rakitarouのきままな日常

人間様の虐待で小猫の時に隻眼になったrakitarouの名を借りて政治・医療・歴史その他人間界のもやもやを語ります。

「医師数不足が医療崩壊の原因」は本当か

2008-06-19 01:11:20 | 医療
<医師増員>医学部の定員削減見直し 政府が方針転換
6月17日11時58分配信 毎日新聞

 政府は17日、医学部の定員削減を定めた97年の閣議決定を見直すことを決めた。
閣議後に舛添要一厚生労働相が提案し、福田康夫首相が了承した。
来年度予算編成に向けた「骨太の方針」に反映させる。
政府は「22年度には医師不足は解消する」として、削減方針を変えてこなかったが、
医師不足の深刻化を受け、政策を全面転換する。具体的な増員数は未定だが、
削減分を戻したうえ、さらなる上積みができないか検討するとみられる。

 舛添厚労相は福田首相との会談後の会見で
「偏在ではなく、不足しているとの認識に立って医師を増やす」と述べた。
具体的な増員目標は「財源の問題もある」と明示しなかった。

 医療費抑制を念頭に置いた医学部定員の削減は80年代後半に始まり、
07年度の定員はピーク時(84年度)より8%少ない7625人。
日本の人口1000人当たりの医師数は2.0人(04年度)で、
経済協力開発機構(OECD)加盟国中で最低レベルだ。

 これに対し、舛添厚労相は自身もメンバーに加わる同省の
「安心と希望の医療確保ビジョン会議」で、医学部の定員増を主張。
提言に方針を明記し、政府として数値目標を打ち出すのが望ましいとの見解を示していた。
【清水健二、佐藤丈一】

この記事には現在の医療問題の根源となる点が多く示されています。
1) 医療費抑制を達成するには医師数を減らせばよい、という発想
2) 22年度には医師不足は解消するはずなのに不足が深刻化した矛盾
つまり、医学部定員増で医師不足が解消するなら80年代に一県一医大構想で医学部を多数新設をした時点で解消されてくるはずなのに何故今不足しているのか。
3) OECD加盟国で医師数を比べる意義は?

どうも政治家や官僚は「医師不足」と言いながら、その不足している医師の意見を聞こうとしないからこのような隔靴掻痒の結論を出してくるのではないでしょうか。はっきり言います。現在の「医師不足」というのは医者全体の頭数が不足しているのではありません。

「安い給料で、休みを取らず働き、リスクの多い医療を進んで行い、一つ間違えれば犯罪者として断罪されることもやむなし、という覚悟で働く医者」が不足している。が正しい表現です。つまり「基幹病院の外科系、産婦人科、小児科、救急疾患を扱う医者」が不足しているのであって、開業医や眼科皮膚科などの医師は増加しています。また若い医師達がこのような「きびしい環境の医師」にならず、眼科耳鼻科精神科老年科腎臓内科などには沢山入っている事実も認識すべきです。医学部定員を増やした所で、若い医師達が現在も沢山入りつつある所謂「楽な科」に入るだけならば何の意味もない。つまり政府の議論は「本気で問題解決をするつもりなどありません」と宣言されているように私には見えます。

「リスクの多い医療を進んで行ってくれる医者」を増やすには、給料を上げて、休みを取れるようにし(これは数を増やすしかありませんが)、間違っても即犯罪者として断罪されるようなことにならないようセーフティーネットを設ける、という簡潔明瞭な解決策があるのですから、それらを実行すれば良いのです。現在勤務医の年収は開業医の半分から70%であることは統計で示されています。勤務医の年収を開業医の1.5倍にすれば、勤務医が確実に増えます。勤務医が増えれば休暇も取れるようになります。そんな金がどこにある、という声が聞こえて来そうですが、医学部定員を増やす金が簡単にでるのならば後はやる気の問題と思います。官僚的発想では開業医に回る金を保険点数の改定で締め上げて、病院の方に回す、ゼロサムによる解決を計るでしょうが。確かに日本国全体が低賃金にあえいでいる時に医者だけ給料を上げろ、では納得できないのは当然かもしれません。だからとう訳ではありませんが、私は日本人の勤労者の賃金は上げるべきと普段主張しています。皆が豊かにならなければ社会は良くならない、足を引っ張り合っていてはいけない。

別の考え方として、極端な話、私は医療者は医者も看護師も介護士も全て公務員で良いのではないかとも考えています。開業医も公務員。皆同じ給料。但し激務に対してはそれなりに手当てを出す。公務員ですから、医療事故に対しては国が責任を持って対応する。これならば休みも取りやすくなりますし、地域や科の偏在も多少は緩和されるのではと思うのですが。この問題はまた後日もあらためて検討したいと思います。

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