2024年1月26日、オランダ・ハーグにある国際司法裁判所(ICJ)はイスラエルに対して、南アフリカが提訴したパレスチナ住民への虐殺を防止するため1)軍事作戦中止2)パレスチナ人殺害停止3)人道支援とそのアクセス確保、を求めた暫定措置への判定を下しました。ICJは措置命令として「即時停戦」という言葉は用いませんでしたが、イスラエルに対して「ジェノサイドを防ぐあらゆる措置を取る」様命じました。「停戦命令」でない事をもってイスラエルの勝利とする意見もありますが、私はかなり厳しい措置かなという感想を持ちました。以下に今後イスラエルが取りえる対応について検討します。
命令文 国家に対して「SHALL]を用いているのはかなり強い内容であると思う。
I. ICJの暫定措置命令への対応
南アフリカはイスラエルのガザへの攻撃は「ジェノサイド条約違反」であるとして提訴していて、その判決が出るには数年かかるため「ジェノサイドの疑い」が生ずる行為が続く事、つまり「罪を重ねる」事を防ぐ目的で出されたのが今回の措置命令です。
この命令へのイスラエルの対応には
(1) 今まで通りの軍事行動を続ける
(2) 民間人への攻撃とみなされる軍事行動はやめる
(3) 即時停戦に応ずる
の3パターンがあると考えます。愚かな事に、ネタニヤフ首相は南アフリカの提訴を「根拠のない事」「イスラエルの行動はジェノサイドに当たらない」「民間人に被害がないよう国際法を順守して行動している」と宣言しました。この発言から導かれる結論は(1)の今まで通り、になります。これは後にイスラエルの行動が「ジェノサイド条約違反」という判決が出た場合、取り返しがつかない重罪に当たります。自分たちの行動が誤っているのに「正しい」と強弁して続ける事は「確信犯」であり、最も罪が重いというのが法律の世界では常識なのです。同じ殺人でも故殺と謀殺では罪が異なり、殺意がある方が重罪です。
全世界に動かぬ証拠が溢れる中、疑惑を全否定することが吉となることはまずない。
イスラエル政府の中でもGadi Eisenkot元将軍の様に、自身の子息と甥が今回の作戦で犠牲になっても「即時停戦」が人質を救出する最も確実な手段である、と言い切るまともな軍人もいます。多くの「正常」なユダヤ人達もガザへの攻撃は単なる虐殺であり、即時停戦を訴える人達が世界中で増えています。今回の軍事作戦に賛成しているのは一部の「極右シオニスト」の「異常者」だけで、特にネタニヤフ首相は自分の保身のためだけに戦争を続けているに過ぎません。ホロコーストの生き残りの90代の女性がインタビューで「今回の戦争は正しい」などとメディアで言わされているのを見ましたが、この様な報道に惑わされてはいけません。
自身の子息が戦死しても「停戦せよ」と勇気を持って説く政権幹部(元将軍)もいる。
(2)を選択した場合、今までの軍事行動が誤りであった事を認める事になります。しかしこれは罪を重ねないという点で「次善の策」と言えます。ネタニヤフにとっては国内法で裁かれ政治生命を絶たれる事になりますが、イスラエル国家、全てのユダヤ人にとって最善の選択は(3)になります。だから私は「かなり厳しい」裁定と感じたのでした。
「これは実質停戦命令です。」と会見で述べる南アフリカ外相。これが世界の声だと思う。
II. 松本氏の件
芸能界の三面記事についてブログで論ずるのは本意ではありませんが、上記にも関連があるので言及します。松本氏の件について「芸能人に公人としての倫理的高潔性を求めるのはおかしい」「何年も前の件を今掘り出す週刊誌や女性に問題がある」という意見があります。私も「お笑い芸人が遊んでもええじゃん。」と思っています。しかし今回最大の過ちは「私は倫理的高潔であり潔白です。」と自ら全否定をして「芸能人に倫理を求める風潮」に乗ってしまった事なのです。「済みません、遊びは芸の肥やし、素人さんとは知らなかったのです。」と言えば一時的に芸能活動自粛はしても復活可能でした。週刊誌側は圧倒的証拠があり、日本各地で「素人を騙して性的供応をさせるシステムがあった」と証明させてしまうと、最早松本氏個人の問題ではなく、「システムを放置した吉本のガバナンスの問題」となり、ジャニーズ事件と同じ会社全体の責任を問われる可能性が出てきます。松本氏以外にも同様の遊びをしていた芸人が出たら100%アウトです。関西を旅行すると分かりますが、吉本興業の政官界への介入ぶりは異常といえるほどです。万博の広告塔としても問題になるでしょう。むしろ文春の狙いはそちらにあるかも知れません。「確信犯」「組織ぐるみ犯罪」とみなされる恐ろしさはそこにあります。
III. 某大学病院の件
10年以上前になりますが、某大学病院で診療報酬不正請求事件というのがあり、件の病院はその後厚労省から「保険診療停止処分」という最も重い処分を受ける事になりました。不正請求の内容はその年の診療報酬改定で新たに厚労省から示された「加算事項」の要件を満たしていないのに、赤字だったその病院が黒字になるために加算要件を拡大解釈して請求した事にあります。
「不正」を指摘された時の初動が大きな過ちを招きました。「新しい加算項目(せいぜい一件で数百円)であったので、厚生局に疑義解釈の問い合わせをせず請求してしまい、間違えました。済みませんでした。全て返済します。」と記者会見で院長が釈明すれば保険診療停止処分などにはなりませんでした。それを「全て問題なく正しい請求をしています。」と院長が言い張ってしまった。厚生局は十分に不正の証拠を得て告訴していたのですから、「これは病院全体の組織ぐるみの犯罪である。」と解釈され、一般職員にいたるまで刑事事件の様に個室で尋問を受けて最終的に数年の審議を経て「保険診療停止処分」という最も重い裁定が下されました。
初動で「誤りを認めていれば軽く済んだ」事は厚労省職員からも後に話しを聞いたので事実です。
IV. 我欲煩悩に忖度するな
法的問題が生じた時、その対応に「個人の我欲煩悩」が入ると100%悪い結果になります。「個人の名誉」「地位」「利権」が絡み、「その場をしのげば何とかなるという思い込み」で判断すると悪い結果しか出ない事は古今東西大小どの事例においても同じです。今回のICJ措置命令が意味するところも同じ結末が待っています。
連合国(UN)が勝利した1945年の第二次世界大戦終了から60年後の2005年に、ポーランド南部にあったナチス・ドイツのアウシュビッツ強制収容所がソ連軍によって解放された1月27日を、国連(UN)が国際ホロコースト記念日と定めている。
強制力がある安保理決議を含め、イスラエルは数々の決議を全部無視して好き放題を繰り返したいたし、そもそも、頭から無視しているのですが、ジェノサイド条約には建国の1948年に加盟していて、今回の南ア連邦の提訴に対しても無視することが出来ず嫌々最初からイスラエルが出席していたのですから、勝負がついたようです
しかし即座に姑息な手段で反撃に出ている。
イスラエルや米NATOがイスラム組織ハマスのイスラエルへの攻撃に国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の一部職員が関与した疑いを口実にして、9か国がUNRWAへの資金拠出を一時停止。泥仕合で有耶無耶にする算段のようです
一体、同じことを何年やってるんですか。
暴力で解決するのであれば、もうとっくの昔に解決しているはずでしょ。
イスラエルが攻撃すればするほど、ハマスは強くなる。当たり前。パレスチナの人にとってみれば、帰還権を訴え続けているのはハマスだけ。イスラエル、アメリカ傀儡のファハタなんか誰も信じちゃいない。犠牲者が出れば出るほど、ハマスへの支持が高まる。そんな簡単なこともわからないのかな。
ネタニアフは、進んでも地獄、退却しても地獄。政治生命は死んだも同然。
余談だが、提訴したのが南アだったことに関して。
映画「誰がハマーショルドを殺したのか」を思い出した。
サイマーという外国の諜報機関と関係がある団体が、南アでHIV入りの注射をワクチンと偽り、組織的に黒人撲滅を目指したという話。
同じだ。
UNRWAに対しては一方的な「疑惑」だけで「制裁」まで課されてしまう。
カネと権力を持っている奴は世の中ではびこるけど、結局千年王国は築けないし、世界中のヒトは見抜いている。もっと言うと「神」も見抜いている。イスラエル・ジェノサイドの目に見えない負の遺産(表面的な制裁よりも大きいもの)はほぼ永久に残ると思うし、結局歴史的にはユダヤ人が一番ソンをする結果になると思っています。