rakitarouのきままな日常

人間様の虐待で小猫の時に隻眼になったrakitarouの名を借りて政治・医療・歴史その他人間界のもやもやを語ります。

日本のリベラルはどこに行くのか

2020-10-21 18:25:44 | 社会

日本のリベラルに限らず、世界のリベラルは一体どうしてしまったのだろうと感ずる事が最近多いです。

「欧州ポピュリズムーEU分断は避けられるか」 庄司克宏 著 ちくま新書2018年刊

 

を今読んでいるのですが、メディア等で「悪いもの」「望ましくないもの」として扱われるポピュリズムは本当に「消滅させなければ人類にとって害をなすものなのか」疑問に思います。ポピュリズムは「大衆迎合主義」と訳されてDi Tellaの定義によると「特権的エリートに対抗して一般大衆の利益、文化的特性および自然な感情を強調する政治運動を指す。少数派の権利に配慮することなく、直接大衆集会、国民投票や大衆民主主義を通して多数派の意思に訴える」とあります。そしてその特徴は「反リベラル」であるとされます。

 

ははあ、リベラルを自任する人はポピュリズムが嫌いだという事は分かります。では「リベラルとは何か」と言うと「立憲民主主義を骨幹とする思想」とされる場合が多いようです。私は若い頃から立憲民主主義思想一本で来たという自負があるのですが、国防・自衛隊志向であったことからリベラル派とされる人からは嫌われる事の方が多かった様に思います。本来、共産党や社会党で社会主義を目指す人は根本的にリベラルではありえないはずですが、彼らはどうも自分たちをリベラルだと勘違いしている。日本では、自民党中道左派とかハト派とか呼ばれる人たちが本来のリベラルに近い定義になると私は思います。欧州ポピュリズムは極右と揶揄される人たちが目立ちますが、ギリシャなどは左派ポピュリズムであり、左寄りだからポピュリズムではないと高を括る事はできません。社会的エリートと言われる人はリベラルを自任する人が多いと感じますが、ポピュリズムの台頭はこのエリートたちが社会の変化に付いてゆけず、大衆が望む社会を実現できなくなった事、多数決で決まるべき民主主義を社会が体現できていない事から生まれた必然ではないかと私は思います。大衆の意見こそが多数派であり、民主主義では少数派の意見も取り入れた上で最終的には実現されなければならないはずなのに多数派の意見が無視されている事が問題の根幹にあるのであり、リベラルエリートはポピュリズムを批判する資格がないだろう!と私は思います。

 

マルキシズムが全盛であった昭和の時代は右や左は各種政策や意見がワンセットになって存在していたので「思想のお勉強」をすることで理論武装ができて相手を負かせたり、レッテルを貼って相手の意見を封じる事ができました。しかし社会主義経済が消滅してマル経が全否定されると、当時の左派と言われた人たちは人権や環境を訴える以外他人のマウントを取る事ができなくなります。本来「人権や環境」は右派の人たちも重視していた事であり(ソ連や中国こそ環境汚染や人権軽視)、「だからどうした」みたいな状況で意見が噛み合わない状態が出現します。米国では左派地球市民的グローバリスト達がネオコンサーバティブ(ネオコン)と呼ばれる地球規模の資本主義経済を構築することを目指し、それが巨大資本の利害とも一致したために2000年代に入ってから大きな力を持つようになります。現在地域重視の経済を根っからの保守の人たちが「反グローバリズム運動」として展開しようとしていますが、旧来の左派の人たちは「保守や右派」とみられるのを嫌い積極的ではないように見えます。米国のトランプ政権が反グローバリズムの良い例ですが、トランプを良く言うリベラルを自任する人がいない精神的構造はこの辺にあるのでしょう。

 

米国リベラルの凋落

 

米国現地時間10月14日朝、米紙ニューヨーク・ポストは、大統領選前の「10月のサプライズ」として、バイデンの息子ハンター・バイデンのウクライナでの汚職スキャンダルに関する電子メールが、暴露されたことを報じました。 このニュースはすぐに多くの米国メディアに取り上げられ、上院国土安全保障・政府問題委員会が調査に介入することになりました。公開されたメールによると、ハンターは2015年に、父親のバイデン前副大統領をウクライナのガス会社「ブリスマ・ホールディングス」の幹部に紹介。当時、ウクライナ側の事務を担当していたバイデンは、2016年にブリスマ社の汚職事件に介入し、米国の10億ドルのウクライナ支援を保留して、ブリスマを起訴したビクター・ショーキン検察官を解雇するようウクライナに迫って脅していたとされます。それのみでなく、ハンター・バイデン氏は中国との不適切な関係も取りざたされています。しかしメジャーのマスコミは、大統領選はバイデン有利と報道するのみです。また一流の医学科学雑誌であるnatureLancetまで、ここにきて大統領選はバイデンを応援するという医学と関係ない記事を堂々と載せるようになりました。もうなりふり構わずという感じでしょうか。医学雑誌がバイデンを支持する理由はトランプが非科学的な対応を取って新型コロナ感染症の犠牲者を増やしたということですが、根本的にすべての国民が低価格で最善の医療を受けられる欧州や日本の様な「国民皆保険制度」というシステムがない事がCovid19対策においても米国医療の最大の欠点であるのに、それに言及せずバイデンを支持すれば米国民の健康が増進すると医学雑誌が表明するとは呆れ果てた物です。「製薬会社や医療産業が怖くてとても金儲け主義医療を批判するような記事は書けない」バイデン支持を打ち出すことで協賛支援金をもっと下さい、が本音でしょう。

バイデン氏支持を表明するnatureとlancetの記事

 

欧米のリベラルがボロボロの状態なのですから、日本のリベラルを自任する人たちが見る影もないのは致し方ないことかも知れません。


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5 コメント

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Unknown (山童)
2020-10-21 21:25:42
先生が嘆息するのもムリない気がします。そうですか、
権威ある医学誌までが……。
よくアメリカの保守層が言う「黒人に犯罪者多い」は事実でして。ただ、保守層の悪い処は
「では、なぜ黒人に犯罪者が多くなってしまうのか?」 には眼を向けない!
しかし、本来に追及すべきリベラルが、その本質を突かずして、ポリコレでの批判しかしなくなってる。
先生の言われる通り、日本でのリベラルは、もともとは自民党の中道派あたりを指していました。左翼系の人達がリベラルを自称し始めるのは、冷戦終結して、ポリコレ的な内容でしか、彼らが売りが無くなってからなんですね。
もつ一つ言うと旧革新系の人達の多くは「結論ありき」で逆算して話をします。結論が既に決まっているので、柔軟性に欠けて、都合の悪い話題は無視したり、誤魔化す。
そこは保守も同じなのですが、もともとある種の理想主義的な建前を前面に押し出すきらいがあるので、余計に矛盾が目立つし、腹黒く(腹黒いのは保守も同じだけれど)見えてきまうのですね。やり方が科学的でない。そういう点を私的すると、すぐに文明論的な「大振り」な話にズラすし。
その退廃が、彼らの嫌いな首相の長期政権を許したのですが、かれらは理想主義なせいなのか、絶対に反省をしないのですね。古い友人に共産党員がいますが、今の志位さんの、
政治献金を受けない方針で、かなり多くの共産党議員が苦しんでいると話してました。でもトップの面子があるので、
変えられない。その種の硬直化を避ける手段の一つか、
より緩やかな社会民主主義だったはずですが、その中道寄りの人らも頭が固まり……。庶民が自分たちをどう見ているのか解らない。リベラルって滅びるしかないのでは。少なくとも日本では。
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Unknown (かわ太郎)
2020-10-22 00:38:48
まぁ……「清濁を合わせ呑む」が現実の政治には不可欠で、
移民の国でない日本では、社会の断層が少なかっ。
1億総合中流の長い眠りについてましたから、左巻きの人は理論を純粋化する。そこで袋小路に入ってしまったのだろうと思います。
私や院長は先生のコロナ論に賛成ですので、危機感はある。このまはまでは……と。
でも、最後はアメリカの大統領選挙で決まるのでは?
嫌な話ですが、そうやって戦後を続けてきたのが実情であり、日本橋屋独立国家ではない!
首都の制空権を他国に奪われたままの国を、どうして独立国家と言えましょう(笑)
ただ、いつまでもあると思うなオヤトアメリカです。
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理に適った是々非々 (rakitarou)
2020-10-22 08:29:30
仰るように初めから結論ありきではなく理屈の通った是々非々が「リベラルの信条」でなければいけません。
オバマケアは国民全員に民間保険加入と引き換えで製薬会社が独自に薬価を決めてよいという許可を与えました。トランプはオバマケアを否定し、製薬会社にも薬価を引き下げるよう指示しましたが、どちらが製薬会社の利益につながるかは明らかすぎ。製薬会社が蛇蝎の様にトランプを嫌う理由がこれです。
薬剤の機序からCovid感染を抑制するクロロキンを予防的に内服は真の効果は判りませんが間違いとは言い切れない。ウイルス増殖を抑制するレムデシベルやアビガンは重症サイトカインストームには効かないから死亡率は下げないかも知れませんが早期に使えば効果は期待できる。従ってトランプの薬の使い方は間違いではないけど、新薬の数百分の一の薬価でしかないクロロキンを宣伝されたら儲けにならないから大した副作用もないのにリベラルメディアは科学的でないと必死で批判してましたね。
8月以降日本の若年者の自殺が急増していると言う報告があります。「コロナ怖い怖い」のリベラルメディアは自責の念などないのでしょうか。
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こんばんは (猫の誠)
2020-10-22 20:05:31
リベラルでも何でも、日本の議論の悪癖は、言葉の定義を明確にしないことです。試しに最近のJISもそうですがISOでは、最初にterms and definitionsすなわた、用語と定義が゛述べられます。言葉の定義すらせずに都合よくリベラルという用語を使うのがおかしいのです。
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言葉の定義 (rakitarou)
2020-10-23 07:13:29
誠様 コメントありがとうございます。おっしゃる通りで医療関係の話題でも言葉の定義をあいまいにして混乱を生じているものが多く、ブログの話題にしようと考えていますが「がん治療」についてもかなり誤解があるように思っています。
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