rakitarouのきままな日常

人間様の虐待で小猫の時に隻眼になったrakitarouの名を借りて政治・医療・歴史その他人間界のもやもやを語ります。

終身雇用制の是非

2009-05-21 00:24:38 | 社会
経済学者の池田信夫さんのブログは人気があり、内容も充実しているので勉強になります。思想信条にこだわらず自分が正しいと考える結論をストレートに出してくる所が人気の秘密かと思われます。最近のブログでは、日本の終身雇用制がくずれつつあることが労働力の流動性を確保し、社会構造の変化による労働需要の変化に柔軟に対応できるようになる点で失業率も低くなるので日本にとって良い事なのだと主張し、賛否両論話題を呼んでいます。

経済学は現実を反映していない部分があり、所詮は学問でしかないと思われる所もあるのですが全くでたらめである訳でもないので彼の主張も経済学の前提に立てば正しいことになるのでしょう。但し同一労働同一賃金の原則が守られていなければ流動性を確保するための派遣社員は単なる使い捨ての安い労働力になってしまいますし、昨日まで道路を作っていた人が明日から介護の仕事ができるかと言えばそれは不可能であり需要に合わせた労働力の流動性の確保といっても現実には限界があります。

短期雇用と終身雇用の中間的な5年契約といった雇用形態も提案されていますが、これはかなり有用なのではないかと思います。特に女性は結婚や子育てという節目によって終身雇用から外れてしまうと社会的には戦力外とみなされてしまいがちであり、後は短期雇用のパートとしてしか社会参加ができない状態であることは大きな損失であると思われます。男性も5年位を節目に人生設計をしてゆくことは自分の人生を振り返っても悪くないことのように思われます。

昔から医者は「勤め先」という点に関しては終身雇用制とは縁遠い職業でした。私も国家公務員共済、私学共済、厚生年金とすでに年金形態を三回変えておりその度に退職金をもらっているので定年時の退職金は僅かです。6年ごと位に職場を変わってきて、それぞれの場所で自分なりにステップアップできたように感じています。医者の場合、半数は定年までに開業して個人事業主になることも一般の会社員とは大きく違う所でしょう。また原則的には同一労働同一賃金で、多少のでこぼこはあっても勤務医でいる限り給与に大きな変化がないことも勤務先に関して流動的であることを担保してきたと言えるでしょう。これは看護師、薬剤師、放射線技師といったコメディカルの分野でもほぼ同じと言えます(彼らは医者ほど流動的ではありませんが)。

霞が関の高級官僚達も実は終身雇用制ではなく、局長までの人事レースの途中で適宜勤め先を変えているはずです。もっとも雇用の流動的需要に合わせて勤め先を変えるのではなく、都合よく作られたポストに天下っているだけのようですが。

家を建てる時のローン審査は年収と勤続年数が問題になりますが、終身雇用制が崩れると銀行が人を評価する確かな目を持たないと誰もローンを借りられず、家を建てられなくなってしまいます。終身雇用が前提であると若い人を能力で評価できないから出身大学の偏差値で雇用して一生面倒見る事になり、ブランドとしての大学受験の現状が続く事になります。5年毎位に人を評価して雇用契約を結んでゆけばどこの大学を出たかではなく、この5年間に何をしてきたかが問題になりますから大学名で選ぶより適確な人事評価ができるように思います。

私は「同一労働同一賃金」の原則が補償されれば、終身雇用がなくなって3年とか5年を単位とした中期契約社員が増えることは良いのではないかと考えます。年功序列が保証されなくなると困るのは文系の人達かも知れませんが、理系の人間は技能を経験から評価しやすいですし、文系の人も資格を取るなりして年功序列に代わる給与のステップアップを求める努力をするべきだと思います。

ちなみに医者は年齢による給与の増加は殆どなく、私は臨床能力は今の方がはるかに上ですが、勤務先の給与体系の違いから10年前の方が今より年収は多かったです。
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