お客様の処へ集金に伺って、たまたま、絵の話になりました。
指物師だったお客様は、子供の頃から絵が好きで、
絵描きになりたい、といふ願望はあったものの、
半世紀も前の山形、そんな夢が叶ふわけもなく、
手に職をといふ親の言葉に従って、
指物師の親方に弟子入りした方、です。
忙しい最中、丸山応挙派の絵を学び、
「てすさびのやうに描いては人にくれた」といふ絵は、
殆んど親戚や知人の所へ散在してしまったやうです。
茶の間に掛かってゐる自作の一枚、です。
自宅の、襖の装飾も撮らさせてもらひました。
七厘(2ミリ弱)の格子桟です(勿論、ご自身の仕事)。
仕事面での絶頂期に交通事故に遭はれ、九死に一生の大怪我から戻った時には、
身体に麻痺が残り、現役の引退を余儀なくされてしまひました。
リハビリで養生の時に、小生は出会ひました。
仕事も色々とさせて頂いてゐて、その間に、沢山のお話も伺ひましたが、
ご苦労の絶えない方で、
しみじみ、人生は辛いことだけが多い、と世の中の不条理を感じずにはいられません。
日本画の面白い展覧会があれば一緒にゆきませう、と約束して、いとまを告げてきました。