「暗流」と訳したらいいのか、印象的なジャケット。
女性の死体が、闇の水面に漂ってゐるー。
CDでのそれは、LPの裏面にあったタイトルを無理やり合成してしまってゐるものがあって、この洒落たジャケットにはとても失礼な話ー。
ビル・エヴァンス(ピアノ)
ジム・ホール(ギター)
1962年4月、5月録音
デュオの名盤で、中身は文句なく素晴しい。
伝説的なトリオを組みながら、メンバーのひとり、スコット・ラファロを事故で失って一年ー。
スランプに落ちこんだエヴァンスは、マイルス・デヴィスに首を宣告された原因、ドラックにまた戻ってゐたのかもしれない。
この前後の、トリオでの演奏は、小生には可もなく不可もなく、といった印象があるのですが、エヴァンスは、このジム・ホールとのデュオで蘇ってゆく。
ジム・ホールの、まさに、つま弾くギターの音色が色を抑へた世界を創ってゆく。
一曲めの「マイ・ファニー・ヴァランタイン」が、やはり、いい。
いきなり、エヴァンスの早いソロで曲が始まり、それに添ふやうに、離れるやうにジムがからんでゆく。
ジョン・ルイス作曲の「スケイティング・イン・セントラルパーク」も、ジャズに優雅といふ言葉を与へられる数少ない演奏か。
「ダーン・ザット・ドリーム」も、あへない美しさを描いてゐる。
その端正な風貌とは裏腹に、ドラッグへの依存から離れられなかったビル・エヴァンスが残した録音は、けれど、40年以上も過ぎた今聴いても、鬼気迫る美しさを維持してゐる。
CDには、サービストラックで、幾つかの曲が入ってゐます。
別テイクのものもありますが、基本的には、一度ボツになった演奏のやうです。
確かに、今ひとつ、精気がなく、LPの時の6曲で充分のやうな気がします。
(写真は、LPのジャケット)
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