1960年代の古い金型ですが、大分前に購入していたAirfix 1/72のSunderland IIIを作りました。大きなモデルで元々が大まかな作りなので製作にも時間がかかり、気合いが必要と時期を見ていたのですが、7月の連休から作り始めて8月までかかりました。
ASVを装備した実機の写真(機首のアンテナは微妙に曲がっている。また無線用の張線も機首のアンテナから出ているように見える。)と本に掲載されていた図版
Short Sunderlandは1938年から沿岸警備隊の哨戒任務につきその後現役で大戦後含めて21年使われたほぼ唯一成功した大型飛行艇です。1939年には早速魚雷で沈められた貨物船の乗員34名を救出する戦功をあげました。1945年まで739機作られたSunderlandのうち、MkIIIは456機作られ、エンジンは1065馬力のブリストルペガサス4機を擁し、910kgの爆弾、爆雷、機雷など搭載できました。最大時速330km、航続距離は2,800kmあり、広範囲の対潜哨戒、救助任務にあたりました。ASV Iあるいは(Air to surface vessel radar II) ASV IIレーダーを装着して大戦中は対U boat戦闘に活躍しました。ASV Iレーダーは900mの高度から10kの距離の探査が可能であった所、改良型のASV IIは600mの高度で37kmの探査が可能になるまで進歩しました。(Aggressors vol 4 Howell Press 1993)U-boat側もレーダー探知機を備えるようになると、レーダー波を感知すると同時に潜航するようになり、哨戒機との追いかけっこが続くのですが、潜水艦にとってかなりの行動制限を強いられることになり、攻撃される輸送船にとっては強い味方になったと思われます。
翼端のフロート鋼線も写真など見て自作してみました。 船底部はエアクラフトグレーを使用
モデルは古かったのでまず洗剤で洗って劣化したプラスチックの澱や埃を落とす事から始めて、白い機体には少し船っぽい汚れが透けるような接合部に茶の塗装をしてから白を吹いてみました。上面はエクストラダークシーグレーとダークスレートグレーの迷彩ですが、スレートグレーの色味にいつも苦労するので、某所で見つけたフィールドグレー+オリーブドラブ1:1という配合で作ってみました。結果的には英国機用のダークグリーンに似た色になったのですが今回はこれで通しました。今回はこの機体にAggressorに掲載されていたASV II radar を付けて製作してみました。写真や図、Airfix 1/72のArmstrong whitworth whitleyに付いているASV IIの部品の大きさを参考にライナーと真鍮線で自作してみました。まあまあそれらしい出来にはなったように思います。プラモデルではイタレリやスペシャルホビーからもSunderlandが出ていますが、ASVが付いているのはAirfixのモデルを元にしたCorgiの完成品のみの様に思います。ロンドンの英国空軍博物館にSunderlandの実機が展示されていて、近くで観覧できますが、やはり大きさに圧倒された覚えがあります。
哨戒任務ではやや先輩格のロッキードハドソンと比較しても機体の大きさが分かる。
機首にはアンカーを取り付ける引き込み式の杭があったのでそれも付けてみました。やはり堂々とした体躯です。英国空軍博物館に展示されているのはMk V (rakitarou撮影)
と疑問に思い記事を読みました。レーダーがバトン・オブ・ブリテン時にあったのは映画「空軍大戦略」などで存じますが、機体に乗せるのは独の夜間迎撃機が搭載しました、機種にTVアンテナつけているような奴なのです。
まさか、そこまでの性能を持つ哨戒用のレーダーがあったとは驚きました。
資料によると大戦末期に出たASV IIIはさらに改良されて探査能力が高まったようです。音波探知技術も第二次大戦で飛躍的に伸びて、現在使っているのもその改良型に過ぎないところがすごいと思います。結石破砕に使っている衝撃波もアイデアの原型は旧ドイツにあったようですし。
誠様も丁寧に模型を製作され、またバックグランドも探求されていてプラモ愛を感じます。古い金型のプラモは難物も多いですが、希少で現在新金型にないものもあるので、最終的な完成度はともかく、製作過程で工夫をしたりする楽しみがあるようにも感じます。