2023年5月21日に独立系ジャーナリスト高橋清隆氏(ご本人は反ジャーナリストと名乗っている)の「誰も伝えないメディアの虚構」と題する講演を聞きました。「ジャーナリズムの本質は、その起源からして富者の意図を一般人(貧者)に伝達することに始まるのだから、一度全てを解体して本質から作り変えねばならない。」とする一見ラディカルな内容でしたが、ご本人の意図として「決して悲観論ではない」と繰り返しておられました。拙ブログでも最近メディア論を取り上げてきましたので、備忘録的にまとめておきたいと思います。
高橋清隆氏
I. 公正中立なメディアはあり得るか
大手メディアの偏向報道が問題にされ、ネットなどでは「マスゴミ」などと揶揄されるようになって久しいが、メディアは公正中立で市民にとって正義を伝えるのが本来の姿だったと言えるだろうか。演者(高橋氏)の考えるメディアの存在目的とは
(1)権力者に都合の良いプロパガンダの流布: 言葉通り
(2)大衆の知識を一定レベル以下に抑える: 伝える情報の取捨、結論を与えて考えさせない。
(3)亜現実への誘導: テレビや映画などの映像を現実として認識させる。
の3点に集約される。そもそもメディアと呼ばれる機構が世の中に登場したのはロスチャイルド家が出資したフランス「アッバス通信社」が嚆矢であり、政府の通信を盗んで投資家に情報を売り、株で儲けるインサイダー情報取得の目的であった。それらの一部を無料で一般大衆にも与えたが、多くは攪乱(ガセネタ)の目的で胴元である資本家が最終的には儲かる様に作られた。アッバス通信社はアジア方面には「ロイター通信社」欧州には「AFP通信社」として発展して行き、日本は下部組織として「共同通信社」が作られた。
情報による支配は古代バビロニアが起源と言われ、(1)財の管理(2)法による合法的暴力支配(3)情報統制による知識の統制が行われた。日本におけるメディアの始祖は横浜で外国公使館に通訳として雇われながら「新聞」を発行したジョセフ彦三と思われ、間接的に西洋資本による明治維新という名の日本社会、資産の収奪を助ける結果になったと考える。
II. 日本の戦後メディアと記者クラブ
戦後「メディア」は米国による日本支配の手段として大いに使われた。1985年の時点で、日本を支配するために(大使館付きなどで)配置された米国CIAのofficerは100人いたと言われ、そのそれぞれに5-6名のエージェントが配置されていたと言う。それらエージェント(工作員)は日本の新聞社、テレビ、メディア、教育界(大学)などに配置され、米国の意図通りの情報統制を行うために豊富な資金を与えられて活動していた。1970年頃までは、政治批判などメディアには現在よりも自由があった様に錯覚するが、統制されていた事実は現在も昔も同じである。
日本には手軽にまとめてメディアの情報統制を行う装置として「記者クラブ」制度が設けられ、現在も健在だが、大手メディア自体が記者クラブ制度を「特権として固持」しようとさえしている。
III. デビッド・アイクの思想
デビッド・アイクは日本では太田龍に代表されるイルミナティなどの世界支配、爬虫類人類支配説を唱える思想家で、全てをそのまま信用するのは抵抗があるが、世界を一極支配する非情な勢力の存在を仮定する上で説得力があると演者は考えています。
デビッド・アイク氏 太田龍氏
グローバリズム(世界一極支配)と多極主義が現在対極に分かれてウクライナ戦争や米中対立の形で争っている様に見えますが、真の支配層からの視点ではどちらの側もそれぞれのpolitical actor(政治家役)が演じている、一見対立している亜現実の世界の現象であろう、と解釈します。トランプのSNSからの排除を回復させたイーロン・マスク氏も、メディアの改革者として持ち上げられていますが、彼はAIとヒトを5Gでつなぐ「ニューラリンク」の提唱者であり、FDAからも2020年にヒト脳内へのチップ埋め込み実験の許可を得ており、映画「マトリックス」で描かれた世界を実現するために称揚されている人物に過ぎない。
映画 マトリックスから
ハリウッド映画は娯楽という亜現実を使って将来の世界の姿を予想させる(受け入れの準備をさせる)手段として用いられる事が多い。マトリックスやコロナ感染症を予想させる映画も多く作られていた。事件などのニュースも「取り上げる必要があるから」ニュースとして流しているのであり、類似事件でも取り上げられなかった事件との差異(質や時期=他のより大きな問題を隠す目的)などを考える必要がある。
IV. メディア解体論
高橋氏はメディアによる支配体制から脱するためには、ラディカルな意見になりますが、一度全てのメディアを廃棄する必要がある、新聞、テレビラジオ、ネットを含む全てを一度捨て去って生活をし、「直接伝達による情報の交換」のみに戻すことが新たに正しいメディアを作る上で必要と説きます。現実問題としては困難ではありますが、メディアには暗黒の未来しかないという程の悲観論者ではないと話しておられました。
2023年5月15日NHKニュースウオッチ9が、新型コロナワクチン被害者遺族の語りを「コロナ死」遺族にすり替えて放送した事件が問題になり、翌日の新聞各社で取り上げられ、5月16日の番組内でキャスター自ら謝罪をする異例の事態になりました。ワクチン被害を公に認めない政府への忖度に基づく偏向報道、という評価で間違いはないと思われますが、ディレクターは、何故敢えてワクチン被害者に取材をしたか。15日の番組終了後にわざわざ取材した相手に電話で感想を聞いていた事実などをあげて、「体制に不都合な現実を糊塗するピラミッド構造のNHK幹部への現場ディレクターのささやかな反乱ではないか」という見方をされています。
講演の最後に米国の著名なジャーナリストだったジョン・スウイントンが1880年のある宴会の席で報道の自由について語ったと言われる挨拶を紹介されました。
(引用開始)
世界の歴史の現時点において、アメリカには独立した報道機関などというものは存在しない。あなたもそれを知っていますし、私もそれを知っています。
自分の正直な意見をあえて書こうとする人は誰もいませんし、もし書いたとしても、それが決して印刷物に載らないことはあらかじめわかっています。私は、自分と関係のある新聞に私の正直な意見を掲載しないことで、毎週給料をもらっています。他の人も同じような仕事で同じような給料をもらっているし、正直な意見を書くほど愚かな人は、別の仕事を探して街に出ているだろう。もし私の正直な意見を私の論文の一号に掲載することを許したら、24時間も経たないうちに私の職業はなくなるだろう。
ジャーナリストの仕事は、真実を破壊し、あからさまに嘘をつき、倒錯し、中傷し、拝金主義者の足元に媚び、日々の糧のために国と人種を売ることである。あなたも私もそれを知っていますが、独立した報道機関を乾杯するのは何という愚かなことなのでしょうか?
私たちは裏で金持ちの道具であり家臣なのです。私たちは操り人形で、彼らが糸を引いて、私たちは踊ります。私たちの才能、私たちの可能性、私たちの人生はすべて他の人の財産です。私たちは知的な売春婦です。
(出典: Labor's Untold Story、Richard O. Boyer と Herbert M. Morais 著、United Electrical, Radio & Machine Workers of America, NY、1955/1979 発行。)
心あるジャーナリストは昔も今も沢山いるという事を言いたかったのだと思います。