2025年7月6日に開催された日野市市議池田としえ氏を迎えての「温暖化とコロナに流されない市民の会」勉強会におけるメインテーマの一つが子宮頸がんワクチンの問題でした。新型コロナワクチンの問題については、今までも詳しく度々紹介してきましたが、子宮頸がんワクチンの問題はやや専門外の所もあって予算に見合う効果かという以外は深く追及した事はありませんでした。
子宮頸がんについての一般的説明
I. 現在の状態
HPVワクチンは、受けた女性の一部から強い副反応が出て問題になったため、厚労省により2013年6月から積極的勧奨(集団接種)を控える処置が取られましたが、2022年4月から他のワクチンと同様「個別の勧奨」(個人の判断で無料摂取可能)という扱いになっています。
厚労省の個別推奨とするパンフレット(厚労省のホームページから)
受けるワクチンの種類は、ヒトパピローマウイルスの種類により、(HPV 16,18サーバリクス)(HPV 6,11,16,18,ガーダシル)(HPV 6,11,16,18,31,33,45,52,58 シルガード)の3種類のワクチンが使用可能です。小児科、婦人科学会では11~14歳の接種が推奨されています。抗原に使われるのはウイルスの外殻を構成するL1蛋白で、感染性や発がん性を持たないことからこの蛋白を酵母などに遺伝子組み換えで作成させて使用します。L1蛋白自体はウイルスが細胞に感染する際に必要とされ、ヒト蛋白と似たアミノ酸配列を持つために、これに対する抗体が自己免疫疾患を引き起こす可能性が指摘されています。HPVワクチンによる副反応の多くもこの自己免疫誘発作用で神経症状などが出る可能性が示唆されています。
II. ワクチン接種の利点
子宮頸がんの発がんに関与する(慢性感染が前癌病変を惹起することが証明されている)ヒトパピローマウイルスの感染を予防し、前癌病変の罹患率が減少することが証明されています。感染してしまった状態の治療、発がん自体の予防効果はありません。2025年3月までに1回以上接種した対象女性は59%、3階接種完了者は34%と報告されています。高校1年の初回接種率は41.9%、全体で22.1%だそうです。私自身は、打ちたい人はどうぞと思いますが、自分の娘には打っていませんし、身近な人にも相談されたら「不要」と答えています。
子宮頸がんは一次予防がワクチンによるウイルス感染の予防、2次予防が検診による早期発見と規定されていますが、先進国では2次予防を充実させて早期発見に勤めれば十分に患者を減らす事ができると考えるからです。新型コロナワクチンでも見られたように、ウイルスはワクチンで感染を抑えれば、変異種を作って免疫をすり抜けるようになります。二価ワクチンが、四価、9価と対象ウイルスを増やしたのも、ウイルスが無限に変異種を作る可能性があって多くの種類があるからです。副作用があって永続性がないワクチンよりも、健診による二次予防の方が実際的であり、予防医療という「健康人に対する医療が儲かる」という薬剤メーカーの戦略に一般人(医者や役人も)が協力する必要はないと考えます。
III. なぜ発がん予防と言わないか
HPV感染が浸潤がんまで移行するには数年以上かかります。またHPVは最も一般的な性感染症で、多くの人が一度は感染して無症状のまま経過したり、自然に治ったりします。このウイルスは身体のどこにでもあるウイルスであり、ワクチンは感染した状態の治療の意味はないので感染する前の小中学生への投与が勧められている訳です。日本における子宮頸がんは2023年は年間1万人程度が発症して3000人程度が亡くなります。子宮体部癌は60代以降が多いのですが、図の様に頸部癌は30-40台が多く、亡くなる人も40台以降が多いのですが、女性のがん死亡16万人(2023年)に占める頸部癌死亡3000人の重さをどうみるかだと思います。
日本における子宮頸がんの年齢別罹患率(人口10万あたり)と死亡率(人口10万あたり) がんセンターの統計による
先進国における統計は、ワクチン接種者に前癌病変が有意に少ないという以上のものは現状ありません。それはHPV感染が一直線に癌化に進む訳ではない、図の様な(詳しい説明は省きます)複雑な宿主―微生物相互作用と言われるシステムが確認されているためです。
HPVウイルスの子宮頚管粘膜への感染の図 感染してから癌化するまでの宿主-微生物相互作用の図
因みに、「がん」とは、細胞が本来の役割(分化)を離れて(脱分化)、しかも無限に増殖する能力を持った状態と「定義」されます。図の異常な増殖(aberrant proliferation)をして不死化(immortalization)には、多くの遺伝子変異が必要になります。「感染を防ぐ」と「癌化を防ぐ」は別物であると解ります。「がんは存在しない???」などと言う人がいますが、がんとは「脱分化した細胞が無限に増殖する病態という病理組織学的定義」なので存在の有無でなく定義である以上「ある」が真実です。1+1は10進法では2と定義されている(二進法では10)のだから、存在云々ではなく、1+1は2であることと同じです。
ウイルス感染と癌化は一直線ではない 宿主の遺伝子変異などのプロセスがある
Ⅳ. 重篤な副作用
HPVワクチン後の線維筋痛症様副作用の類型化をした報告
世界的にHPVワクチンが接種されるようになって、ワクチン接種後に線維筋痛症に類似した慢性疼痛性自律神経障害を発症する例が散見されるようになり、HPVワクチン接種症候群として報告される様になりました。日本は主に複合性局所疼痛症候群の症状(とにかく痛い)が多く、デンマークからの報告は体位性頻脈や慢性疲労といった自律神経障害の例が多い特徴があります。スペインの報告は、有害事象は1000回に1例で、その1/3が重篤と分類され、それは他のワクチン接種の副作用の10倍という高率でした。世界各地からの独立した報告書で、頭痛、疲労、筋肉痛、知覚異常、めまいなど、ワクチン接種後の同様の症状のグループが記述されているという事実にあります。世界保健機関の有害作用データベース(VigiBase)の研究は、この問題を浮き彫りにしています。頭痛、めまい、疲労、失神の症例は、同年齢の個人に実施された他の種類の予防接種と比較して、HPVワクチン接種後に多く報告され、より重篤でした。HPVワクチン症候群の症例では、症状の発症日と誘因物質の投与日が明確に特定されています。最もよく見られる症状は線維筋痛症に典型的なもので、頭痛、全身痛、知覚異常、倦怠感などです。これらの患者の中には、振戦やミオクローヌスなどの運動障害を訴える人もいます。これらの運動障害は、複合性局所疼痛症候群のよく知られた合併症です。HPVワクチン症候群の患者は重度の自律神経失調症を呈します。
日本のワクチン後末梢神経痛についての報告
日本の44例の報告では、ワクチン接種時の年齢は11-17歳、発症までの平均潜伏期間は5.4±5か月。頻度の高い症状は、頭痛、全身倦怠感、脚の冷え、四肢の痛み、脱力などであった。四肢症状のある28名の少女の皮膚温を調べたところ、手指で軽度の低下(30.4±2.6℃)、足指で中等度の低下(27.1±3.7℃)が認められた。デジタルプレチスモグラムでは、特に足指で波の高さが低下していた。4名の少女の四肢症状は複合性局所疼痛症候群(CRPS)の日本の臨床診断基準と一致し、他の14名の少女の四肢症状はCRPSの海外の診断基準と一致したと報告されています。このワクチンによる副作用の明らかな機序は不明ですが、L1蛋白のヒト蛋白との類似性が自己免疫誘発に関与しているという事が推察されます。
いずれにしても発症した個人にとって、一生を棒に振るほどの病態であって、ワクチン接種による利益に対する不利益の大きさは計り知れません。安易な予防医療の推奨は厳に慎むべきであるという私の主張の根拠です。