強化された協力に基づく金融取引税: 欧州委員会が詳細を策定
EU News 73/2013
2013/02/14 IP/13/115 ブリュッセル
<日本語仮抄訳>
欧州委員会が本日採択した提案において、金融取引税(Financial Transaction Tax: FTT)の「強化された協力」手続きによる実施に関する詳細が示された。金融取引税を導入する計画の11加盟国からの要請で、同指令案には、2011年9月に欧州委員会が示したFTT原案(IP/11/1085)の範囲と目標が反映されている。すなわちFTT圏との確立したリンクを有するあらゆる取引を課税対象とすること、株式と債権の取引に対し0.1%、デリバティブ商品の取引に対しては0.01%を課税することに変わりはない。
11の加盟国が導入すれば、毎年300から350億ユーロの税収が見込まれる。
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以前 浜 矩子氏の「通貨」はこれからどうなるのか についての書評で、「現在の税制は高度成長時代に作られたものがそのまま使われているから経済成長がのびなくなると税収も減ってしまう。成熟した経済においても安定した税収が得られて所得の再分配がなされるような形、そこに定住している国民からだけでなく、グローバル時代で物と金が自由に行き来している所からも税を徴収できるしくみを国際的に作ってゆくことが大事」という意見を紹介しましたが、「物と金が自由に行き来している所からも税を徴収できるしくみ」に相当するものの一つがこの金融取引税と思われます。もともとこの概念はノーベル経済学賞を受賞した J.トービン・エール大学教授が1972年に提唱したもので国際通貨取引に低率の課税をして投機的取引を規制しようとしたものと言われます。今日のように実体経済で有効に使い切れない有り余った通貨、デリバティブで膨張した実態にそぐわない通貨が投機的に用いられ、その後始末に各国の国民が納めた税金が経済を破綻させないために使われているような状態を改善するには最も有効な課税手段と思われます。
良い課税方法のように見えますが、最大の弱点(欠点)は世界全体が同様にこれを行わないと抜け駆けした人が得をする事、居住地原則、発行地原則によって取り漏れがないよう網がかけられているものの(解説)、現実には税の徴収が煩雑になり実効性が乏しい事が上げられます。
元は2011年9月にEU全体を対象に導入が検討されたのですが、英国や北欧の反対で断念され、今回「協力強化」により11カ国での導入が公表されたということです。しかし早速欧州経団連にあたるビジネスユロップから反対の声明が出されており「成長と雇用にとって害になる」とし、メルケル氏と協力するドイツの自由民主党も反対にまわる模様と言う事です。勿論米英の政府は反対しています(米英の庶民層が真の民主主義に基づいて政策を決定していれば賛成になると思われますが)。
楽をして金を得る事を知った猿は二度と額に汗して働こうとはしない、という事でしょうか。「社会を構成する人全てがそれぞれの能力に応じて働くことで社会を維持することがより良い世界を築くためには大事」ということは古今東西正しい事として認識されているはずですが、いつの世にも楽をしたい猿がいてしかもそいつが力を持ってしまう物なのでしょう。本来そのストッパーになるはずのものが宗教であり倫理・哲学であるはずなのですが、それらが今力を失っている事がもう一つの現代の弱点なのかも知れません。
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