いつの時代も戦争は科学技術の進歩とともに兵器や戦術が発達してきました。特に国を挙げての総力戦はあらゆる力を戦争に勝つ事に費やすため、技術の進歩が速くなります。それは2年も継続しているウクライナ戦争においても顕著で、ウクライナ戦争が始まった時と現在では軍の戦い方自体も変化しています。以下にメディアで紹介されているいくつかをまとめます。
I. ISR(情報、監視、偵察)におけるスマホの活用
米軍やフランス製のNATO側火砲は、衛星からの情報を基にして照準を定める物が多いため、ウクライナ軍は戦場で独自に開発したアプリを基にドローンと連動したタブレットコンピューターやスマホアプリから照準を誘導できるシステムを開発して使用しています。ロシア側が妨害電波などで衛星からの直接照準を妨害しても簡単なアプリでシステムをアップグレードでいるフィールドモデルを構築していると言います。
ロシア軍のGPS攪乱用電波システム ウクライナ軍のスマホを活用した目標探知システムは評判が高い
II. 自爆ドローン、デコイドローン、ドローンからの攻撃
第二次大戦で観測用小型飛行機(連絡機)や気球が果たした役割を現在は数十万円の高性能無人ドローンが果たし、しかも離陸などの場所も不要でエンジンを使わないので隠密行動可能な上に高性能、操縦も容易です。高額な防空ミサイルシステムも、初めにデコイを飛ばして対空兵器を消費させてから実弾を後から発射するなどのトリックをウクライナ、ロシア双方が使用しているので、「対空ミサイルで全てを撃破した」という嘘の発表を頻繁に耳にしますが、全て「インチキ」であり、「沢山ミサイルを打った方が常に勝っている」(ほぼロシアの一人勝ち)が真実です。
ISRに革命をもたらした携帯ドローン
2,022年開戦当初は、ドローンで位置を把握して、高性能のジャベリンなど対戦車兵器を駆使したウクライナ側が多くのロシア戦車を撃破した事は事実で、ロシアがSMOから対称戦に戦術を変えた2023年からは圧倒的にウクライナ側の犠牲が増加しています。ISRが全て明らかな戦争においては、防御を固めて攻撃してくる敵に圧倒的に大量の砲爆撃を加えた方が常に勝つのです。ウクライナ側はマリウポリ、ソレダル、バフムトで防御戦を行いましたが、攻撃してくるロシアに圧倒的な砲爆撃を加える事ができなかったために包囲持久戦に持ち込まれたロシアに最終的には負けました。
非対称戦でも相手が高性能兵器を持っていると勝てない。
逆に2023年夏のウクライナの反撃では、ロシア側の強固な防衛線に突進して部隊が包囲される形で引き込まれた後に圧倒的な砲爆撃で全滅させられるという愚策を繰り返しました。突進して第一防衛線を破った時に「ウクライナ軍反撃に成功してロボティネ解放」などという虚報を何度西側が大騒ぎで報道したか、記憶に新しい所です。南部ドニエプル川の中州や、クリミア半島のロシア占領地にウクライナ軍の部隊が上陸といった勇ましいニュースも良く流されましたが、彼らの平均寿命は3日と言われており、宣伝効果のみのために100%戦死し、ロシアには痛くもかゆくもない無駄死であり、さすがに現在は行われていない様です。日本の軍事専門家で「宣伝のための無駄死特攻作戦」を強く批判した人をメディアで見たことがありません。彼らは本当に専門家なのでしょうか?(現在は散発的な都市部ミサイル攻撃や、ISを名乗る傭兵による劇場無差別テロなどをしているようだが、ロシア人の結束を固める逆効果になっている)
ドニエプル河に拠点を作る作戦については昨年秋以降もう報じられなくなった
III. 既存の兵器の改造による高性能化
ウクライナ軍による対艦ミサイル「ネプチューン」の改造や、無人攻撃艇、無人潜水艇などは確実に一定の戦果を挙げてロシア軍に対応と艦艇の行動制限を与えています。M777重りゅう弾砲やM142多連装ロケット砲(HIMARS)の活躍は西側メディアでも取り上げられた通りで対称戦でも大きな戦果を挙げました。しかしロシア側の「爆弾を滑空爆弾に変える簡易装置」は、現在超強力な3t爆弾を急ピッチで製造しているロシアがこれを滑空爆弾として使用すれば、西側がこれに対抗するには戦術核しかなくなります(西側は作っていないので)。西側のいかなる高性能兵器も大量の古典的爆弾の猛攻撃に耐えることは100%無理です。NATOは正規兵をウクライナに投入しようとしている様ですが、優秀な軍人だろうが、武装していようが、圧倒的砲爆撃で大量虐殺されるガザの住民と同じ運命に遭うだけです。核を使わなくても確実にNATOに勝利する手段をすでにロシアは手にしている事を、「早く停戦交渉をしろ」と意見表明している西側の軍事専門家は理解していますが、「グローバリストの言いなりである政治家とメディア」は自分が死ぬわけではないので考えを変えません。
確実にゲームチェンジャーとなった安価な滑空爆弾装置
IV. 対称戦では少数精鋭は通用しない
高性能兵器が古典的爆弾の猛攻に耐えられないことは上述しましたが、欧米はゲリラや小国相手の戦争ばかり行ってきたため、戦車や火砲、航空機も全て高性能化しすぎて機構が複雑になり、修理保全などのメンテナンス体制や体制づくりのための教育など時間と予算が高額になり、兵力増強を短期間に行うことは不可能です。またM777は連日使用でライフルがすり減り精度がすぐ落ちるという欠点が露呈しています。これらを受けて米国は新型高性能長距離砲の発注を取り消したと言われています。つまり弱小国相手の戦争に勝ててもロシアや中国を相手にした総力戦は現在の欧米兵器体系では負けることが今回のウクライナで明確になったのです。
GPSと連動して照準するフランス軍のカエサル自走砲(あまり使い勝手は良くない)
V. ガザの非対称戦におけるAI兵器の発達
ガザでは昨年10月以来非武装のパレスチナ住民や小銃、手りゅう弾程度の武装をしたハマスを相手にフル近代装備のイスラエル軍が一方的な殺戮を続けています。それでも地下や隠れる場所の多い市街戦ではイスラエル軍の犠牲も強いられ、また非武装の市民を殺すことには例え「宗教上の赦し」が出ていると説得しても平和で文化的な生活をしてきた予備役兵たちには心理的抵抗があるはずです。そこでAIを活用したロボット兵器が積極的に虐殺に使われていると言う報告が出てきています。それは近未来ディストピア社会における市民制圧のモデル展示場の有様だとも言われます。武装ロボット犬や顔認証機能と結合したドローン狙撃銃といった兵器が展示場の如く使用されていると言われます。
無辜の民を殺すにも良心の呵責が少ないこれらの兵器は今後需要が高まる(まだイスラエルを応援しますか?)
VI. 戦術変更ですでに変わり始めた世界
イスラエルのガザ虐殺に対抗して、イエメンのイスラムフーシ派が、紅海を通過するイスラエル支持派国の船籍民間船に攻撃をかけて、事実上「スエズー紅海航路」を封鎖してしまっているのは周知の通りです。米軍は巡航ミサイルなどでフーシ派の拠点を攻撃しましたが、ドローンなど基地を必要としない攻撃部隊はGPS機能を駆使してどこからでも攻撃可能であり、高価なミサイル攻撃は意味がなく、非対称戦において弱者が勝利する戦術のモデルケースになっています。フーシ派は無人潜水艇も所持していると考えられ、米海軍も近づけない状態です。攻撃前一日のスエズ運河を通る貨物船は56隻、タンカー23隻だったものが、この3月には一日貨物船28隻、タンカー14隻に減少し、通過しているのは攻撃対象にならないロシアやアフリカの船だけになっている由で、特にコンテナ船は喜望峰を回ると10日かかるため、今後海運の不足が確実に表れると考えられます。シオニズムは残虐なだけでなく、シオニストの利益のために世界中の一般民衆が迷惑している事をもっとメディアは報ずるべきでしょう。
2024年4月4日、ミャンマーの反政府勢力(挙国一致政府NUG)は首都ネピドーの政府軍軍事目標を無人機で攻撃したと発表し、政府軍はいくつかのドローンは撃墜した様ですが、被害も報告されています。安価な自爆ドローンは非対称戦の戦術を大きく変化させることは間違いなく、今後は高価な遠距離からの精密極超音速ミサイル攻撃よりも進出気没な安価な自爆ドローンの方が、コストパフォーマンスが明らかに良いと言えるでしょう。「金と権力を持つ方が常に勝つ」という時代は終わるかも知れません。
VII. 防衛費倍増の日本は効率的な兵力増強できるか?
明治維新において、薩長、幕府ともに兵器が必要となってグラバーなどの欧米の武器商人はクリミア戦争や南北戦争で不要になった大量の武器を日本に売りつけて大儲けをしました。日本は大量の金銀や美術品などの国富を失う結果になります。「ウクライナはロシアに侵略された」「ロシアや中国の軍備増強に対抗するべきだ」と日本は米国からミサイルや新型兵器を大量に購入する契約を結ばされた様です。
戦争は急激な兵器と戦法の進化を促します。従来の戦術思想から古く高価な兵器を言い値で買わされる愚を日本は再び演ずることはないのでしょうか。憲法を改正し、高く買わされた兵器で欧米の鉄砲玉として中露と戦争させられて日本人が大量に死ぬという「欧米から見て笑いが止まらない」悲劇(喜劇)を絶対に避ける「覚悟と賢さ」を今の日本人(特に若者)は持っているのか心配です。
幕末に火縄銃よりは高性能だったが、欧米で不要になった余り物を日本は大量に買わされた。多くは前装式のエンフィールド銃やライフルのないゲベール銃で、後装式のスナイドル銃(エンフィールドの改良型)や連発ができるスペンサー銃(北軍が多用した)は少なかった。日本は欧米からまた高額で「いらんもの」買わされないだろうか。
これこそ革命が必要があるけど日本人は怖がって見て見ぬふりしている!
「国賓待遇」というのは「カモがネギ背負ってやってくる」場合の接遇であって、ギリギリの国益を交渉でかなえるための訪米の場合は国賓待遇にならない。
外交の常識中の常識。
まさか日本人で浮かれている奴はいないと思いますが、「日米同盟の強化のアピール」=「対米従属(今のネオコン政権≠トランプ多極勢力でなく)のアピール」が何を意味するか、「まともな解説」が欲しい所です。