rakitarouのきままな日常

人間様の虐待で小猫の時に隻眼になったrakitarouの名を借りて政治・医療・歴史その他人間界のもやもやを語ります。

欲望の資本主義2024 NHKBSスペシャル

2024-01-20 22:05:42 | 社会

正月恒例になったシリーズNHKBS欲望の資本主義2024を見ました。元日放送予定でしたが、震災で中止となり、1月11日の放送になりました。例年日本と世界の経済を分析、専門家により深堀をした内容の濃い良い番組で勉強になるので備忘録を兼ねてまとめをブログに記載しています。今年の内容は表題が?と思ったのですが、例年以上に良くできた内容で、通常問題点を抽出分析して終わるのですが、今年は日本の失われた30年を脱するヒントまで具体的に描いた点で素晴らしいと思いました。ご覧になっていない方は一見の価値ありと思います。以下章ごとにrakitarouが勝手にまとめてみます。

 

欲望の資本主義2024「二ッポンのカイシャと生産性の謎」

第一章 GDP4位「スローの国」ニッポンのジレンマ

GDPが4位に落ちたのは、それが日本の実力であり、早急な社会の構造変化を嫌ってスローな変化に甘んじた結果でもある。海外から見ると以前の様な魅力が日本の産業社会にない事も明らか。

円安と物価安定は外需型産業には利益を生んだが、内需型産業は物価が上がるだけで賃上げにつながらず、労働者が我慢をすることでしのいでしまっている。

日本の労働生産性が低い構造的原因は何か?

 

第二章 デジタル化の中忍び寄る「新しい封建制」

デジタル化、AIによって無形資産経済の占める割合が社会で増加して、労働者が締め出され、階層化、分断化がかえって進んだ。一方通行のデジタル化が必ず「良い社会」に向かうとは限らない。階層化が固定する新たな封建制ができつつある。

 

第三章 「新しい資本主義」の鍵は無形資産とジョブ型?

生成AIなどの無形資産の産生と活用をどう取り入れるかが鍵。無形資産は模倣(spillover)されやすく、回収できないコスト(sunk cost)もかかるが、拡張性(Scalability)があり、活用の仕方で相乗効果(Synergy)を生む。いかにマイナス面も認めながら総合的にプラスに持ってゆくかが経営者の手腕。日本のカイシャ構造の硬直性では対応しきれないだろう。

組織にとらわれず自分の得意とするスキルで生きてゆく「ジョブ型労働」が流動性を生む。終身雇用の「カイシャ」に固定されて、専門性を持たず種々の仕事をこなしてゆく「メンバーシップ型労働」が実は生産性が上がらない原因となっている。ホワイトカラー労働者に多機能性を求める事がいけない。戦前の日本の方が「ジョブ型」労働が主体であり、働き方改革はジョブ型への回帰を促している。

 

第四章 カイシャ逆襲の一手は?

日本でも素材や工作機械製造などのニッチを責める第二次産業の企業は中小企業でも世界でも認められている。多数の労働者を抱える第三次産業がデフレを作り出している。労働も商品とみなしてストを外国の様に行うべき。労働者もカイシャの一員という考えが家族的でありすぎて足を引っ張る。

 

第五章 ジャパン・アズ・ナンバーワンの逆説

日本の工場労働、ブルーカラーは世界の手本になったが、ホワイトカラーはならなかった。日本のカイシャはピラミッド構造で意思決定をするが、脳の認識と同じやり方をカイシャも続けて良いのか?メインバンクシステムが本当に必要か?

 

第六章 生産性の定義が変わるとき

日本人の半分は才能を仕事に生かせていない。生産性が低いのはそのせい。階層構造で社長に上げないと意思決定ができない構造では永久に未来はない。全員がブルーカラーで全員がホワイトカラーであるデンマークの例を紹介。出退勤の管理自体をすでにしていない会社が世界的に成功している。

 

最終章 シン中間層がピラミッドの呪縛を解くか?

従来の資本主義は資本家が生産手段を所有して労働者は労働を提供するのみであったが、無形資産を売る時代においては、労働者が生産手段まで所有して製品を作るので資本家は資本を出すだけになり、従来のピラミッド構造が崩れる可能性がある。ソースタイン・ヴェブレンは「営利を追求する企業は最終的には全てを失う」と予言したが、人間は労働に喜びを見出すものであり、「製作本能(instinct of workmanship)」を持っている。製作本能を開放することでホワイトカラーとブルーカラーの垣根を無くし、人それぞれが持つ才能が仕事に生かされるようになると生産性はもっと上がるのではないか。全ての人がシン中間層として小資本家、小経営者として生きることで世界に通用する産業構造を作ることができるのではないか。

 

以上まとめ。

正社員のホワイトカラー事務職全てにiPS細胞の様に多機能性を求める事が低生産性の元になっている。というのは鋭い指摘と思いました。仏教の教えに「人の役に立つ、人に必要とされる、人に褒められる」事が幸福を感ずる要素である、というものがありますが、人を社会に置き換える事で、「管理」などされなくても「製作本能」にしたがって仕事をすれば、幸福を感じて生産性も自然に上がるというのは無理のない改革案と思いました。それは現在世界を支配している巨大資本も、油断をすれば別の企業に替わられる可能性もあることを示唆していて、日本だけでなく世界の企業全てに当てはまる内容だと思いました。

追記2024年1月21日 日本でもモデル企業がある。

本日のTBSがっちりマンデーでは、ライザップの瀬戸社長の経営方法が密着取材で紹介されていましたが、トレーニングジムという「無形資産」の運用をまさに「ブルーカラーとホワイトカラーの垣根をなくす」「ピラミッド型決定の否定」を実践している事が分かりました。チョコザップを猛烈な勢いで展開している背景は、「社員の提案は一度全部採用」「最終決定は顧客のデータで」を社長が徹底している。NHKで紹介されていたデンマークのモデル企業と同じやり方。日本の大企業もこれができれば世界で生き残れるという事がよくわかりました。これは大学運営や病院運営にも言える事だと思います。


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4 コメント

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無題。 (遍照飛龍)
2024-01-21 11:33:39
>日本のカイシャはピラミッド構造で意思決定をするが、脳の認識と同じやり方をカイシャも続けて良いのか?メインバンクシステムが本当に必要か?

日本の会社組織は、「軍隊」が祖型で、特に「帝国陸海軍」が、理想也モデルです。

「逆らうな!」「上官の命令は天皇=神の命令」ですから、イノベーションなど起きるはずもない。

で、その天皇=神は、吉田神道と復古神道とカトリックの習合の結果~明治帝政ですし。


考え方を変える・・・て、日本人特に「社会、指導法」においては、極めて劣悪ですからね・・
学校で今でもいじめ自殺や体罰が続出しているのでもわかります。

なんか悲観的ですが、個々人では「天皇」「天皇カルト国」から、精神のレベルで脱獄・亡命している
人が増えているのが、多少の幸いでしょうな。
人間(アナログ)VS機械(デジタル)との仁義なき戦い (宗純)
2024-01-22 10:08:15
確かに今の日本経済が30年間も穏やかに死につつあるのは事実ですが、我々日本人が倍々ゲームで大躍進していた高度経済成長期と、現在とまったく「同じことをしている」のですよ。成功体験があるので、同じなら結果も同じで成功すると信じていた。
しかし、結果が正反対になった原因とは日本の内側に求めるのは無理と言うか勘違い、日本政府や経団連、連合が勝手に動いたのではなくてキャリア官僚と駐留米軍との日米委員会が決めたことを忠実に実行したら、現在の日本になっちゃっただけ。

日本でもイギリスで大騒ぎになっている史上最大の冤罪事件で郵便局長など700人が巻き込まれているのですが、これは映画「ターミネーター」のような事件らしいのですから恐ろしい。
この冤罪は富士通のシステムエラーで、間違った数値が出るが「コンピューターが間違うはずがない」と人間側(郵便局長の不正行為)を罰したが、実はイギリス政府は以前からコンピューターが誤作動すると知っていた。知っていながら冤罪を延々と大量生産していたが、なんと、15年も前の話が今頃大騒ぎする不思議。辻褄が合っているようで合わないのです。
この富士通のイギリス子会社のコンピューターが誤作動がイギリス政府自体が把握していて、それでも長年隠していた原因とはポストオフィスだけではなくて軍事や諜報機関、警察、など国家中枢が富士通のイギリス子会社のコンピューターシステムなので、システムの致命的エラーを、当局が何とかして手を付けたくても手が付けられなかったとの怖すぎるオチ。
コロナ自粛時の不祥事を理由にイギリスのボリス・ジョンソン首相が辞任、後任のリズ・トラス外相も短期間で辞任したので胡散臭いロシア軍ウクライナ侵攻の不思議な騒動に関連したと勘違いしたが、実は富士通のイギリス子会社のコンピューター不正が原因らしいのです。インド人の大金持ちのイギリス首相誕生は、苦し紛れの必然でイギリスもアメリカも資本主義の総本山がいずれもコンピューター不正の発覚で引っくり返る大珍事
無題。 (遍照飛龍)
2024-01-23 15:12:05
>この富士通のイギリス子会社のコンピューターが誤作動がイギリス政府自体が把握していて、それでも長年隠していた原因とはポストオフィスだけではなくて軍事や諜報機関、警察、など国家中枢が富士通のイギリス子会社のコンピューターシステムなので、システムの致命的エラーを、当局が何とかして手を付けたくても手が付けられなかったとの怖すぎるオチ。


「システムが変」って気づかないと、その過ちを延々と繰り返す。

カルト宗教もその考え方のOSが変なり狂っているから、当人や周囲や状況を、変にしたり狂わせる。

社会のシステムも同じで、それを「天皇は万世一系で無謬」みたいに信じていても、それ自体が変・狂っていると、正気な人も知識人も、当然に奇天烈な事や狂気を、正気で行う。

コンピュータの不正に気付くのは、それに相対した「現実」とかみ合わない・・てのもあるかな。

>この冤罪は富士通のシステムエラーで、間違った数値が出るが「コンピューターが間違うはずがない」と人間側(郵便局長の不正行為)を罰したが、実はイギリス政府は以前からコンピューターが誤作動すると知っていた。

社会のシステム・思想の破綻に気づく・発覚するのは、それが社会を損ねたり人間を壊したりしているから・・・でしょう。

列子の中で
「ムラが狂っても、都市がまともなら助かる・都市が全部狂っても、国がまともなら是正できる。国が狂っても、世界がまともなら、建て替えが効く。でも世界中狂えば、救いようがない」
みたいな趣旨の言葉が。

なんか日本ってそういう意味で危険ですよね・・・

「天皇ってシステム破綻している」ってエリート・知識人が誰も言わないので、誰も気づかない・・ような現状・・・。自分で是正ができない。
まあ侵略で滅ぼされて我に返るのを期待するしかないようです。
「生産性」の定義に御注意 (hobby4oldboy)
2024-02-01 23:58:28
要約を読ませて頂いた限り、番組の経済学的内容には問題がありそうです。
∵「生産性」の増減は*定義上*需要側の寄与が支配的な場合が多いので、
その論点への言及が皆無だったのなら、大問題です。
↓(ジャンク/主流派ではない)まともな経済学から見て妥当な分析かと。
https://ameblo.jp/cargoofficial/entry-12834247012.html
98%の人が勘違いしている「労働生産性」ってなぁに?
2023-12-27 21:31:36
「先日、2022年の日本の「時間当たり労働生産性」がOECD38カ国中30位と
なり、過去最低を更新したというニュースが話題になった。
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO77217320T21C23A2EA4000/
去年より順位を2つ落としたとのことだが、これは「政府支出が少なく、
GDPが増えてないから」でほぼ説明できそうだ。
いま、「なんで生産効率(労働生産性)が低くなる原因が、政府支出
なんだい??」と思った人は、この記事を最後まで読んでいただきたい。
私がかねてより、「労働生産性を上げることを目標にしてはいけない」と
言い続けてきた理由を簡単に説明したい。
「高卒・底辺ミュージシャンの俺」でもわかったのだから、皆さんなら
簡単に理解できる。」
...。

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