

小林庄之助は、弟の伊織と家来の原田定七とともに、父を殺した大葉勘四郎を探しています。ところが伊織も定七も乗り気ではなく、ある日、定七は岡場所の女を連れ込んでいたところを庄之助に見つかり、怒った庄之助は定七を斬りますが命に別状はありませんでした。という話を別の客にしていたその岡場所の女なのですが「その男は原田定七さんといってねえ」というのを聞いて顔色が変わります。その夜、小林庄之助が斬られていたのが見つかります。伊織が駆けつけ、斬ったのは大葉勘四郎ですかと聞きますが、なんと「さ、定七に・・・」といって・・・という「仇討ち狂い」。

「舞台うらの男」は、以前読んだ記憶がありますね。この二冊の文庫は総集編ですので、おそらく他の作品もどこかにあるのでは。あと池波さんは昔の作品を後年になってセルフリメイクすることもありますからね。

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池波正太郎『熊田十兵衛の仇討ち(人情編)』

2023-09-18 | 日本人作家 あ

前回の投稿では学校のほうが忙しくて本を読んでないと書きましたが、とりあえず忙しさからは一旦開放され、なんとか本を読める状況にありますが、おそらく来月はブログに投稿できそうにありません。というわけで今月ちゅうに読めるだけ読んでおこうと思います。

以上、学生の本分は勉強。

さて、池波さん。この作品は短編集です。表題作はもうひとつの本懐編のほうに収録されてます。

雲霧仁左衛門の子分の山猫三次が越後で捕まり、州走の熊五郎という子分は三次に「きっと助けてやる」といって逃げます。越後から江戸まで厳重な警戒で護送することになりますが、江戸から火付盗賊改方の与力、山田藤兵衛が途中で出迎えることになり、新堀という宿の茶店に寄ります。じつはこの茶店のお延は未亡人で、亡き夫はかつて山田藤兵衛に仕えていたのですが、雲霧一味の捕縛のときに州走の熊五郎に殺されます。夫を殺した憎きその熊五郎の人相書を見たお延は愕然とします。数日前、雨宿りに寄った(ある男)が、まさに熊五郎そのものだったのです。しかもあろうことかお延はその男に体を許して・・・という「熊五郎の顔」。

浪人の堀小平次は、疱瘡にかかりますが。ふつう疱瘡にかかると瘢痕(あばた)が顔に残るので忌み嫌われますが、小平次は喜びます。というのも小平次は敵もちで潜伏中の身。某藩の家臣だったときに上役の妻と不義密通しその上役を斬って逃げてはや十八年。あのとき五歳だった上役の息子は仇討ちのため小平次を探しています。小平次は「熊川又十郎」という別の名前を名乗っているのですが、その名前の主とは四年前・・・という「あばた又十郎」。

按摩の豊ノ市は短気なのが問題。ある日、旅籠に泊まった侍の按摩をやることになり、酔っていた侍と口論になりますが、なんと侍の刀が二本ともありません。そこにある男が豊ノ市の腕をつかんで外に逃げます。刀を盗まれたと町役人に訴えることもできずに侍は出ていき、豊ノ市は旅籠に戻って、助けてくれた男のことを聞きます。江戸の深川・黒江町の又吉というのですが、じつは又吉、右手の指が五本とも無く・・・という「喧嘩あんま」。

江戸の伊勢町河岸におでんの屋台を出している栄次郎はかつて「お手玉小僧」という掏摸でした。その屋台に栄次郎の幼なじみの平吉が来ます。平吉は木綿問屋の婿養子となっていますが、いきなり栄次郎に助けを求めます。平吉が仲間内の寄り合いに出た料理屋に幼なじみのお長が女中として働いていて、再会を懐かしみ、また会い、いつの間にか深い仲に。平吉はお長に会うのをやめようとしますが、お長は「子ができた」と・・・という「おしろい猫」。

うなぎの蒲焼きや川魚の小料理の料理屋「鮒屋」で、ある浪人が無銭飲食をします。ところが主人の半蔵が浪人の顔を見るとたちまち血の気が引きます。そして次の日、その浪人が店に来ますが、半蔵は「酒を出せ」といい、浪人に無銭飲食させるのです。じつは半蔵、前は乱暴者で江戸から逃げて、ある宿に泊まったとき、隣の部屋から「まだ四十両はあるし、なんとかなる」という声を聞いて、夜中に隣の部屋に侵入し・・・という「顔」。

 

「人情」という話もあるのですが、全体的に「そういう理由だったのか」みたいな、謎解きではないですけどミステリのような構成といいますか。

次は本懐編。

 

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井上靖 『夏草冬濤』

2023-09-10 | 日本人作家 あ

8月は投稿なしでした。学校のほうがいろいろやることがあって、小説を読んだのは移動時間くらいで、あまり読めませんでした。

 

という言い訳はさておき。井上靖さんです。この作品は井上靖さんの作品「あすなろ物語」「しろばんば」に続く自伝的作品で、洪作というメインキャラの背景はだいたい同じになってます。お父さんは軍医でお母さんと妹と転勤して、洪作は伊豆の複雑な家庭環境の中で育って、それでも勉強はできて旧制中学にトップ入学します。三島の伯母の家に下宿して沼津中学に通っています。

泳ぎが苦手な洪作は水泳講習会に参加しますが上級生に強制されて飛び込んで溺れます。そこに別の上級生がボートで救助に来てくれます。この上級生というのが、ちょっと不良っぽいグループで、ですが彼らの自由奔放さに洪作はちょっと気になります。

洪作は反抗期といいますが自我の目覚めといいますか、なんともやる気のない生活を送り、もちろん勉強もしないので学校の成績は落ちる一方。伯母は「うちに住んで成績が下がったなんて思われたくない」といって勉強しろとうるさく言いますが洪作はどこ吹く風。

しかし、離れて住む母から、これ以上成績が悪くなるなら寺へ預けると通告。

寺なんか行きたくないと洪作は勉強しますが、上級生のグループとひょんなことから付き合い始め、さらに彼らから「寺に住むのか、いいなあ」なんて言われて、洪作は勉強をやめてしまいます。

気になる女の子とのエピソードや、洪作が実家に戻ったときの幼なじみとのすれ違いなど、青春ストーリーにはなってます。

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ネルソン・デミル 『王者のゲーム』

2023-07-17 | 海外作家 タ

暑いです。と書いたところで涼しくなるわけもないのですが。

 

さて、ネルソン・デミル。この作品は「ジョン・コーリー・シリーズ」の第2作目でして、だいぶ前に3作目の「ナイトフォール」を読んで、主人公はいっしょでもそれぞれ独立した話で順番はバラバラでも別に構わないということでようやく6年越しに手にしました。「ナイトフォール」に出てた「妻のケイト」とはこの作品でジョンと初めて出会って結婚したんですね。

元ニューヨーク市警の刑事、ジョン・コーリーは、連邦統合テロリスト対策特別機動隊(ATTF)のエージェントで、中東セクションに所属してます。ニューヨーク市警の刑事だった時に銃撃戦に巻き込まれて撃たれて、その後退職、刑事の学校で教員をしていましたが、連邦政府が警察での勤務経験がある人材をATTFで募集していると聞き、入ることに。

チームのメンバーは、CIAのテッド・ナッシュ、FBIのジョージ・フォスター、ニューヨーク市警のニック・モンティ、FBIのケイト・メイフィールド。

 

パリのアメリカ大使館に、アサド・ハリールというリビア人が亡命を希望してやって来ます。アメリカやイギリス、フランスなどの捜査機関が調べたところ、ハリールが訪れた西ヨーロッパ各地で爆破事件やアメリカ空軍士官殺害事件、アメリカ人小学生が銃撃されて殺された事件に関与が疑われているのですが、どれも立証されておらず、監視対象になっていたのですが、なんとパリのアメリカ大使館に堂々とやって来ます。

ハリールを保護勾留してパリからニューヨークの飛行機で連れてくるのですが、空港について車に乗せて無事にマンハッタンまで送るまで見届けるというのが、今回のミッション。

ニューヨークの航空交通管制センターで、パリ発トランスコンチネンタル175便が無通報状態になっていると責任者が報告を受けます。しかしこれはよくある話で、周波数を間違えてたり、自動操縦にしてフライトクルーが眠っていたり。何度交信しても応答なしで、ケネディ国際空港の管制塔に連絡して、救難サービス隊に警戒態勢をとってもらうことに。もしやハイジャックされてるのでは。

結局、なんの応答もないまま、トランスコンチネンタル175便はケネディ国際空港に着陸。パイロットに交信しますが、応答なし。ATTFのチームにもハリールを載せた飛行機が滑走路上で止まったままになっていて、無通報状態で着陸したと報告が入ります。

機内に火災の兆候は見られず、救難サービス隊は中に入ってみることに。物音ひとつせず、乗客は全員死んでいたのです。しかし、乗客の顔は毒ガスや煙、無酸素のような悶え苦しんでいる状態ではなく安眠しているよう。トイレに行きたくなり化粧室を開けると中に男が。お前は誰だと聞くと「私はアサド・ハリール」といって・・・

様子がおかしいので、ジョンとケイトは飛行機に向かいます。そこで、死体運搬車と医学検査官の出動が要請されていると知ります。中に入り、亡命者のリビア人と両隣のFBI職員の席に行くと、真ん中の男はアラブ系の男ではありますがハリールとは別人。パスポート、身分証明書、財布の中の金は取られておらず、銃だけが盗まれていました。他の乗客を確認すると、毛布に覆われた男を見つけ、額にマスクがかけてあるので持ち上げると額には銃口が。最初に機内に入った救難サービス隊の隊員でした。

ジョンは、なぜアサド・ハリールは銃(だけ)を盗んだのか、何かがおかしいと思いFBI職員の手を見てみるとふたりの指が切断されています。「まずい!」と急いでATTFの作戦本部に戻ります。指紋認証のドアを開けると女性職員とニック・モンティの死体が・・・

アサド・ハリールはどこに消えたのか。飛行機の乗客300人を殺害してまでアメリカに来たかった理由とは。ジョンはハリールを捕まえることができるのか。

文庫の上下巻とも700ページを超える厚さで、つまり合わせて1400ページの大長編。他にやることがあったとはいえ読み終わるまで1ヶ月かかってしまいました。しかし面白いです。ものすごく面白いです。児玉清さんのあとがき解説で「僕が好きな作家のトップに迷わず推すのがデミル。だが残念なことに日本では人気度がいまひとつ」とありますが、本当になんでしょうね。

内容的には重苦しいといいますか陰惨な部分もあったりしますが、オフザケにならない程度に笑える、特にジョンとケイトのやりとりは最高。

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村瀬孝生 『おばあちゃんが、ぼけた』

2023-07-09 | 日本人作家 ま

今年度から、学校のほうのレポートやらなんやらであまり本を読めておりませんので、投稿は5月6月と1回のみ。ひどいもんです。今月にはどうにか今読んでるけっこうな長編を読み終わればいいなあと思っております。

さて、この作品は小説ではありませんが、いちおう「読書した」ということで。

村瀬孝生さんという方、老人ホームで働いてのちに現在は宅老所の代表をされていまして、谷川俊太郎さんと交流があり、あとがきを書かれています。

施設に入所されている入所者のおじいさんおばあさんの面白おかしいエピソードや時に悲しいエピソードが書かれています。あれは吉本隆明さんでしたっけ、「良いことをするときはコソコソと悪いことをやってると思いながらやるのがちょうどいい」ってありまして、大っぴらに「ワタシは善行をやってます!」ってなると、ともすれば自分は偉い、立派と思ってしまうので、というもの。ただの承認欲求ですからね。

認知症の知能検査で物品テストというのがあり、5つの鉛筆とかパイプとかを出して「覚えてください」といって1分後に隠して「何があったか思い出してください」というやつなのですが、あるおじいさんはこれに激怒。なぜなら「何があったか聞くぐらいなら最初から隠すな」という言い分。まったくその通り。

年配になればなるほど「人様に迷惑をかけてはいけない」という教育と家庭での躾の中で育っているので、介助も容易にできません。

「あなたらしく生きてください、生きがいを持ってください」と言いながら、何時から何時まで食事、何時から入浴、何時に就寝、という施設側の作ったスケジュールについてこれない入所者を「問題を起こす」と扱う。おじいさんおばあさんはひとりひとりの「時間」があって、自分たちのペースがあるのですが、そのペースを待てないのは職員のほうで、菓子パンが好きな人は誤嚥しないため少量ずつ鳥のようについばんで食べると何時間もかかるからミキサーでペーストにしてスプーンで口に入れる。雲を眺めるのがすきな人はいつまでも眺めているので時間を決めて中に入れる。読書が趣味の人は同じページを繰り返し繰り返し読んで食事や入浴時間を守らないので本を隠す。

「あなた」って誰ですか。

具体的な話は書けませんが、入院していたおばあさんが生まれ故郷の西日本にある離島の病院に転院することになりました。何十年も前に家族の都合で関東にやって来たのですが、もう会話もしなくなって亜空間を見てるだけ。ところが島の病院からの報告で喋るようになったそうです。やっぱり空気感といいますか、聞き慣れた方言を耳にしたからか。

介護保険制度って、できた経緯は「住み慣れた家や地域で余生を送ってもらう」だったのですが、姥捨て山状態。これじゃイカンということで食事とベッド代は自己負担に変更。

「老い」とか「ぼけ」は、いずれ誰でも来ることですが、現状は社会からの隔離と抑制。そして施設間のたらい回し。このような状態で「一生懸命生きる」ってできますかね。

決して小難しい話ではなく、ライトタッチで書かれています。挿し絵もコミカル。ポップなメロディで警鐘を鳴らしています。

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東川篤哉『探偵少女アリサの事件簿 溝ノ口より愛をこめて』

2023-06-05 | 日本人作家 は

当ブログの自己紹介にもありますがただ今大学生(通信制)でして、3年前の秋入学ですのでまだ3年生なのですがスケジュールは春入学に合わせなければならず、つまり履修期間は4月〜2月(初年度のみ10月〜)で、進級を希望する人は学年末の2月に次年度の履修科目の登録をする、ということになります。よって、今はまだ3年生なのに4年生の科目を受けているというメンドクサイ状態ではあるのですが、面白いのが、このままちゃんと卒業要件である単位を取得すれば来年の秋(9月)には卒業できますが、その翌年の3月に卒業つまり半年の履修期間延長ができるのです。もちろんその期間の学費は無料。どうせタダなら半年間大学生を満喫しましょうかね、といってもキャンパスライフはほぼ無縁ですが。

はじめてあの娘に出会った朝は 僕は二十歳でまだキャンパスも春。

 

さて、東川篤哉さん。

スーパーに勤めていて発注ミスでクビになった橘良太は地元の神奈川県川崎市の南武線沿いに戻って「なんでも屋」をはじめます。ある日、以来の電話が。今度の土曜日の夜、3時間ほど力を貸してほしいというのです。なんとその報酬3万円、つまり時給1万。いちおう「犯罪以外は何でも受ける」と宣伝はしていますが、大丈夫なのか。最寄りの武蔵新城駅から南武線に乗って武蔵溝ノ口へ。今回の依頼人である篠宮龍也から聞いた住所に着くと豪邸が。龍也の父の篠宮栄作は有名な画家で、龍也も画家。で、その依頼とは、ヌードのデッサン。終わりかけた頃に突然女性の悲鳴が。地下の栄作のアトリエに入ると、頭から血を流して倒れている栄作が。この事件に関わった良太ですが、別件の依頼でまた溝ノ口へ。そこで出会った名探偵夫婦の娘、綾羅木有紗という10歳の女の子の子守りをすることに。ところが有紗は近所で起こった有名画家の殺害事件の関係者の中に良太がいた事を調べていて、事件現場に連れて行ってほしいと・・・という「名探偵、溝ノ口に現る」。

次の依頼はまたしても綾羅木家からで、今度は有紗に武蔵溝ノ口から分倍河原まで電車で行って分倍河原駅の近くの喫茶店で有紗の父親の知り合いに原稿を渡してきてほしい、良太はその「見守り」をする、というもの。喫茶店にすでにいた中崎という男に原稿を渡したのですが、その帰り、ベンチで女の人が死んでいるという噂を聞き、その後警察が有紗のもとにやって来て詳しく話を聞きたいというのです。じつはそのベンチで死んでいた女性というのは中崎の浮気相手で・・・という「名探偵、南武線に迷う」。

ある日「なんでも屋タチバナ」に女性の依頼人が。内容は浮気調査で、依頼人の夫はパチンコ屋やゲームセンターを運営してる会社の社長で、妻が出かけている間に浮気相手を家に連れ込むかもしれないのでその証拠を掴んでほしい、というのです。そして、依頼人の母の友人という設定で良太と有紗が家に泊まることになったのですが、翌朝、夫が起きてこないので部屋に入ると頭から血を流して・・・という「名探偵、お屋敷で張り込む」。

今度の依頼は、地元商店街の草野球チームのメンバーが足りないから出てくれ、というもの。良太が助っ人に入ったチームは惜しくも負けますが、なんと今度はその試合の対戦相手から助っ人として呼ばれることに。試合開始のだいぶ前にグラウンドに着いてしまった良太は、マウンド付近で人が倒れていることに気付きます。近寄ってみるとその人物は今日の良太が入るチームの監督だったのです・・・という「名探偵、球場で足跡を残す」。

東川篤哉さんの作品は基本オフザケ満載なのですが、ミステリやアクション、サスペンスが好きな人が思わず「ニヤリ」とするネタを盛り込んで来るのでその部分が楽しみでもあります。まずタイトルがそうですね。あと有紗の親が依頼があって出かける事件の内容が「アレじゃねーか」と思わずツッコミたくなります。

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