rakitarouのきままな日常

人間様の虐待で小猫の時に隻眼になったrakitarouの名を借りて政治・医療・歴史その他人間界のもやもやを語ります。

最近の医事関連ニュースから改めて医療問題は経済問題だと感ずる

2013-03-07 18:44:28 | 医療

最近の医事関連ニュースから日本の医療問題について考えてみました。やはりいつも現場の当事者である私が感じている通り、日本の医療問題は経済問題だと感じます。以下にいくつかの事例をあげて検討してみます。

救急搬送36回断られ、3時間後に病院へ…死亡

読売新聞  3月6日(水) 配信

 

 埼玉県久喜市の一人暮らしの男性(75)が今年1月、「呼吸が苦しい」と119番したが、25病院から計36回にわたって受け入れを断られているうちに容体が悪化し、約3時間後にたどり着いた病院で死亡したことが市などへの取材で分かった。

 市や久喜地区消防組合消防本部によると、男性は1月6日午後11時25分頃、119番した。駆け付けた救急隊員は県東部や南部、茨城県の病院に受け入れを要請したが、「専門医がおらず処置が難しい」「ベッドが満床」などの理由で断られ続けた。3回にわたって断られた病院も2か所あった。

 当初、男性は意識があり会話ができたが、7日午前0時50分頃に意識がなくなった。救急隊員が心臓マッサージをしながら搬送先を探し、7日午前2時15分頃、いったん断った茨城県内の病院が受け入れたが、死亡が確認された。

 

詳しい病態は解りませんが、何らかの心不全状態が出現し、結果的に不幸な転帰となったことは間違いありません。早く医療機関に受け入れられていれば救命し得たかどうかは解りません。問題は救急車で搬送されながら効果的な医療を受ける機会が得られなかった事にあります。私自身救急病院に勤務しますので病院の事情で救急車を断らざるを得ない事態には良く遭遇します。心停止で運ばれた患者対応中にもう一人重症の患者を受け入れてほしいと言われてもそれは無理です。集中治療室が満床であれば、HCU(High Care Unit)のない病院で重症患者をそれ以上受け入れることはできません。だから受け入れを拒否した病院を倫理面で責める事は事態の解決には一切ならないでしょう。

対応する医療者の問題としては、救急対応を夜中行っても、普通医師は翌日も通常の勤務があります。外来や手術も行わねばなりません。「救急当直をしたら翌日は休み」「救急対応をするだけで一生医師として生活してゆける救急科の設置」を怠ってきたのは厚労省の怠慢と言えます。また90%以上満床でないと病院が赤字になるような診療報酬体系を設定した事も原因の一つです。医療費の増大を診療報酬の引き下げで対応してきたことの「付け」が出てきているのです。救急当直も日常診療も行い、しかもより多くの収益を上げるよう求められる病院勤務医にとって唯一できるサボタージュは勤務医を辞めて開業する事という事態は10年前も今も同じです。結果として救急対応できる医療機関が減ってきているのです。

 

厚労省、医師の勤務環境改善に向け専門組織

m3.com編集部  3月5日(火) 配信

 厚生労働省は4月、医師、看護師、薬剤師など医療従事者の勤務環境を改善するための専門組織「医療勤務環境改善推進室(仮称)」を設置する。3月4日開催の全国医政関係主管課長会議で、医政局総務課長の吉岡てつを氏が明らかにした。医療従事者の勤務環境改善に取り組む医療機関に対して、人材の確保や労働環境の改善にかかわる助言、先進事例の情報提供などを行う組織で、厚労省の医療と労働の組織枠を超えて「省を挙げて取り組みを進めていく」(吉岡氏)としている。

 新たな専門組織は総務課に設置する。総務課の医療安全推進室の職員を中心に、医政局看護課や労働基準局労働条件政策課などの職員が併任する方向で室長や人員数を調整している。室が推進する事業の予算は付けず、厚労省の来年度予算案で要求している基金や補助金を活用して、各都道府県による地域病院の雇用改善につながる施策を支援する。具体的には、失業者雇用を条件に事業内容を企画できる基金「重点分野雇用創造事業」を活用して地域の病院の雇用改善事業を企画したり、「医療提供体制推進事業費補助金」を用いてアドバイザー派遣などの経費や相談窓口経費について定額補助することなどを想定している。

 そのほか、2014年度から全国の医療機関での活用を想定している「雇用改善のマネジメントシステム」の構築も目指す。「雇用改善のマネジメントシステム」は、医療機関の責任者や医療従事者による協議で現状評価と課題の抽出、改善方針の決定を実施するためのシステムで、2013年度には同システムを活用するためのガイドラインを策定する。

 医療分野の勤務環境改善に向けて、厚労省は昨年末、省内にプロジェクトチームを設置し、その報告書を2月8日に公表。医療機関の責任者と医療従事者が自主的に勤務環境改善を促進するシステムを構築するとともに、行政が医療機関の取り組みを支援する方針を示していた。

医師確保のセンター設置の努力義務規定など創設

 全国医政関係主管課長会議では、「医療法等の一部を改正する法律案(仮称)」の概要も説明された。同改正法案には、医療機関が病床の医療機能を都道府県知事に報告する仕組みの創設、都道府県の医療計画における在宅医療の達成目標や医療連携体制の記載の義務付け、医師確保支援などを行う「地域医療支援センター(仮称)」の設置の努力義務規定創設などが盛り込まれている。【島田昇】

 

厚労省も勤務医の疲弊が医療問題の原因の一つであることは理解しています。お役所仕事的な対応ではありますが、問題意識を持って対応しようとしている事は事実ですし、評価すべきとは思います。問題は現実に反映されるかどうかです。それはやはり経済問題が行く手を阻むからです。

 

医学部新設 「東北に特例で」 自民議連が決議

毎日新聞社  2月28日(木) 配信

 

医学部新設:「東北に特例で」 自民議連が決議

 国内で30年以上も新設されていない大学の医学部について、自民党の「東北地方に医学部の新設を推進する議員連盟」(大島理森会長)は27日、政府に新設を求める決議を採択した。

 来月中にも同党の文部科学、厚生労働の両部会に諮り、党方針への格上げを目指すという。

 決議では、新設を認めていない文科省告示について、東日本大震災で被災した東北では特例として1校新設できるよう改正を求めている。

 文科、厚労省は既存学部の増員で対応する方針で、日本医師会や東北大、福島県立医大、岩手医大は「医師を新設学部の教員に振り替える必要が生じ、医師不足が加速する」と両省に慎重な対応を要望している。【井崎憲】

 

全国の医学部定員を増加させた事で、ここ数年で日本は定員100名の医学部を13校作ったに等しい医師増加政策をしています(馬鹿学生を医者にするな参照)。その上で医学部を東北に一つ作ることにどれだけの意義があるのかは推して知るべし、金がかかって利権が生まれるだけの話です。国民は騙されないようにするべきです。福島県立医大の卒業生の多くが地元福島を離れています。大学病院の医師もかなりの数辞職していると聞きます。新しい大学を作っても同じです。どうしたら今働いてくれている医師達が地元に残ってくれるのかを考えるのが真の解決策です。

 

[医療保険] 26年度改定では、医療費全体のマイナス改定を目指す  健保連

厚生政策情報センター  3月4日(月) 配信

 

平成25年度 健康保険組合連合会 事業計画【概要】(2/15)《健康保険組合連合会》

 健康保険組合連合会は2月15日に、平成25年度の事業計画を発表した。

 経済環境が確実な好転状況にない中で、高齢化の進展等による医療費増加が続いている。こうした状況を受け、主に大企業の従業員が加入する健康保険組合の 財政状況も逼迫が長期化している。たとえば、平成20~24年度の5年間の累積赤字は健保組合全体で2兆1000億円を超えており、保険料率を引上げる組合は増加の一途をたどっている。

 こうした厳しい財政状況を打開するために、健保連は25年度事業運営の基本方針として、次の6本の柱を打立てている。

(1)高齢者医療制度に対する公費投入拡大の早期実現

(2)国庫補助削減を目的とした負担転嫁策(たとえば、高齢者支援金への総報酬割導入)に断固反対

(3)医療費適正化の推進と組合方式の維持・発展

(4)健保組合に対する適切かつ十分な財政支援措置の実施

(5)社会保障と税の一体改革に対する的確な対応

(6)保険者機能強化のための支援と連帯感の強化

 この基本方針に則って、最重点事業項目として掲げるのは、(5)の「一体改革への対応」と(6)の「保険者機能強化」の2点。

 (5)の一体改革への対応としては、関係団体への要請を続けていくことや、26年度診療報酬改定で消費税対応のプラス改定が行われることから、「薬価引下げ分を国民に還元し、診療報酬本体は賃金・物価の動向に合わせて改定するとの基本的考え方にたって、医療費全体でのマイナス改定を目指す」ことを強調している。(以下略)

 

医療費を払う健保組合としては、財政逼迫のおり、背に腹は替えられない。組合は「次の診療報酬を下げる」という基本方針を出しています。その分国家予算が増やせるかといって国の財政も状態は同じ。社会保障費を増やす事は増税以外ないのですが、アベノミクスの国土強靭化計画に増税分が使われる事は国民の選択ですから仕方ありません。前ブログで指摘したようにTPP参入に関係なく「混合診療導入による保健医療の制限」をかけてゆく以外選択肢がない状態なのです。

 

メタボ市販薬に物言い…病気発見遅れると医師会

読売新聞  3月6日(水) 配信

 

 メタボ対策の薬もドラッグストアで買えるように--。そんな厚生労働省の方針が揺れている。

 医療用医薬品から切り替えた「スイッチ薬」を活用し、メタボ予備軍を救い、医療費も抑制するという一石二鳥の作戦だったが、昨年末に承認された第1号は、医師会の反発で医師の診察なしには買えない異例の取り扱いに。今後の承認についてのルール作りも進んでおらず、生活習慣病薬の取り扱いは宙に浮いた形となっている。

 同省が昨年末、生活習慣病薬で初めてスイッチ薬として承認したのは、持田製薬の「エパデール」で、4月中旬から発売予定。イワシに含まれるエイコサペンタエン酸(EPA)を精製した薬で、高脂血症や動脈硬化に効果があり、医療用医薬品としては昨年3月までの1年間で381億円を売り上げた。

 スイッチ薬は、花粉症や頭痛・生理痛など比較的軽い病気に対応する薬が多かったが、厚労省の専門家検討会は2002年、生活習慣病薬にも拡大する方針を決定。よく効く薬を手軽に使えるようになれば、予備軍も含め国内に1400万人いるとされるメタボの人の健康管理に役立ち、医療費の抑制にもつながると考えたからだ。

 ところが、承認は難航した。エパデールの場合、10年、11年の同省薬事・食品衛生審議会(薬食審)で議論されたが、承認は見送られてきた。日本医師会などが「薬を飲んでいる安心感から病院に行かなくなり、病気の発見が遅れる」と反対したためだ。

 今回、初めて認められたものの、異例の「条件」が付いた。通常のスイッチ薬は医師の診察なしで購入できるが、エパデールを買う際は、「医療機関を受診した方に限られます」と記されたチェックシートに、「診察で通院治療は不要と告げられた」「診断を受けた病院名」「診断日」などを記入させるというものだ。

 

これは「予防医療を保険診療から切り離そうとする厚労省の試みが頓挫した」と言い換える事ができるニュースです。開業医達をいかに急性期疾患の現場に戻すか、病院で行っている医療を肩代わりしてもらうか(在宅医療等)という問題に行き着くのです。都市部では開業医は既に飽和状態にあります(医師不足ではない)。開業するよりも救急医療に携わっていた方が良い、という状態になれば1番目のニュースに示されたような事態はなくなります。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする