やまがた好日抄

低く暮らし、高く想ふ(byワーズワース)! 
山形の魅力や、日々の関心事を勝手気まま?に…。

マッコイ・タイナーの「サハラ」

2005-05-13 | 書棚のジャズアルバムから


師コルトレーンと袂を分かって7年、コルトレーン・カルテットの
ピアニストだったマッコイ・タイナーが1972年に世に問ふたアルバムです。

コルトレーンの死後10年くらゐの時に、メモリアルコンサートでタイナーの
演奏を聴いたことがあります。とてもつまらない演奏でした。
日本でファンの多かったコルトレーンの、死後も商売に結びつけたやうな企画で
演奏も気の乗らないものだった記憶があります。

コルトレーンの残された映像を見ると、マッコイ・タイナーは他のメンバーに
較べて、冷静にピアノに向かってゐるやうに見受けられます。
僧のやうにサックスを吹くコルトレーンの姿を、タイミングを計りながら見つめてゐます。
その彼が、何故、師の元を離れたのか?
否、何故、師を見棄てたのか?

コルトレーンに最後まで付き合ひ、ひとりひっそりと死んでいった
ベーシストも興味深いけれど、30才前のタイナーの心情にも興味は尽きません。

このアルバムは、一曲目から全奏のやうに曲が始まります。
その演奏は、奇しくも1960年前半の絶頂期のコルトレーンの演奏に似て、
この時点では、コルトレーンのきはめて真っ当な直系者なのがわかります。

大げさに例へると、師イエスを見放した弟子達の、その後の姿のやうにも見へます。
後年、彼らが気が付くと師の教へを説いて回ってゐた姿のやうにー。