やまがた好日抄

低く暮らし、高く想ふ(byワーズワース)! 
山形の魅力や、日々の関心事を勝手気まま?に…。

「義にあらず」、を読む

2006-06-28 | 雑記

『義にあらず-吉良上野介の妻』(鈴木由紀子著/PHP研究所)といふ本を読みました。



       

作者は米沢出身の方で、その地を活かして、理不尽な殺戮にあった、吉良上野介義央の姿を妻の立場で追ったものです。
吉良上野介義央の妻、富子は米沢藩の上杉家から嫁いだ人、です。

小説的な手法をとりながらも、一寸中途半端な形で、構成としては不満足でしたが、詳細な取材のデータには驚きました。


小生、以前から、吉良上野介を支持する会を知人とふたりで勝手連をしてゐまして、この本もさういふ意味で大変面白く読みました。

身びいきなところを差し引いても、大筋は、この本の内容に近いものではなかったのではないかしらん。
刃傷事件にしても、時の将軍が天皇家の人達を迎へる大切なイヴェントの時に、原因は闇の中にしても、結果的には突然キレテ、職務放棄をし、人に切りつけた、といふ事実は、今に考へても、言ひ訳ならないやうなことだったのでせうから。

以前、高倉健が主演した「四十七人の刺客」(?)なんて映画は、まさに、ヤクザの出入り同様のさまで、最初に、抹殺ありき、でした。
本の中でも、映画にあったやうな、忍者屋敷のやうな住まひの様子はすべて史実ではないとされ、逆に、数寄を好んだ建物だった、とされてゐます。


そして、この本で興味深かったのは、刃傷事件の浅野内匠頭の母方の叔父が、20年ほど前に同じやうな事件を起こしてゐた、といふ史実。
また、夫妻を結んだ役に、年末の茶会を催した山田宗偏が深く関はってゐた、といふこと(小生、宗偏流なものでー)。


戊辰戦争の原因や結果と同じく、如何に史実が歪んで加工され、残されてきたか、
「忠臣蔵」の話も、殺された側や、遁走した側からみると、意外に真実の姿の一端が見へるのかも知れません。



(写真は、表紙)