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rakitarouのきままな日常

人間の虐待で隻眼になったrakitarouの名を借りて人間界のモヤモヤを語ります。

狂った政府と正気の国民

2024-06-22 14:19:18 | 政治

グローバリズムが支配する権力つまり西側同盟政府とNATO、日本を含む西側主流メディアは狂い続けています。一方で欧米の一般市民達は、まともなオルタナメディアを視聴し、最近の選挙においては自国や市民社会の破壊を否定、戦争の拡大を防ごうとする「主流メディアが嫌悪する所謂極右ポピュリズム政党」を選択しています。まさに「狂った政府と正気の国民」の図と言えます。

 

I.  狂った政府の所業

 

「テロとの戦争」に戦略は不要でした。理不尽な「侵略と征服」に弱者はテロリズムで戦うしかなく、テロとの戦争をしかけたい側が侵略を続けていれば「テロ」は無くなりません。国内問題であれば、本来テロに対しては「警察」が対応し、対応方針(戦術)さえしっかりしていれば軍隊であっても「戦争に勝つための戦略」は必要ないのです。だから西側陣営は「戦略のない戦争」に慣れてしまったとも言えます。

しかし非対称戦でも、増してウクライナの様な国家対国家の「対称戦」では戦争の目標を定めて出口を見据えた戦略(off ramp strategy)が必須です。相手が全滅するまで戦うのでなければ、妥協も必要であり、テロとの戦いの様に「戦略」を定めずに「ダラダラと戦争を続ける」事は絶対に行ってはいけません。

ウクライナが敗退する理由を考える上での、ロシアとウクライナの違いを表にしたので示します。

状況に応じて「戦略を立てる総司令官がいない」戦争は勝てる訳がない

 

II.  西側諸国は徴兵制復活なるか

 

ウクライナが敗戦必至と考えた西側諸国は、NATO参戦によるロシアとの全面戦争を視野に入れて、大戦争では大量に捨て駒にできる兵隊が必要となり、現在の兵員数(プロの兵士)ではとても足りないため、冷戦時代以降終了していた徴兵制の復活を模索し始めました。しかし欧州の国民は当然ながら戦争などする気は一切ありません。移民やエネルギー高騰で散々苦労させられた欧州市民達は、一部金満グローバリストの繁栄のために戦争をする気など一切ありません。正気の市民達は次の選挙でグローバリスト政党を落選させ、自国を大事にする政治家を選ぶ事は間違いありません。問題は庶民の生活と関係ない「政治とカネ」の報道ばかり聞かされている日本人が「現実の世界情勢」に興味がなく、正しい知識を持っていない事です。

戦争のスキルがあるプロ兵士を無駄にしないため、捨て駒兵を大量に作れる徴兵制が大戦争には必須

 

III.  初めから失敗していたゼレンスキーサミット

 

2024年6月16日に閉幕したスイス・ビュルゲンシュトックにおける「ウクライナ平和サミット」は参加110か国・国際機関のうち84か国が「食糧安全」「原子力安全」「捕虜と子供たちの解放」(殆ど戦争と関係なく、しかも拒否国多数)という漠然とした共同声明に署名して終了という散々な結果でした。

直前にプーチン大統領から出された「東部4州からのウクライナ軍撤退」「ウクライナNATO加盟断念」「米欧の制裁解除」を条件に「交渉しても良い」という提案を、西側は誰も責任者がいない中で即座に「拒否」を表明しました。上記表にも記しましたが、戦争で責任者が不在の状況で終結の交渉などできません。2022年3月の時点では「ゼレンスキー氏」はウクライナ側の責任者として和平交渉に参加し、合意に達しましたが、外野である英米の指示によって合意を反故にしました。現在は、ゼレンスキーは法的な大統領でさえありません。プーチンはウクライナ代表を法的に有効であるウクライナ議会と考えており、ウクライナ議会はプーチンの提案を真剣に検討を始めていると言います(日本のメディアも報道してほしい)。ウクライナの国民は戦争に出向く肉親に対して「生きて帰ってきて欲しい」と心から願っています。この気持ちがわからないバカは戦争について語る資格はありません。

ウクライナ市民は無意味なサミットなど期待していないというAFPの記事

 

Ⅳ.  イスラエル・ヒズボラへの核使用から世界戦争の危機

イスラエル兵の犠牲も増加し続けている

ガザ紛争は発生後9か月経過して、4万人に迫るガザ市民が犠牲になっているにも関わらず、ハマスは壊滅などしておらず、イスラエル軍は600人の死者、4,000名の負傷者を出してまだ戦争を続けています。「鉄の剣」というガザ侵攻作戦は「テロとの戦い」ですが、形態は「非対称戦」であり、戦略に沿っているものの相手のハマスが形の見えない軍であるために一般市民の巻き添え犠牲ばかりで「軍としての勝ちが見えない」戦争になっています。テロとの戦い方COINを提唱したペトレイアス元将軍が批判した様に、戦争の仕方が間違っているのです。

戦争の仕方が間違っていると批判するPetraeus将軍

ハマスの壊滅が叶わず、避難民がいるラファへの攻撃が世界中から批難されると、イスラエルはレバノンのヒズボラとの戦争を画策し、戦闘は日ごとに激しくなっています。2006年7月のイスラエルによるレバノン侵攻では、弱いと見ていたヒズボラに散々叩かれて国連安保理の仲裁を受けてイスラエルは撤退しています。現在のヒズボラは当時の数倍の力を有し、ロケット数十万発、兵力10万、イランが後ろ盾にあります。米国はイスラエルロビーのAIPACの言いなりですから、単独で負けると分っているヒズボラに戦争を仕掛けて本格的な中東戦争を始めようとしています。その際ウクライナで使用されそうもない(勝っているプーチンは自分からは使わない)戦術核をイスラエルは兵力で優るヒズボラに使用する可能性が高いのです。イランが背後にあるヒズボラも現時点で核戦力を持たないイランも運搬手段のミサイルは豊富にあるため、秘密裡にパキスタンやロシアから入手した戦術核(既に持っている可能性大)をレバノンに供与して、中東核戦争(聖書に記載があるような奴)に発展する可能性が大なのです。米国がその時点で中東戦争に巻き込まれていると11月の選挙どころでは無くなり、イラン、ロシア、トルコなどを巻き込んだ世界戦争に発展するリスクが高いと言えます。イスラエルは理屈(グローバリズムは経済利益の有無)でなく宗教教義で動く国だから厄介なのです。

昨年11月から続くヒズボラとの交戦が本格化しており、核戦争へ発展する可能性がある。

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キューバ危機再び?

2024-06-13 13:15:46 | 政治

米国がロシア領土内への攻撃をウクライナに許可した事に応じて、ロシアはキューバに長距離ミサイル配備を促すという行動に出ています。ロシア領内に直接届く距離であるウクライナ国内に長距離ミサイルを欧米が配備することは、キューバにミサイル配備することと同じである以上、米国は文句を言えない立場にあります。またウクライナが勝手にミサイルを発射して良い、とするなら、キューバが米国に勝手にミサイルを発射することもロシアに責任はないと言い張れます。

 

I.  背景にあるキューバの経済危機

キューバは経済危機の状況にあり、昨年来民衆が各地でデモや暴動を起こしており、ペソがドルに対して大幅に下落していて、裏には米国の陰もあると疑われています(上記記事)。

キューバのミゲル・ディアス・カネル大統領は、2024年5月、クレムリン外の赤の広場で行われた毎年恒例の軍事パレードでプーチン大統領と会談、2022年の会談以来、両国はより緊密になっていました。

 

II.  1962年キューバ危機(WIONニュースのまとめ)

 

キューバ危機は、米国と当時のソ連との間の大きな対立であり、世界を核戦争の瀬戸際にまで追い込んだ。 危機は1962年に勃発し、1か月以上続いた。トルコへの米国のミサイル配備に対し、ソ連がキューバに弾道ミサイルを送って対抗したのがきっかけだった。1960年、ソ連の元首相ニキータ・フルシチョフは、米国がキューバへの中距離および中距離弾道ミサイルの設置を阻止しないと仮定して、ソ連の武器でキューバを防衛することを約束した。 

この事件は、世界が壊滅的な核攻撃を恐れるレベルにまでエスカレートした。そして、キューバから発射された場合、そのようなミサイルは数分以内に米国東部の大部分を襲う可能性があると報じられている。 

当時のジョン・F・ケネディ米大統領が介入するまで、主張と反論は続いた。大統領は選挙で忙しかったが、これらの施設の存在を知ると、安全保障顧問に相談した。米国が空爆を開始すべきだという提案さえ受けた。 

しかし、彼はソ連のミサイルのさらなる輸送を阻止するため、キューバに海軍による「検疫」または封鎖を課すことを決定した。彼は、ソ連の船舶が「攻撃用兵器および関連物資」をキューバに輸送しようとした場合、米軍がそれらを押収すると警告した。 

危機は最終的に回避され、ソ連の船舶は進路を変えて隔離区域から撤退し、その年の後半にフルシチョフはケネディに対し、キューバにすでに配備されているミサイルはソ連に返還され、ミサイル基地での作業は中止されると伝えた。 

一部の報道では、ケネディ大統領がトルコから核兵器搭載ミサイルを撤退させると秘密裏に約束し、米国がキューバに侵攻することは決してないと確約していたとさえ報じられている。 

(引用終了)

III.  ロシア海軍艦艇4隻、キューバ寄港 米を牽制か

CNN 報道から引用 2024.06.13 Thu posted at 07:06 JST

寄港した艦艇は計4隻。多くの見物人が見守る中、艦隊を率いるフリゲート艦「アドミラル・ゴルシコフ」に続き、核ミサイルを搭載できる原潜「カザン」、救助船、補給艦が入港した。ゴルシコフはロシア海軍の最新艦の一つ。

ロシア海軍の艦艇がキューバに立ち寄るのは初めてではないが、4隻もの同時寄港は過去最大規模。米当局者によると、カザンには核兵器は搭載されていないと米国はみている。

キューバは米フロリダ州から144キロほどしか離れておらず、今回の寄港は米国を牽制(けんせい)する狙いがあるとみられる。数週間前に米国は、供与した武器でウクライナがロシア領を攻撃することを認めた。

艦隊のキューバ寄港は5日間にわたる。ロシアの外交筋がCNNに明らかにしたところによると、13日から3日間にわたって毎日4時間、ゴルシコフはキューバ市民の見学を受け入れる。

軍事アナリストらは、ゴルシコフは長距離任務や対潜水艦戦を遂行でき、地対地や地対空のミサイルの搭載が可能とみている。

キューバ寄港に先立ち、ロシア国防省は11日、ゴルシコフなどが大西洋で軍事演習を行ったと発表した。ロシア国営タス通信の報道によると、ゴルシコフとカザンがコンピューターシミュレーションを用いて約600キロ離れた「敵艦」を高精度ミサイルで攻撃する訓練を行った。

米軍は偵察機や艦艇を派遣して一連の軍事演習と艦隊の航行を監視しているという。

公表されたフロリダ近海で演習をするロシア艦艇の動き

 

IV.  バイデン痴呆大統領退任まで米側のエスカレートを遅延させる目的か

 

11月の選挙ではバイデン再選はまず不可能で、トランプが復帰すればウクライナ戦争は終わりにできるとプーチン大統領は読んでいるでしょう。グローバリズム側としてはそれまでに戦争を拡大させてNATOを参戦させる、あわよくば限定核戦争になれば選挙は中止になるとして、現在必死に戦争拡大を画策しています。米国国民が「他人事」ではなく「自分の事」として核戦争の脅威を感じ、1960年代、フルシチョフと直接話せるケネディであったからこそ避けられた核戦争は痴呆大統領では対応不可能であると実感させる上でも今回の処置は有効かもしれません。

ロシアとしてはサンクトペテルブルク国際経済フォーラムで明らかにされた様に、第三次大戦よりもBRICS諸国の拡大と経済活性化を狙っておりペペ・エスコバル氏によれば以下の3つのメッセージが世界に発せられたと言います。要約すると、

今回のフォーラムには139カ国以上を代表する21,000人以上の人々が集まり、まさにグローバル・マジョリティの縮図として、多極的で多中心的な世界に向け議論が行われ、わずか3日間で780億ドル相当の取引が成立しました。そして世界へのメッセージとして

メッセージその1:

プーチン大統領は、フォーラムの全体会議でロシア経済について非常に詳細な1時間の演説を行った。

重要なポイントは、西側諸国が共同でロシアに対して全面的な経済戦争を開始したため、ロシアは経済に力点を移し、購買力平価(PPP)で世界第4位の経済大国としての地位を確立した。

ロシアは不当な制裁を回避するだけでなく、世界貿易を志向し、BRICSの拡大に結びつけた。

メッセージ2:

プーチン大統領は、BRICS諸国が西側諸国による圧力や制裁から独立して、独自の決済インフラの構築に取り組んでいると述べました。それは「ユニット」と呼ばれ、金(40%)とBRICS+通貨(60%)を基盤とする、政治的でない取引形式の国境を越えた支払い形式である。

新しい決済システムは、10月にカザンで開催されるBRICSサミットで議論される可能性が高く、現在のBRICS10か国と近い将来拡大されるBRICS+で採用される可能性が十分にある。

メッセージ3:

プーチン大統領を含め、誰もがBRICSが大幅に拡大することを強調した。サンクトペテルブルクでのBRICS関連のセッションの質は、世界の多数派が今、ユニークな歴史的転換点に直面していることを示した。サンクトペテルブルクでは、BRICSだけでなく上海協力機構(SCO)やユーラシア経済連合(EAEU)にも59カ国以上が加盟する予定であることが確認された。

 

日本のメディアでこれらを明確に報道しているものを見た事がありません。日本が取り残されてゆく感じがします。

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終局面を迎えるウクライナ情勢

2024-05-19 16:18:26 | 政治

ロシア軍は5月10日からウクライナ東部のハルキウ州から進軍を開始し、ウクライナ第二の都市ハルキウに迫りつつある情勢です。ロシア軍は東部戦線で弱体化したウクライナ軍を制圧しながらドネツク・ルガンスク共和国の境界に向け進軍中で、ウクライナ軍はドニエプル川西岸に最終的には撤退せざるを得ない状況と思われます。

ハリコフへの攻撃の目的はプーチン氏が述べるようにロシア固有の領土であるベルゴロドなどへのウクライナ軍の無用な攻撃を防ぐための緩衝地帯設置が目的であることは間違いありません。それは攻撃する部隊の規模がハリコフ完全制圧には現在の10倍は必要だからです。ウクライナ軍は軍事的に意味のないロシア内部の都市への散発的攻撃を繰り返してきましたが、民間人の死傷者が出るのみで、戦争に勝つための戦略としては、ほぼ何の効果も出ていません。同様に長距離攻撃が可能な1発100万ドル(1億円以上)するATACMSミサイルを米軍から供与されたにも関わらず、クリミアの空軍基地の攻撃に十数発費やし、攻撃自体は成功したものの東部やハルキウなどの戦況には何の影響もないという無駄な使い方をしています。戦争の終結に影響しない攻撃は成功しても軍事音痴の人達への宣伝効果以外何の意味もなさない事を西側のメディアは大声で非難せねばなりません。(攻撃成功!と騒げば、どうせ西側のバカな民衆は勝っていると勘違いするだろう!と愚弄している事を我々は理解していると知らせるべきです。)

東部戦線で攻勢を強め、新たにハルキウで戦線構築(NHKサイトから) ウクライナ軍は寄せ集めながらハルキウ周囲に新たに軍を展開(ロシアの読み通り)

 

I.  5月21日以降のゼレンスキー大統領

 

ゼレンスキー大統領のウクライナ憲法で認証された正式な大統領の期間は5月20日で終了します。今年の3月にゼレンスキー大統領は選挙を行わないと決め、引き続き戦時特例で自分が大統領を続けるつもりでいる様ですが、法律的には5月21日以降は「ただの人」になります。少なくとも戦争当事国のロシアは、5月21日以降ゼレンスキーを、ウクライナを代表する国家元首としては認めないでしょう。先日ロシアはゼレンスキー大統領を含むウクライナ首脳らを「戦争犯罪人」として指名手配しました。つまり5月21日以降は、ゼレンスキーは大統領ではなく「犯罪者」としてしか扱われない事を意味します。戦争終結の交渉もロシアが認める相手と行う事になります。ウクライナ敗戦後に米国などに亡命しても、犯罪者としてロシアによる「暗殺」の対象になるでしょう。米国も単なるパペットでしかないゼレンスキーに亡命は認めても、予算を割いて終身警護を付ける程の重要人物でないことは明白です。

任期切れを報道されるゼレンスキー氏

 

II.  ブリンケン国務長官、突然ウクライナ訪問の意味

 

5月14日に米国ブリンケン国務長官は予告なく(ロシアには伝えたと思う)ウクライナを訪問し、わざわざ地下クラブでニール・ヤングの反戦歌(ロッキンインザフリーワールド89年一時トランプ氏のテーマにもなったがニールヤングが止めろと言った)を歌い、公にはゼレンスキー氏らと対面して「米国はこれからもウクライナに武器支援を続ける」と映画の様な作りこんだ画面で宣言しました。5月15日、ゼレンスキー氏はスペインなどへの外遊予定を全てキャンセルすることを発表し、ハルキウ方面に視察に赴いたと報じられています。表面的にその通りに受けても良いように思いますが、もしかすると「既に結果が見えている戦争の後始末にかかったかも知れない」というのは勘ぐりすぎでしょうか。

わざわざキエフまで行ってクラブで反戦歌を歌う意味は? 「こっそり逃げ出しなさい、後は何とかするから」と言いに行ったのでは?

つまり任期が切れて法的に只の人になった「ゼレンスキーは密かに亡命」英国大使に予定されながら赴任延期になっている「ザルジニー将軍をウクライナ臨時大統領」にして終戦交渉に当たらせる。ネオコン強硬派のビクトリア・ヌーランドを解任した意味も敗戦処理を見越しての事と思いますが、どこかで損切りしてウクライナを終わらせないとガザでも泥沼化して民主党の地盤沈下が止まらない現在、11月の大統領選がどうにもならない所まで来ていると普通考えるのではないでしょうか。

 

III.  ロシアも体制を変えて戦後を見据え始めた?

 

5月に入って、プーチン大統領は大幅な内閣改造を行い、長年国防省を勤めたショイグ氏を解任してアンドレイ・ベロウソフという経済学者を後任に指定しました。表向きショイグ氏の副官らの汚職問題がからむ粛清とも見られましたが、5月16日に中国を訪問する際、プーチン大統領は新任のベロウソフ氏を始めとする新任の閣僚たちや経済界の中心人物を大勢引き連れて訪中しました。これは新聞で報じられている通り、終戦後を見据えての経済対策を習近平と話しに行ったとみるのが順当でしょう。ウクライナ情勢は終局を迎えているのではないでしょうか。

ロシア新内閣は経済を中心に考えている。訪中でも戦後経済対策が中心課題に?

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「新型インフルエンザ等対策政府行動計画」(案)に対する意見募集(パブリック・コメント)

2024-05-01 12:14:42 | 政治

2024年4月24日付で、内閣官房(内閣官房内閣感染症危機管理統括庁)は2020年初頭からの新型コロナ感染症対策についての混乱を体系化して整理した内容の「新型インフルエンザ等対策政府行動計画(案)」についてのパブコメを募集しています。対策主体が国民の健康や衛生に責任のある厚労省でないことが「いかがなものか」と思いますが、厚労省に命令を出す上の組織との認識でいるようで、WHOが画策する「各国の自主的な主権を棄てて、WHO世界政府の決定に一方的に従わせるパンデミック条約」締結を前提にした内容とも思われます。WHOは5月をパンデミック条約締結の期限と決めており、パブコメの募集期間も4月24日から5月7日までと短いものです。

テドロス氏は2024年5月までにパンデミック条約を結べとWEF2024で名言した。

個々の内容は、危惧した国民への衛生上の強制やワクチンの義務化といったものは見当たらず、それなりに推敲されたものと思われ官僚言葉でいう所の「概ね良好」と思われましたが、全体として今回の政府対策の最も大きな欠点が十分見直されていないと思われたので、その点を指摘してrakitarouは提出しましたので以下に記します。

情報収集は国内外の機関や専門家とネットワークと言っているが、責任をもって決定するのは? ワクチンについては今回の反省など行わず、始めに遺伝子ワクチンありきになってないか?(計画案の説明図から一部抜粋)

 

「新型インフルエンザ等対策政府行動計画」(案)に対する意見

 

この対策案は、2020年初頭からの新型コロナ感染症対策についての混乱を体系化して整理した内容であり、記載された個々の中身については問題ない様に思います。しかし未知の感染症(X)に国として対応するに当たっては、今回の新型コロナ感染症が「毒性が弱く」、「感染力が強い」上「次々と変異を繰り返して流行」したことを鑑みると、不完全に思われる所が多々あります。

 

1)  身体で言うと主に遠心性神経と筋肉だけ記載されている

 

未知の感染症へ身体(国・社会)が対応する上で最も重要なのは、いかに対応するかを決定する中枢(脳)です。この行動計画は、遠心性神経(efferent nerve)と筋肉についてまとめられていますが、最も重要な「脳の規定」が曖昧です。脳にあたる部分をAIや他の機関まして自分の力が及ばない外国に求めては絶対に不可です。

 この対策案には情報収集について記載はありますが、具体的な求心性神経(afferent nerve)にあたる現場からの情報集約の機構が不明です。「抹消組織が損傷している」という情報が的確に中枢に上がらなければ、多臓器不全を起こして個体(国・社会)は死に至ります。

時々刻々変化する感染症に対しては、中枢は末梢からの情報を的確に集約して、PDCAサイクルを柔軟に回して対応を変える必要があります。それについて記載が不可欠と考えます。

行動計画は上意下達の一方通行で、時々刻々変化する感染症状況に対応し、頭脳にあたる政府中枢?のPDCAサイクルによる柔軟な対応がみられない様にみえる。

 

2)  細菌・ウイルスの傾向は大別できる

 

 細菌・ウイルスなどの感染症はどのような物(感染症 X)でも

(1)強毒性で感染力は弱い(強力な水際・衛生対策が重要)

(2)強毒性で感染力も強い(公衆衛生対策と個人への感染予防として中和抗体を高めるワクチンが重要)

(3)弱毒性で感染力が強い(今回のコロナ、一般的な衛生対策と集団免疫を得るための細胞性免疫が重要)

(4)弱毒性で感染力も弱い(対応不要)

に分かれます。行動計画案は全てを一緒にするのでなく、おおまかにこの4つを分けた上でどこに力点を置くかを対策として明記しないと社会が混乱します。

 

以上。

追記 2024年5月13日

WHOが今期年次総会で成立を画策する「新パンデミック条約」は難航している様です。非常に大事な情報ですが、日本のニュースやテレビは延々と特殊な殺人事件について無駄な情報を流し、国民を煙に巻き続けています。

パンデミック協定の難航を伝えるZeitの記事

米国では22の州でパンデミック条約締結に反対する声明が可決され、英国でも条約署名に拒否が決まったとロイターが報じている

日本では国会でどのような議論が行われたのか、補選で快勝した立民はどのように国民の負託に答えたのか。米英にはあるのに、日本人には既に自らの社会や国家の自立を護るという愛国心はないのでしょうか。

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ゴルゴ13案件になったネタニヤフ暗殺

2024-04-15 09:57:46 | 政治

さいとうたかお氏の長編コミック「ゴルゴ13」は精巧な長距離射撃のみでなく、不可能と思われる条件で暗殺を遂行することでも評価を受けています。政治的な理由から、例えば「時間を指定して事故にみせかける」とか、「自然死に見せかける」といった暗殺を高額な報酬で政府組織から依頼されることもあります。

国際情勢理解の必読書「ゴルゴ13」

 

I.  紛争拡大に向かう中東情勢

 

2024年4月1日のシリア、ダマスカスにおけるイスラエルによる違法なイラン領事館爆撃で、イラン高官や軍人らが死亡した事件を受けて、4月14日イラン革命防衛隊はイスラエルに向けてイラン国内から100機以上の無人航空機爆弾、中距離ミサイル、極超音速ミサイルなど計350発以上を発射し、攻撃しました。攻撃目標は領事館爆撃の発射基地となった被占領パレスチナ南部のラモン空軍基地、ネバティム空軍基地、テルアビブの空軍司令部、ゴラン高原北部のイスラエル諜報基地と言われており、低速の無人航空機の到着に合わせて、より高速の巡航ミサイルや大気圏外から攻撃する弾道ミサイルを同時に目標に到着するよう発射したとされます。

イスラエルは西側が持つ最新のテクノロジーで対抗したが、左図の様に多数のミサイルは「地上に到達した」

 

この攻撃に対して、イスラエル側は現在西側が持つ最高のミサイル防衛システムで対抗しました。つまり、デビッド・スリング、アロー3、パトリオット、アイアン・ドームの重層防御で構成されたイスラエル自身だけでなく、現在地中海沿岸からSM-3ミサイルを発射している米国のアーレイ・バーク級駆逐艦も参画したと言われます。結果的にはかなりのドローンやミサイルを撃墜したと言われますが、100%ではなく、特に弾道ミサイルの撃墜はほぼ不可能だったようです(大気圏外で破壊しただろうと言われているビデオは単にミサイルの多段ロケットの切り離しが見えているだけで、撃墜したミサイルとされている画像も中段のロケットの破片に過ぎません)。つまりハマスなどが発射する低速のロケット弾はアイアンドームなどで撃墜可能でもイランの持つミサイル群には歯が立たないという結果でした。ウクライナにおいてもロシアの発射するミサイルに対して現在はほぼノーガードの状態で重要インフラが次々に破壊されていますが、準備万端のイスラエルにおいても本気で攻撃してくる相手には現在の西側ミサイル防衛システムは歯が立たないという結果が出た事は、米欧にとって非常にショックだったと思われ、今後軍事関連分野で多くの議論が巻き起こると思います。

ペペ・エスコバル氏の今回のイラン反撃についてのまとめ(引用)

これは非常に計算されたショーでした。イスラエルは、アメリカの諜報機関からの情報で、戦闘機や要員を避難させるのに十分な時間を得ていました。その後防衛戦略を調整する多数のアメリカ軍レーダーが当然の如くイスラエル防衛に参画しました。

185機のシャヘド-136無人偵察機の群れの大部分を、艦載防空から戦闘機まで、あらゆるものを使って粉砕したのは、アメリカの火力だった。残りはヨルダン上空で、小さな王様の軍隊によって撃墜され、その後、何十機ものイスラエルのジェット機によってこれら先発隊のドローンは撃された。

イスラエルの防衛は、自爆ドローンと弾道ミサイルのコンボによって事実上飽和状態にあった。弾道ミサイルの面では、イスラエルの防空網の密集した迷路を突破したものもあり、イスラエルは公式にイランの弾道弾9発が目標に達したと認めたが、興味深いことに、その全てが極めて重要な軍事目標に命中していた。

今回の反撃をショーとして眺めると、破格の予算がかかったショーだと言えます。イスラエルにとっては、アメリカ、イギリス、イスラエルのジェット機の価格は考慮しなくても、多層的な迎撃ミサイルシステムだけで、少なくとも13億5000万ドルを消費させたと、イスラエル当局者は暴露しました。イランの軍事筋は、無人機とミサイルの一斉射撃の費用を、イスラエル側支出の2.5%にあたるわずか3500万ドルと計算している。

(引用終了)

地中海に展開する米アーレイ・バーク級の最新型ミサイル駆逐艦 6か月経っても虐殺以外目標を一つも達していないイスラエルは「完敗」という声も内部で出ている。

これ以上の紛争拡大を米国は望んでいない

 

II.  米国防省のさる高官からゴルゴ13への依頼

 

高官「さすがに時間通りですね。」

ゴルゴ「私は一時間以上前から来ている。そのまま後ろを振り向かずに話してもらおう。」

高官「最近のイスラエルの情勢についてはよくご存じかと思います。我が国としても今後の成り行きに大変憂慮しています。」「つまり我が国としてはこれ以上の拡大は望んでいないのです。」

ゴルゴ「取り除く対象はビビ(ネタニヤフ)ということか?」

高官「その通りです。」

ゴルゴ「お前たちの組織(CIAとか)を使えばさほど難しい事ではないだろう。」

高官「確かに現在紛争拡大の中心になっているのはネタニヤフ首相ですが、・・」

ゴルゴ「奴一人を始末しても、国民の70%が戦争を支持し、アメリカ国内にも紛争拡大を望む勢力があるということか。」

高官「ご存じの様に強力な資金力のあるAIPAC(イスラエルロビー)にバイデン政権の民主党のみならず、共和党も逆らうことができません。しかも国務省を中心とするグローバリズム陣営は米国の国益よりも現在の資本主義支配体制の継続のために第三次大戦への拡大をウクライナ戦争以来目標として、わが米軍を戦地に送ることを画策し続けています。」

ゴルゴ「国防省としては、従えない。」

高官「我々の分析では、現在の米軍の戦力では通常戦力でウクライナ開戦時より130%強力になり、実戦を積んだロシア軍にはかないません。しかも海軍の戦力は紅海のフーシ派が持つ無人システムを無力化できませんでした。そしてイスラエルではイランとミサイル戦になっても基地を守り切れないことが明確になりました。後は核ミサイルを打ち合うしかなく、そんな戦争に国益はありませんが、わが軍の無力を政権側が理解できていない。正しい情報が伝わらないのです。」

ゴルゴ「では俺にどうしろというのだ?」

高官「ネタニヤフを排除していただきたいのですが、政権内部の犯行、つまりリクードの強硬派が内部分裂をした形でこの紛争を終わらせて欲しいのです。ここにネタニヤフの行動予定があります。クネセト(イスラエル国会)を離れて地方部隊に行くときがチャンスかと思われます。困難な任務であることは承知ですが、これはあなたにしか頼めない。どうか、お引き受けいただきたい。」

ゴルゴ「承知した。やってみよう。」

高官「おおっ!お引き受けいただけるか、これで米国は助かる。報酬はただちにいつもの口座に。」

2-3年後には劇画化されているかも?

 

追記:2024年4月19日

米国時間18日イスラエルはイラン中部イスファハンにミサイル攻撃?による報復を行った模様です。バイデン政権には事前通告があったらしいという報道もあり、今後の展開、紛争拡大が危惧されます。米国はイランへの報復をあきらめる代わりにパレスチナ・ラファへの攻撃を容認したのではという疑惑が記者会見でも問題になっていましたが、イスラエルに押し切られた形でしょうか。

イスファハン近郊にはイランの核施設(ナタンツ)があると言われる。

金や原油価格は反応して高騰したが、落ち着きを取り戻したという報道も。

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トランピズム・国家資本主義・多極化

2024-03-07 11:43:44 | 政治

次期米国大統領の共和党候補はトランプ氏に決定し、次期大統領自体もほぼトランプ氏に決まった情勢ですが、「トランプ主義」を嫌うメディアはトランピズムに対するリスクを具体的に説明せず(できず)「独裁主義」「同盟軽視」「陰謀論」などという曖昧な恐怖感を煽る感情表現でしか示しません。小学生並みの稚拙さと言えます。それは世界の多極化によって命運を絶たれる「グローバリスト陣営」が多極化を決定づけるトランピズムを死ぬほど怖れているからと思います。そこでトランピズムの経済外交政策について幼稚で無能なメディアに替わってrakitarouなりに説明したいと思います。

朝日新聞の公式見解では、多極化世界は「ウソと陰謀論だ」らしい、日本人はこれを信ずるほど阿呆ばかりなのか?

 

I.  国家資本主義による多極化推進

 

2011年ユーラシアグループのイアン・ブレマーは、中国やロシアなどの後発国が国家資本主義政策をとることによって勢力・国力拡大を遂げているという分析を示しました。この「国家資本主義」の概念は1800年代の共産主義思想勃興の時代からあり、レーニンやヒルファディングといった思想家らが取り上げていたのですが、現大阪商科大学の坂田幹男教授がかつてから指摘していた様に、国家資本主義を古い概念でとらえていると新しい潮流としての国家資本主義の在り方を正しく把握できないことになります。スタンフォード大学のフランシス・フクヤマ氏経済産業研究所の分析の様に、国家資本主義による国家が設計図を描く「国家単位での経済発展」は、2000年代初頭の10年間において、米国(欧米)は資本と技術供給、中国は労働供給、中東やロシアは資源供給という国別の資本主義内分業を行っていた時代から夫々の国内で資本・技術・労働・資源の全てを成り立たせる「多極化」を促したという分析こそが正しいと言えます。

外務省系列の雑誌に紹介されたふくやま氏の論説

 

結果的に資本と技術のみで資本主義の上前を吸収し「良い所どり」を享受していた欧米は「一極資本主義(グロ-バリズム)」の態勢を維持するために多極主義陣営(大きくはグローバルサウスやBRICS)と対峙せざるをえなくなります。

これに対してトランプは米国内で資源(オイル)、工業生産、労働供給を復活させて米国を多極化の一極に据え直すことを第一目標にしてきました。この「米国も多極化」というトランピズムの本体をグローバル陣営はどうしても許せず、「米国第一主義(真の意味は米国を多極化の一つに育てる事)」「同盟軽視(グローバル的国家別役割分担の否定という意味)」と言い換えて批判しているのです。

 

II.  「ポスト・アメリカ」と言わず、「世界の分断」などと言い出したメディア

 

多極世界についての詳しい解説は2021年のアレクサンドル・デューギンの論文に詳しいと思いますが、米国一極主義の終焉については2008年のリーマンショック以降、2010年ころには頻繁に語られるようになっていました。しかし金融危機を無限の量的緩和(QE)などで「資本を無から生じさせる」ことで乗り切ると、巨大資本(ドルで)を独占する資産家達はドルを中心とするグローバリズムが終焉することは、莫大な利権が消失することと同じになり、多極化(特に貨幣の)は受け入れられなくなってきたと思われます。しかも刷り散らかした莫大なドル紙幣は、結果的に一部の巨大資本化達の所に収斂してしまい、ドルという富の集中をかえっておこしてしまいました。結果としてグロ-バリズム陣営が占有する大手メディアが「多極化を議論」することもなくなり、「非理論的感情的なナラティブ報道ばかり」になってしまったと言えるでしょう。

デューギンの著作「多極化世界の理論」グローバリズムとは対立する運命と指摘 増えた貨幣は結局行き渡らずに収斂するというOxfamの報告

 

III.  資本帝国主義が見えない人達

 

中国やロシアが18世紀型の帝国主義で軍事力による領土拡張を図っているから日本も憲法改正をして正規軍を強化する必要がある、と説く右翼系論客が未だに多くいます。ウクライナ戦争以降は、日本共産党でさえ「即時停戦」(戦争反対)を言わなくなりました。つまり「ウクライナは戦争を続けよ」というスタンスであり、「日本の左翼は反戦思想を捨てた」ということです。

中国が海洋利権獲得のために軍備増強をし、南沙諸島などに勝手に侵略をして周辺国と紛争をおこしていることは事実ですし、台湾を名実とも中国統一化を目標に据えている事も事実でしょう。しかし中国は常に内側から壊れる歴史を繰り返してきたので、脆弱な共産党政権が列島線構想などで日本をテリトリーに入れている事に震え上がる必要はないと思います。私も元自衛官なので必要最小限の軍備は必要と考えますが、大国の鉄砲玉として隣国と戦争をさせられるウクライナのような為体は未来の日本人の子孫のためにも示してはいけないと考えます。今現在憲法改正や軍備増強を唱える人達は「米英の鉄砲玉になって中露と戦争する阿呆にはならない」という覚悟はあるのでしょうか。

日本の土地や株が外国資本に買われて、日本人の労働によって得た国富が資本帝国主義によって外国巨大資本に吸い上げられている現状について憂いている「愛国を自称する右翼」はいるのでしょうか。統一教会とずぶずぶの自民党議員、日米委員会の決定に異を唱えない政権、グローバリズム世界経済フォーラムやWHO,IMFの決定を全て受け入れ、ワクチンを打ち、温暖化詐欺を信じ、異論を簡単に「陰謀論」呼ばわりするレベルの人達は国防や愛国を語る資格はないと私は考えています。

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スウェーデンのNATO加盟に思う

2024-03-02 18:42:25 | 政治

2024年2月27日スウェーデンは1843年以来の中立政策を棄ててNATOに加盟しました。フィンランドは昨年31か国目のNATO加盟国になったのでスウェーデンが32か国目になります。元々ロシアに挟まれた北欧国家であったスウェーデンはイギリスとロシアとのバランス外交として中立主義を選択し、第二次大戦では枢軸よりではありましたが、独自の兵器開発にも従事しながら戦争に加担することなくうまく振舞ってきたと言えます。

ここで国民投票も行わず、EUに加盟していて、EUがウクライナを支援しているという成り行きのみであの第二次大戦中を含めて180年堅持してきた中立主義を廃棄する愚かさは「あはれ」なほど愚かな事です。

フィンランドに続いてスウェーデンNATO正式加盟を伝えるBBCの記事 銃身は伸ばされたということ

 

I.  プーチン拡張主義(ロシア帝国主義)神話の馬鹿馬鹿しさ

 

21世紀になってから、普通に新聞などのメディアで知識をえていたヒトはプーチン大統領が就任初期以来、資源と工業を中心としたロシア経済の立て直しと西側と通じたオリガルヒの排除を行ってきた事は理解できるでしょう。そしてグルジア、ウクライナなどのロシアと国境を接する国のNATO加盟に対して警鐘を鳴らしてきた事も明らかです。しかし19世紀型の領土拡張による帝国主義を進める意図は全くなかったと言っても良いと思います。それは陸軍の編成を見ても明らかですが、今回のウクライナ戦争初期、Special Military Operationと称していた時点では、ロシアは平時の兵力と装備で作戦を行っていました。2022年の夏以降は動員令をかけて軍内の編成、経済体制も戦時体制に移行しました。「ロシアはウクライナと戦争しなければ日本に攻め入る予定であった」などと言う根も葉もない噂を広めて日本をNATOに加えようとする勢力がいるようですが、軍事音痴すぎるフェイクであり、信ずるほうも軍事音痴過ぎると言えるでしょう。19世紀型の帝国主義で資本主義的に儲けが出る時代ではない位少し考えればわかります。「土地がどの国に属するか」ではなく、「資本を持つ者」が儲ける事ができるのが資本主義なのですから。

 

II.  今までのNATO拡大とプーチンの対応

 

プーチン拡張主義が作り話である客観的証拠として、今までのNATO拡大とプーチンの対応について、コロンビア大学のジェフリー・サックス教授がまとめた年表があるので備忘録として以下に記します(赤字はrakitarou)。

 

1990年1月31日。ドイツのハンス・ディートリッヒ=ゲンシャー外相は、 ドイツ の再統一とソ連のワルシャワ条約機構の軍事同盟の解消を背景に、NATOは「東方への領土の拡大」を排除するとソ連のミハイル・ゴルバチョフ大統領に約束した。

1990 年 2 月 9 日。米国国務長官ジェームズ・ベイカー 3 世は 、ソ連のミハイル・ゴルバチョフ大統領と「NATO の拡大は容認できない」という意見に 同意した。

1990年6月29日~7月2日。NATO事務総長マンフレッド・ヴェルナー ロシア高官代表団 に対し、「NATO理事会と彼(ヴェルナー)はNATOの拡大に反対している」と語った。

1990 年 7 月 1 日。ウクライナ議会は 国家主権宣言を採択し、その中で「ウクライナ・ソビエト社会主義共和国は、軍事ブロックに参加せず、非核の 3 つの原則を遵守する永世中立国になる意図を厳粛に宣言する。核兵器を製造せず、購入しないこと。」

1991 年 8 月 24 日。ウクライナは、 中立の誓約を含む 1990 年の国家主権宣言に基づいて   独立を宣言。

1992年半ば。ブッシュ政権の政策立案者らは、 最近ソビエト連邦とロシア連邦に対して行った約束に反して、NATOを拡大するという秘密 の内部合意に達した。

 1997 年 7 月 8 日。マドリッド NATO サミットで、ポーランド、ハンガリー、チェコ共和国が NATO 加盟交渉を開始するよう招待されました。

1997年9月から10月。『フォーリン・アフェアーズ』(1997年9月・10月)の中で、元米国国家安全保障問題担当補佐官ズビグネフ・ブレジンスキーは、 ウクライナの交渉が暫定的に2005年から2010年の間に開始されるというNATO拡大のスケジュールを詳しく 述べている。

1999年3月24日~6月10日。NATOがセルビアを爆撃。ロシアはNATO爆撃を「国連憲章の重大な違反」と呼んでいる。

2000 年 3 月 ウクライナのクチマ大統領、 「この問題は極めて複雑であり、多くの角度から関係しているため、今日、ウクライナが NATO に加盟することに疑問の余地はない」と 宣言。

2002年6月13日。米国は弾道兵器禁止条約から一方的に離脱したが、ロシア下院国防委員会副委員長はこの行動を「歴史的規模の極めて否定的な出来事」と 特徴づけた 。

2004 年 11 月から 12 月にかけて、ウクライナで「オレンジ革命」が起こります。この出来事を西側諸国は民主主義革命と特徴付け、ロシア政府は米国の公然および秘密裏の支援による 西側が仕組んだ 権力掌握と特徴付けています。   

2007 年 2 月 10 日。プーチン大統領は、 ミュンヘン安全保障会議での演説で、NATO 拡大を支援して一極世界を築こうとする米国の試みを強く批判し、次のように宣言した 。「相互信頼のレベル。そして私たちには、この拡張は誰に対して意図されたものなのかと問う権利があります。そして、ワルシャワ条約機構の解散後、西側パートナーが行った保証はどうなったのでしょうか?」

2008年2月18日。ロシアの激しい反対にもかかわらず、米国が コソボの独立を承認 。ロシア政府は 、コソボの独立は「セルビア共和国の主権、国連憲章、国連安保理決議第1244号、ヘルシンキ最終法の原則、コソボの憲法枠組みおよびハイレベルのコンタクトグループ協定」に違反していると宣言している 。

2008 年 8 月 20 日。米国は ポーランドに弾道ミサイル防衛 (BMD) システムを配備し、その後ルーマニアも配備すると 発表。ロシアは BMDシステムに対して 断固たる反対を表明している。

2014年1月28日。ビクトリア・ヌーランド国務次官補とジェフリー・パイアット米国大使は、2月7日に傍受され YouTubeに投稿された通話でウクライナの政権交代を計画 しており、その中でヌーランドは「(副大統領)バイデンは協力する用意がある」と述べている。

2014 年 2 月 21 日。ウクライナ、ポーランド、フランス、ドイツの政府は、 ウクライナの政治危機の解決に関する合意に達し、年内の再選挙を呼びかけました。極右右派セクターや他の武装勢力は代わりにヤヌコーヴィチ氏の即時辞任を要求し、政府庁舎を占拠した。ヤヌコーヴィチは逃亡する。議会は弾劾手続きを経ずに直ちに大統領の権限を剥奪する。   

2014 年 2 月 22 日。米国は 政権交代を直ちに承認

2014年3月16日。ロシアはクリミアで住民投票を実施し、ロシア政府によると、ロシア統治を支持する票が多数を占める結果となった。 3月21日、ロシア下院はクリミアをロシア連邦に加盟させることを可決した。ロシア政府は これをコソボの住民投票に例えている。  米国はクリミア住民投票を不当なものとして拒否している。

2015 年 2 月 12 日。ミンスク II 協定の署名。この協定は、 2015 年 2 月 17 日の 国連安全保障理事会決議 2202によって全会一致で支持されています。アンゲラ・メルケル元首相は後に 、ミンスク II 協定がウクライナに軍事強化の時間を与えるために設計されたものであることを 認めました。この協定はウクライナによって履行されず、ヴォロディミル・ゼレンスキー大統領は 協定を履行するつもりがないことを 認めた。

2019年2月1日。米国は中核戦力(INF)全廃条約から一方的に離脱。ロシアはINF撤退を安全保障上のリスクを煽る「破壊的」行為として厳しく批判している。

2021年6月14日 ブリュッセルで開催される2021年のNATO首脳会議で、NATOはウクライナを拡大し包摂するというNATOの意図 を再確認し 、「我々は、ウクライナが同盟の一員となるという2008年のブカレスト首脳会議での決定を繰り返し表明する」と述べた。

2021年9月1日。米国は、「米国・ウクライナ戦略的パートナーシップに関する共同声明」の中で、ウクライナのNATO願望への支持を改めて表明した。 

2021年12月17日。プーチン大統領は、NATOの非拡大と中距離および短距離ミサイルの配備の制限に基づく「安全保障に関するアメリカ合衆国とロシア連邦との間の条約」草案を提出。

2022年1月26日。米国はロシアに対し、米国とNATOはNATO拡大問題をめぐってロシアと交渉しないと正式に返答し、ウクライナ戦争の拡大を避けるために交渉による道への扉を閉めた。米国は NATOの政策を援用し 、「同盟への加盟国を招待するいかなる決定も、全同盟国の合意に基づいて北大西洋評議会によって下される。第三国はそのような審議において発言権を持たない。」

2022 年 2 月 24 日。プーチン大統領は 国民に向けた演説の中で次のように宣言します。「過去 30 年にわたり、我々は平等かつ不可分な安全保障の原則に関して NATO 主要諸国との合意に達するために辛抱強く努力してきたのは事実です」ヨーロッパで。私たちの提案に対して、私たちは常に冷笑的な欺瞞や嘘、あるいは圧力や脅迫の試みに直面しましたが、一方で北大西洋同盟は私たちの抗議や懸念にもかかわらず拡大を続けました。その軍事機械は動いており、先ほども言ったように、まさに国境に近づいています。」

 

NATOの勢力範囲を一貫して拡大してきたのは西側であって、プーチンが領土拡張主義を画策してきたわけではない事は明らかと思います。

―――そしてウクライナ戦争につながります。―――

 

III.  Nation Statesの両義性

 

Nation Statesという英語には「国民国家」「民族国家」という二つの意味があることは以前説明しました。Nation Statesの概念はウエストファリア条約に遡って、封建制、民主制に関わらず、領土と支配権が確立された土地に住む者を国民として全体を国家と定義づけてゆく体制にあります(国民国家)。そしてフランス革命によって住民に主権の概念が生まれると、同じ生活習慣や言語を共にする人々の集団を「民族」として一体感を持って考える概念が芽生え、第一次大戦後の民族自決主義の高まりによって一民族一国家を望む風潮が高まったと言えます(民族国家)。ウクライナが国境を守る事は国民国家として正義ですが、ドンバス・ルガンスクのロシア語圏住民が自治を求めて独立し、ロシアへの帰属を国民投票で決めたのなら独立勢力とロシアに正義があります。米国は2008年にコソボの独立を認めたのですから、ウクライナ東部のロシア語圏の独立も認めないと矛盾してしまいます。ミンスク合意というのは国民国家、民族国家の両義性を両立させた優れた解決法だったのですから協定の遵守がウクライナ国民にとって最大の利益だったことは間違いありません。

 

IV.  EUという資本主義による政治支配体制に国家の命運を委ねて後悔しないか

 

EUは一時独自の軍備をフランス主導で検討したことがありましたが、現在は非軍事的な経済中心の連合国型合同政治組織で、米国はEUに加盟していません。また2020年1月に英国がEUから正式に離脱しましたが、コロナ騒動が始まり物流やヒトの移動も制限されたので、ブレグジットの冷静な分析はなされていないようにも思います。2022年のウクライナ戦争開始からは、EUも戦争当事国の様にウクライナへの武器支援などに積極的にコミットしており、EU自体がNATO加盟国の様な印象を持ちます。

マクロン大統領は参戦に前のめり(派遣していた特殊部隊がロシアのミサイルでやられたから?)

 

欧州のNATO加盟各国は、ウクライナ戦争にはやや腰が引けた対応であり、市民の選挙が関係ないEU政府の閣僚の方が戦争支援に積極的と感じます。要はウクライナ戦争は欧州内国家間の争いが趣旨ではなく、経済的欧米支配をロシアにも広げる、露中封じ込めを趣旨とした代理戦争であることが明らかなのだと思います。

他のNATO諸国は自国の軍は派遣しないと一斉に反論

EUを脱退した英国はむしろ主導してウクライナ戦争に関わっているよね、と暴露され。

核のボタンを押すのを拒否して首相を頸になった?トラス元首相は政治へのDS関与を暴露

 

そのような状況下で、スウェーデンが180年堅持してきた軍事的中立主義を易々と放棄してNATOに加盟することが国民の総意なのか、きわめて疑問であると思います。ちなみにフィンランド、スウェーデンは1995年にすでにEUには加盟して、経済的な恩恵は享受しています。

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勝共連合(統一教会)はなぜ利用され、潰されたか

2024-02-22 13:15:13 | 政治

I.  勝共連合(統一教会)はなぜ利用されたか

勝共連合(International Federation for Victory over Communism)はWikipediaによると世界基督教統一神霊協会を母体とする反共主義の政治団体で、1968年KCIAによって文鮮明を教祖として韓国で設立された、とあります。日本でも岸信介、笹川良一、児玉嘉誉士夫らが発起人となり同名の団体が設立されました。日本の勝共連合から多額の支援が韓国の団体にもたらされたと記載されています。

私も学生であった時代(70年代後半)には、他校の大学祭などに行くと「原理研」などと称する薄暗い部屋があって、何やら映画らしきものが流れているのを良く見かけました。よく見ると「勝共連合」と書かれていたのでもう近寄らず退散してましたが、当時東西冷戦のさなかで、日本ではインテリ層に左翼的思想が強く、若者は新左翼に走る時代であったので、米CIAとしては日本の「復古的右翼思想」を推奨して憲法を改正させ、米国の命令通りに中露の共産主義陣営と戦争をする「鉄砲玉国家」を育てたかったのだと思います。丁度現在の「ウクライナ」に相当します。

ソ連崩壊以降は、自民党を中心とした代議士たちの選挙協力や議員秘書の供給源として統一教会が見えないところで存在感を維持してきたと言えるでしょう。それは自民党をコントロールすることが、日本をコントロールする事と同一であることから、米国の支配層がCIAを通じて世界をコントロールする一環、システムの一部として有用であったからと考えられます。

統一教会から推薦をもらうための政策確認書?とされるもの 今のポリコレには合わない部分が多い。

 

II.  安倍晋三殺害と潮流の変化

 

2022年7月8日、奈良市大和西大寺駅で選挙応援演説中の安倍晋三元首相が、統一教会に恨みを抱く山上徹也氏に手製の銃で襲撃されて死亡したとされる事件以降、タブーとされていた統一教会問題が必要以上にメディアに取り上げられ、日本国政府は2023年10月13日に世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の解散命令を東京地裁に請求するに至ります、統一教会本体が分裂の状態にあることもあるでしょうが、現在の巨大資本グローバリズム勢力が目指す目的が、統一教会が掲げる保守的復古主義とは反するものであり、擁護する必要がなくなった事が「潮流変化」の最も大きい理由と思われます。

日経新聞による解散請求に至る流れの図解

 

III.  今、巨大資本グローバル陣営が求めるもの

 

1) SDGsによる新たな需要の創出

   実はあまりうまく進んでいない。太陽電池や希土類は中国が握る。トラックの電動化は無理、雪国では電動自動車は弱い(充電方法がない)。水素や常温核融合は現状技術的に無理。温暖化自体が怪しくなり、今後は余り推進されなくなるかも。

 

2) 地域分断による戦争経済の活性化

   ウクライナ、ガザ、中東で実行中。できればアジア(台湾)でも起こしたい。死ぬのが奴ら(現状スラブ人、アラブ人。中国人や日本人ならなお良い)で、金を払うのが巨大資本でなく諸国民の税金(国債という名の借金)なら全くOK. 無尽蔵に税金を投入。バカな国民は兵器産業が儲かる,株価も上がるから喜ぶ。

 

3) 健康人に医療を強要して需要創出

   コロナ騒ぎよ、もう一度。病人のみに行う医療では需要が限られていて儲けは少ない。パンデミックで恐怖を煽り、全人類が打つワクチンで大儲け。次はもう少し強力な感染症で、強力なワクチン(自己増殖するレプリコンワクチン)を全人類に打たせたい。

2024年5月までに主権を捨ててWHOに従うパンデミック条約を締結しなさい、と世界経済フォーラムで宣言するテドロス氏。

 

そのためには巨大資本グローバル陣営は、大手メディアを経済支配し、各国政治家、官僚(軍人)、財界人の意思統一を図り、異論を封じる必要があるのです。

欧州リーダーの皆さん、先祖はナチス幹部だった方が多いようで。

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COINと非対称戦

2024-02-11 10:42:44 | 政治

20世紀における二つの大戦は双方が国力の全てをかけて戦う総力戦であり、連合国、枢軸国ともに当初は甲乙つけ難い対称的な力を持つ戦争でした。一方で21世紀に入ってから、特に2001年911以降の「テロとの戦い」は一方が圧倒的な力を持ち、もう一方は小国であったり、国家でもない民兵組織やテロ組織であるという非対称な戦争になっているのが特徴です。

 

I.  強い方が勝つとは限らない非対称戦

 

戦争が外交の一手段であることは非対称戦においても変わりません。つまり何らかの政治目的を達すれば戦い自体には敗れても良いと考えられますし、戦闘に勝っても政治目的が達せられなければ戦争自体が無駄になります。実は圧倒的な武力を持つ大国が常に勝つということはなく、19世紀の南ア、ボーア戦争においても通常戦で戦おうとする英国軍に対して、オランダ先住移民からなるボーア人たちは戦術を駆使して善戦し、英軍を苦しめました。少数軍勢が大軍に勝つまでに行かなくても侵略の意思を失わせる善戦をすることは古今東西歴史で証明された事実としてあります。侵略の意を遂げるには、侵略した地域が安全に住める状態にならなければ「勝って戦争の目的を遂げた」と言えないので、最後は「虐殺による被支配民の皆殺し」しか手段がない場合もあり、「ジェノサイド禁止条約」がある現在、力で押して「戦いに勝つ」だけでは「戦争の目的を遂げる」ことは不可能になったのです。

米国は911以降のイラク・アフガンの戦役から根本的な国防戦略を通常戦から非対称戦(Asymmetric Warfare)に焦点を移し、兵器や部隊編成、訓練の在り方なども変化させてきました。2006年に米軍が策定したFM3-24Counterinsurgencyマニュアル(対反乱作戦)がその一つですが、本来の軍隊にそぐわない「各人がその場で戦闘の決定を下す」という軍人よりも警察官に求められる任務が入ることで、精神的に病む退役軍人が増加し、米軍本来の戦闘団としての機能低下をきたした事も確かでした。中国では66万人の「人民武装警察」がその役割を担っています。ロシアもアフガン戦役の失敗がその後の戦術変更をもたらしたと言われ、シリアにおけるIS掃討に生かされました。現在は結果的に対称戦よりも非対称戦に米軍・NATOは重点を置く状態が続いているのです。

 

II.  ウクライナ戦争は対称戦になりNATOの脆弱が露呈

 

2022年2月に始まったウクライナ戦争は、当初一方的なロシアの進軍に対してウクライナ軍は体系的な戦争をせずに(むしろ出来ずにが正しい)高精度の西側の武器を用いて神出鬼没の戦いをしたので民間への被害を最小限にしたいロシア軍は苦戦を強いられます。非対称戦で相手が最新の兵器を駆使するのですから非常に被害が大きくなるのは当然です。

しかしウクライナの善戦に気を良くした西側は2022年3月にまとまりかけた和平案を拒否、「ロシア軍は弱いから勝てる」と愚かな決断をして正規軍同士の「対称戦」に持ち込んでしまいます。2022年夏以降、ロシア軍は「対称戦」として戦時経済に移行し、本格的な防衛線を設けて戦争に臨みました。対称戦で軍を指揮できる司令官はNATOにはいません。訓練や兵器体系も非対称戦を前提にしており、強固な防護戦を突破する様に設計されていません。しかもロシア軍は西側の最新戦術を全て取り入れ、イラン製の安価な自爆ドローンとキンザールの様な最新ミサイルを併用してウクライナ軍の10倍の砲火力で戦場を制圧してきました。安価な滑空誘導爆弾は50マイル離れた場所から正確に爆撃ができます。つまり東京駅で爆撃機から投下した500キロ爆弾は箱根や銚子の敵陣地で爆発するので、せいぜい10キロか15キロの砲弾の炸裂とは比較にならない破壊力があるのです。しかも投下した飛行機は対空ミサイルの射程外です。ドローンを用いた同じ戦法がウクライナ戦車とロシア対戦車ヘリでも使用されるので西側供与のレオパルドやブラッドレーが跡形もなく破壊されてしまうのです。

 

III.  肉挽き司令官「シルスキー」就任

 

ウクライナ戦争は100%ロシアの勝利ですが、劣勢を正しく進言するザルジニー司令官を愚かにもゼレンスキーは「いくら兵士が死んでも肉弾攻撃を命令する」シルスキーに交代させました。相手が脆弱であれば肉弾突撃は効果的ですが(2022年秋の東部攻勢)、準備万端整えた相手に肉弾突撃ほど「相手にとって楽な戦い」はありません。ウクライナ兵のシルスキーの評判は最悪で、肉挽き司令官と呼ばれています。第二次大戦で硫黄島の指令であった栗林中将は「万歳突撃はするな、とにかく守りを固めて生き残ってしぶとく戦え」と命令し、米軍の被害を拡大させ、後の沖縄戦や本土決戦で米軍は被害の多さに持ちこたえられないだろうと思わせるに至ります。肉弾攻撃を命ずる司令官は勇ましいようで実は「利敵行為の裏切り者」なのです。

 

IV.  対称戦として戦い失敗するガザ

 

ガザにおけるイスラエル軍は予想通り敗北しつつあります。10月7日のハマスによる人質拉致に対してはCOINによる対応が必須であるのに、イスラエルは通常戦を行ってガザを砲爆撃し、二万五千を超える一般市民を虐殺します。初めからジェノサイドが目的だったのでしょうが、当然全世界から批難を浴び、国際司法裁判所ICJからも「ジェノサイドを防ぐあらゆる処置をせよ。」と命令されます。3万人近く虐殺して、「ハマス戦闘員の2割(5000人位?)を掃討した」などと確認しようのない戦果を発表していますが、解放した人質は一人いるかどうかで、休戦中に交渉で解放された人質が圧倒的に多い。つまり戦果は市民虐殺だけで殆どなく、予備役を含むイスラエル兵の犠牲は数百名と言われています。米国はヨルダン川西岸の入植地域を返還してパレスチナ国家を保障する方向でイスラエルと交渉を始めており、サウジアラビアも1967年の状態に戻せばイスラエルと国交正常化すると言い出しています。イスラエルは「国家の存在自体を世界から否定されないうち」に敗北を認めて兵を引く時期に来ていると言えます。

ハマスか市民か区別つかない男性たちを裸にして縛り上げるイスラエル軍(同じ事を自分たちがされても平気なのか?)

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元社会党市議 一柳 洋 氏の死を悼み、氏が最後に主催した講演会のお知らせ

2024-02-02 22:05:15 | 政治

I.  一柳 洋氏とのつながり

 

2023年12月20日、元横須賀市議の一柳 洋氏が亡くなられました。私は氏が主催する「温暖化とコロナに流されない市民の会」に2年ほど前に誘われて、副代表として講演会や勉強会のお手伝いをしてきました。残念な事に氏は1年前から咽頭がんを患われ、化学療法、放射線治療などで緩解していたものの、10年前に手術をした腎癌、食道がんの影響で飲食が困難になり経鼻栄養による肺炎などで入退院を繰り返しておられました。ご遺骨はご自身の希望で1月27日に東京湾沖に散骨されたそうです。

一柳 洋 氏

氏は18歳でベトナム反戦運動(べ平連)に参加、反公害運動などにも携わりながら市民運動を起こし、1991年から2015年まで社会党から立候補して6期横須賀市議を勤められました。基地の街である横須賀の環境保護、東京湾の保全など積極的に活動される一方で、人為的地球温暖化説には早くから疑問を呈し、近年の新型コロナ感染症、ワクチン強制による市民生活の破壊に強く反対し警鐘を鳴らす活動をされてきました。

副島隆彦氏の「巨大資本を背景にしたグローバリズム(ディープステート)に、政治とメディアが支配されており、日本は右だけでなく左も堕落している」という教えに共感する所が多く口癖の様に「日本の政党は右も左もダメだ。」と評しておられました。市議として活躍されている時から、体制反体制に関わらず、米軍基地問題などでは、自衛官とも広く交流して市民のための情報収集と活動をされてきましたが、引退されてからは「ディープステートによる支配とメディアの偏向」に一人でも多くの市民が気付く事を活動の中心にされてきました。彼の主張はブログ時々政策提言に詳しいですが、孤高の政治家らしくなかなか読み応えのある内容です。

私は防衛医大出身で師団司令部勤務経験があり、二佐で退官した元陸上自衛隊医官ですが、1980年代であれば一緒に活動することはなかったと思われる社会党元市議に、コロナやワクチンに対する疑問、副島隆彦氏の著作や思想と考えを同じくすることから声を掛けて頂き、短い間でしたが一緒に市民運動の活動をして良い経験になりました。

氏が仰るには、「当時の社会党は何でもあり、末端で何をやっても許される気風があってとても居心地が良かった。翻って共産党は中央の決定から少しでも異なる事をすると懲罰を食らう硬直しきった組織で自分には合わない。」と話しておられました。なかなか両党の特徴を表した評価だと思いました。

 

II.  講演会「混迷する世界情勢とメディアの情報操作」

来る3月9日土曜日13:00から日比谷公園内、日比谷コンベンションホールにて「混迷する世界情勢とメディアの情報操作」と題して外交評論家の孫崎 享氏の基調講演、後半に経済評論家の増田悦佐氏、植草一秀氏と私4名で今回のテーマについてそれぞれの専門分野を踏まえて短い講演の後パネルディスカッションを予定しております。https://ondan567.peatix.comで予約ができます。

孫崎 享氏は多くの著作もあってご存知の方も多いと思いますが、外務省国際情報局長、駐イラン大使、防衛大学校教授を経て、東アジア共同体研究所所長、外交評論家として活躍されています。氏の国際情勢分析の知識、センスは当代一流であり、混迷する世界情勢の理解に大いに役立つと思います。

増田悦佐氏は、ジョンズ・ホプキンズ大学、ニューヨーク州立大学准教授などを経て日本に帰国。HSBCやJPモルガンのアナリストを勤め、多くの著作もある経済評論家です。アベノミクスやリフレ政策には批判的であり、穏やかなデフレは国民の幸福につながるという思想を持っておられます。グローバリズムによる強欲資本主義や人為的温暖化政策に理路整然と反対しておられます。

植草一秀氏は大蔵省財政金融研究所などを経て京都大学、早稲田大学で教鞭をとる一方で政権批判によって痴漢冤罪に問われてメディアから遠ざけられました。しかし氏の経済評論は定評があり、鳩山元首相を代表とする「オールジャパン平和と共生」の集会に昨年講師としてrakitarouもお招きいただき、参議院議員会館で「ワクチン接種と連動する死亡数激増、ワクチン接種が危険な理由」というテーマで講演を行い、国会議員の皆さんの出席も賜りました。

今回私は主に新型コロナ感染症とワクチンの問題にかかわるメディアの偏向報道に焦点を当てて15分ほどでブログでも紹介してきた内容についてお話して、孫崎氏を含む4名でパネルディスカッションを行う予定です。一柳氏ご本人の参加は叶わなくなりましたが、真の国士であられた氏の志に沿うよう実りある講演会にしたいと思います。交通の便も良い所ですので、日程的にご都合がよろしい方は是非ご参集いただければと思います。

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国際秩序に道徳は不要、大国の合意あるのみ(キッシンジャー)

2023-12-01 21:46:43 | 政治

2023年11月29日、米国の歴代大統領に仕え、米帝国の外交を牽引してきたヘンリー・キッシンジャー氏が100歳で亡くなった。冷戦期の米国政治を政権の影で牽引し、引退後も世界の動きに影響を及ぼしてきたと言われます。副島隆彦氏の分析では、トランプの大統領就任にも一役買っていたと言います。ウクライナ戦争では和平か戦争継続か、どっちつかずの態度でしたが、日本にもたびたび現れて時の首相に種々指示を出し、日本の政治にも多くの影響を与えたと考えられます。彼の政治的軌跡について、改めてMiddle East Eye誌にコロンビア大学アラブ政治思想史教授のジョセフ・マサド氏が「ヘンリー・キッシンジャーの残忍な遺産」という寄稿をしていたので備忘録的に日本語要約を記します。

(引用開始)

ヘンリー・キッシンジャーの残忍(murderous)な遺産

ジョセフ・マサド 2023年11月30日

1)キッシンジャーの非道徳的で大量虐殺につながる犯罪は、彼が生涯を通じて奉仕してきた米国エリート層の忠実な代表であったことを明らかにした。

2020年ベルリンの式典に出席したキッシンジャー氏

1923年5月27日にバイエルン州フュルトのドイツ系ユダヤ人家族にハインツ・アルフレッド・キッシンジャーが誕生したが、水曜日に100歳で亡くなった。1938年、15歳の時に彼と家族はナチスから逃亡した。水晶の夜の前にドイツからニューヨークへ。青年期のハインツが、重いドイツ訛りを残しながら米国でヘンリーになったとき、彼が大人になって何十万人もの人々の殺害を命令し、その結果億万長者になるとは誰も予想できなかっただろう。

1943年、20歳のキッシンジャーは米陸軍に徴兵されドイツ語が堪能だったため、陸軍情報部で占領下のドイツにおける非ナチス化を担当した。 

戦後、キッシンジャーはハーバード大学に通い、1950年に政治学の学士、1954年に博士号を取得した。1952年にまだ在学中、 1951年にホワイトハウスが対アメリカ政府の宣伝活動のために設立した米国政府の心理戦略会議で働いた。これは米国と「民主主義」を支持し、共産主義に対抗するための委員会であった。米国と中ソの代理戦争で朝鮮半島で何百万もの犠牲者を出した朝鮮戦争の最中でのことだった。

2)キッシンジャーは、国際秩序の正当性には大国の合意のみが必要で道徳は無関係であると主張した

キッシンジャーは彼の著作の中で、国際秩序の正当性には大国の合意のみが必要で、道徳は無関係であると主張した。トーマス・ミーニーがニューヨーカー紙で説明しているように、キッシンジャーにとって「道徳に縛られない事が自由の証だった」のだ。1952年、キッシンジャーは、ワイマール共和国外務大臣暗殺への関与で有罪判決を受けた殺人犯エルンスト・フォン・ザロモンの記事を、自身が編集する雑誌『コンフルエンス』に掲載した。ハンナ・アーレントやラインホルト・ニーバーなど、この雑誌に寄稿したドイツ系ユダヤ人亡命者はこの記事に満足していなかったが、キッシンジャーはこの記事は「私の全体主義者、さらにはナチスへの同情の表れ」だと冗談めかして言ったという。

3)原子力政策

彼はまた、1955年から1956年にかけて外交問題評議会(CFR)で核兵器と外交政策の研究責任者を務め、1957年には著書『核兵器と外交政策』を出版し、米国は戦争において戦術核兵器を定期的に使用すべきだと主張した。

彼の右翼公認伝記作家ナイル・ファーガソンは、キッシンジャーの本の主張は、彼が「スタンリー・キューブリックの『博士の異常な愛情』のストレンジラブ博士のモデルとなった」という「証拠として提示される可能性が非常に高い」と述べている。キッシンジャーは、核兵器に関する著書が学術的ではないという教授陣の反対にもかかわらず、ハーバード大学での終身在職権を獲得した。 

キューブリックの作品「博士の異常な愛情」

彼は学界にとどまらず、ネルソン・ロックフェラーなどの政治家や大統領候補のコンサルタントとしても活動しました。1961年に彼をハーバードに推薦したマクジョージ・バンディがジョン・F・ケネディ大統領の国家安全保障担当補佐官に就任すると、キッシンジャーも顧問としてバンディに加わり、リンドン・ジョンソン政権下でもその地位を維持した。

戦術核兵器の使用をキッシンジャーが推奨していたため、彼は1962年と1965年にイスラエルに招待された。最近の文書は、キッシンジャーがイスラエルは既に核兵器を所有していた事を知っており、イスラエルの核保有を黙認する姿勢であったことが明らかだという。そして1969年にニクソン大統領の国家安全保障担当補佐官として、イスラエルがすでに開発している核兵器計画に対するニクソン政権の理解を仲介することになった。

キッシンジャーはベトナム戦争がアメリカには無益だったと信じていたにもかかわらず、1968年のリチャード・ニクソンの選挙運動に共謀し、民主党が選挙で勝たないようパリ和平交渉の情報をリチャード・ニクソンに漏らし戦争を長引かせたニクソンが選出されると、キッシンジャーは1969年1月に国家安全保障担当大統領補佐官に就任し、1975年までその職を務めた。 

ニクソンは彼のことを「ユダヤ少年」と呼んだが、彼は生涯保守的な共和党員だったので、右翼の反ユダヤ主義は気にしていないようだ。彼は1973年9月から1977年1月まで国務長官も務めた。 

3)冷酷なカンボジアキャンペーン

キッシンジャーは南ベトナム民族解放戦線と北ベトナムを打ち負かす決意を固め、1965年にジョンソン政権下で始まったカンボジアへの秘密戦術爆撃を強化し、1973年まで続く無慈悲な絨毯爆撃作戦に発展させた。 そして1973 年までに 15 万人から 50 万人のカンボジア人が殺害された。

キッシンジャーとニクソンが再び北ベトナムへの爆撃を開始したとき、キッシンジャーは「爆弾のクレーターの大きさ」に最も興奮した。核兵器使用への支持を維持し、彼はダックフックと呼ばれる作戦の一環として1969年に北ベトナムを核攻撃する計画を考案した。 

社交界では彼を「優しいキッシンジャー」と呼ぶ人もおり、女性誌では「常にフレンドリー、特に女性に対しては」と評されていたが、嫌いな女性について語るとき、彼の甘言の人柄はどこにも見えなかった。インドの元首相インディラ・ガンジーのことを「雌犬」「魔女」と呼び、「インディアン」を「ろくでなし」と呼んだ。 

4)クーデターと白人至上主義

1971年、キッシンジャーは元パキスタン大統領ヤヒヤ・カーンの東パキスタン(バングラデシュ)に対する虐殺作戦を支持し、1975年にはインドネシアの独裁者スハルトによる東ティモール人民に対する虐殺戦争(人口の3分の1が殺害された)を支持した。スハルトは1965年に米国の支援を受けたクーデターによって権力を掌握し、共産主義者と疑われる最大100万人のインドネシア人に対して虐殺を行った。東ティモールの死者20万人についてはキッシンジャーは動じず、「ティモールについてはもう十分聞いたと思う」と語った。

1970年に社会主義者のサルバドール・アジェンデが一般投票でチリ大統領に選出されたとき、キッシンジャーは「自国民の無責任のせいで国が共産主義化していくのを傍観して見守る必要はない」とコメントした。彼はニクソンにアジェンデに対する暴力的なクーデターを組織するよう圧力をかけ、その後10年半にわたって国をファシスト支配にさらし、米国の支援を受けた軍事政権によって数千人が殺害された。 

5)キッシンジャーが推進した帝国主義的殺人政策はすべて、キッシンジャー以前もその後も米国の外交政策から逸脱していなかった

南アフリカ、ローデシア、モザンビークとアンゴラのポルトガル植民地における白人至上主義の入植者植民地と米国との関係を強化するという 「タール・ベイビー」オプションを提唱したのもキッシンジャーだった。

中東に関して言えば、ニクソンとフォードの時代に米国の主要同盟国となったシオニスト入植植民地イスラエルとの関係強化とは別に、キッシンジャーは1973年の戦争中に「アラブの勝利を阻止する」ためにイスラエルを徹底的に武装させた。戦争中のイスラエルへの彼の緊急軍事援助は、エジプト軍とシリア軍の初期の勝利を逆転させ、イスラエルの戦争勝利を確実にした。同氏はまた、米国とパレスチナ解放機構とのいかなる関係も確立できないことを保証した。 

1975年9月、キッシンジャーはイスラエルとの間で、ユダヤ人至上主義国家としてのイスラエルの「生存権」を認めない限り、米国はPLOを認めず、交渉もしないことをイスラエル側との「覚書」で約束した。元PLO議長ヤセル・アラファト氏は、1988年にジュネーブで、そして1993年にオスロで再びその覚書通りの署名をすることになる。 

6)恐ろしい記録

事実上、キッシンジャーは、イスラエルによるパレスチナの土地の植民地化が今後数十年間にわたって永続することを保証した。彼は元エジプト大統領アンワル・サダトのイスラエルへの降伏とキャンプ・デービッドでのパレスチナ人の権利売却の立案者であり、いわゆるアメリカ主導の「和平プロセス」を設計した。これはパレスチナ人とイスラエルに対するアメリカの政策を定義し、その後、アラブ世界の多くの地域で現在進行中の災害の元を形作ることになる。 

キッシンジャーが世界中で戦争を挑発し、ファシスト独裁者の権力掌握を支援し、アフリカ南部やパレスチナの入植者植民地での白人至上主義を支援する中で、ソ連との緊張緩和を追求し、中国との国交を開設したことは評価されている。彼はカンボジアへの野蛮な爆撃の最中に北ベトナムと「和平」交渉を行った功績でノーベル平和賞を受賞したこともある。 

キッシンジャーは、ロナルド・レーガンやジョージ・W・ブッシュなど、その後のアメリカ大統領に助言し、彼らの戦争を支援し続けた。1982年、彼は極秘の顧客リストを備えた自身のコンサルタント会社キッシンジャー・アソシエイツを設立し、アメリカとヨーロッパの帝国企業と銀行、西側諸国が支援する第三世界の独裁者、白人至上主義の入植者植民地にアドバイスを行った。最後に報告された彼の純資産は約5,000万ドルでした。 

民主党政権からも愛されたキッシンジャー氏

しかし、キッシンジャーの恐ろしい経歴は、多くのアメリカのリベラル政治家に彼を慕わせた。クリントン夫妻は彼を心から愛しており、彼の誕生日パーティーに出席した。バラク・オバマ前大統領は、2008年の大統領選挙期間中、イランに関する自身の見解を支持しているとしてキッシンジャーを引用したが、キッシンジャーは彼を拒否した。2010年、オバマ政権はカンボジアにおけるキッシンジャーの殺人的政策をまねて、世界中でアメリカ国民を含む米国政策に敵対する人々をドローンで殺害した政策を正当化した。 

7)彼の政策は異端ではない

2018年4月、キッシンジャーはトランプ大統領の億万長者の友人たちとともに、ホワイトハウスでのトランプ大統領の初の国賓晩餐会にゲストとして出席した。彼はウクライナ戦争についても意見を述べているが、それについては何度か考えを変え一貫した方針を示していない。

ヒッチンズ氏はキッシンジャーに関する著書の中で、「戦争犯罪、人道に対する罪、そして殺人、誘拐、拷問を含む慣習法、国際法に反する」罪でキッシンジャーを告発している。しかし、ヒッチンズは、キッシンジャーの政策が彼の固有の犯罪性からもたらされた特殊性(異端)ではなく、これらの犯罪のそれぞれがむしろ「米国政府に対する批難」に代わるべきであることを理解していないようだった。 

実際、キッシンジャーが推進した帝国主義的殺人政策はすべて、キッシンジャー以前もその後も米国の外交政策から逸脱するものではなかった。それが、アメリカのビジネス界や知的エリート、リベラル派や保守派の間での彼の人気の理由となっている。  

ミーニー氏が言うように、国の罪を一人の男のせいにすることは全員の利益になる。「キッシンジャーの世界史的人物としての地位は保証されており、彼の批判者は彼の外交政策を米国の常道でなく、彼特有の特例とみなすことができる」。 

キッシンジャーの非道徳的で大量虐殺的な犯罪は、建国以来の米国が犯してきた犯罪に比べれば大人しい方であろう。強いて言えば、キッシンジャーは生涯を通じて彼が仕え、彼の名声、富、贅沢三昧の人生を保証してくれた米国犯罪エリートの忠実な代表にすぎなかったとも言えよう。

(引用終了)

 

デビッド・ロックフェラー(2017年死亡)、ジョージ・ソロス2023年引退、そしてヘンリー・キッシンジャーが亡くなって、善悪どちらの面もあったでしょうが、世界政治に影で大きな影響を及ぼすフィクサーと言える人が見当たらなくなった様に思います。ビル・ゲイツや世界経済フォーラムのクラウス・シュワブはそこまでの行動力があるようには見えません。今後の国際情勢は混沌として金と権力がある様々な思惑の人達にかき回され、民衆側からも強力な指導者がなかなか現れず、どちらにも流され得る浮遊状態になる様にも思います。

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現世利益を追求する宗教原理主義

2023-11-02 14:01:23 | 政治

I.  現世利益を追求する宗教原理主義

 

旧約聖書を根拠に正当化された大虐殺がこの21世紀の現在パレスチナで行われていますが、人権やコンプライアンスを執拗に追及するメディアが大人しいままである事に違和感を抱く人も多いと思います。どのような宗派であっても「敬虔な宗教者」は人殺しや盗み、詐欺などしません。

聖書を持ち出して虐殺を正当化するネタニヤフ首相(世界では誰も納得してないけど)

ISISなどの「イスラム原理主義」、ファンダメンタリストと言われる「キリスト教原理主義(一部福音派?)」、現在のイスラエルの体制である「シオニズム・ユダヤ原理主義」と、「敬虔な」ではなく政治と結びついた「原理主義」と表現される派閥は、「政治」という「現世利益」、我欲煩悩に結び付いた利益誘導に結び付く政策に宗教教義を利用している連中の事を指すと考えます。現代宗教を含めて、キリスト教やイスラム教などもせいぜいこの二千年内に普及した宗教というのは信者獲得のために「現世利益」をどこかで教義に含めることが多く、その都合の良い「現世利益」のみ強調して活動することで信者以外、時には本来の魂の救済を信じて活動している「敬虔な信者」にとっても極めて迷惑な存在となることが多いのです。虐殺や略奪を正当化する宗教など存在しないのですが、「我欲煩悩を達する目的」で宗教全体の教義のごく一部のみを強調して「虐殺」や「略奪」を正当化し、それを宗教の名のもとに行う「悪者」が歴史のいつの時代にも存在してきたのです。彼らは批判に対して「信教の自由を侵害するな」などとあたかも自分たちの行いが「信教に基づく正当なもの」である如く主張しますが、「我欲を満たす目的」なだけであり、騙されてはいけません。「我欲を満たす」目的と関係なくなった途端に彼らは主張しなくなるので見分けは簡単です。

難民キャンプ爆撃を公式に認めるイスラエル軍広報官。国連の人権担当弁務官も抗議の辞任

 

私は、納得できる常識的な範囲での「浄財」は許されますが、それを超えるものは全て「邪教」と断定します。医師を長年やっていると「神の存在」を皮膚感覚で実感する機会が度々ありますが、それらから言えることは、「神の教えは現世利益とは結び付かない」ということです。神は現世利益に対しては「厳しい」し、「関与しない」ものですが、「魂には優しい」というのが実感としてあります。

 

II.  西側諸国で喧しい終末論

 

イスラエルのネタニヤフ首相は聖書を持ち出して現在の戦争につなげています。それが聖書に記された世界最終戦争、核戦争になるのではないかと恐れる人も増えています。日本のメディアはガザの虐殺に対して「世界で抗議が広がっています」と他人事扱いですが、日本政府はイスラエルを公式に支持してしまっているので、メディアからも抗議の声をあげないと日本人全体がイスラエル極右政権支持の様に誤解されかねません。アル・ジャジーラはニューヨークのユダヤ系市民、イスラエル国内の人々を含む世界中の人たちがイスラエルの侵略戦争に反対していることを報じています。

心あるユダヤの人達は戦争反対である。

 

III.  ウクライナ・ガザ虐殺記念館

 

Time最新号は「ゼレンスキー大統領ほどウクライナの勝利を信ずる者はいない」という特集を組んでいますが、一見ウクライナ勝利が近いのかを間違える見出しながら、内容を読むとウクライナ軍の犠牲が余りに多く、西側の支援も枯渇し、すでに補充する兵もいない現状が紹介されています。最近は攻撃命令を無視する前線の兵士も増加し、ロシア軍は特定の信号帯をウクライナ兵の投降用に開けており、すでに1万人以上が前線で直接投降したとも言われます。つまりTime誌の特集は「すでにウクライナの勝利を信じているのはゼレンスキー大統領だけである」と読み替える事ができます。

ガザの虐殺は生中継で数えきれない証拠が世界中に広がっています。イスラエル政府の意図的無差別殺戮も証拠に残っています。イスラエル国民からも支持されていない今回の戦争は「イスラエルの敗北」で終わりますが、同じくウクライナ敗北で終了するウクライナ戦争を含めて、今回の悲惨な戦争は戦後「記念館」として保存展示されることになるでしょう。ウクライナのマイダン革命における悲劇、オデッサのロシア系住民虐殺、バフムトやマリウポリの戦闘における市民の犠牲者(基本的にドンバスに住むロシア語圏の人達)が展示され、後世に教訓を残すことになるでしょう。イスラエルを旅行した際に、ホロコースト記念館を訪れましたが、同様の記念館がガザにも開設されるでしょう。後世のユダヤ人は修学旅行などでガザ記念館を訪れて、「シオニズム原理主義者」が「煩悩に基づく現世利益を目的に犯した罪」について反省させられ、「敬虔な宗教信者」はどうあるべきかを改めて考えさせられることになるだろう、と私は信じます。

エルサレムのホロコースト記念館 ガザやウクライナにもできるだろう。

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今更ながらDSとは何か

2023-09-08 22:21:00 | 政治

世界が表に出ている政治家らに依って動かされているのではなく、「富と経済を支配する一部の富裕層のネットワークにより動かされている」とする考えは「陰謀論」として話されてはいけない事、「トンデモ系」のレッテルを貼られたくなければ触れない方が良い話題、とされてきました。しかしロスチャイルドなどの巨大財閥が水面下で国際政治に影響を与えている事は「常識」の範囲であり、この2-3年、ビル・ゲイツがWHOやワクチン開発の至る所にポリシーメーカーとして登場するに至り、どうも我々が民主主義で選んだ「選良たち」が世の中を決めているのではなさそうだ、という事がかなり頭の鈍い人達にも分ってきた(分かってしまった)と言えるでしょう。そこでトランプ大統領がDeep State(影の政府DS)と呼んだ存在は具体的にどのような存在かをまとめておきたいと思います。

 

I.  地球の富の50%以上を富裕者上位1%が所有する

 

貧富の格差を研究するOxfamという組織があります。2015年に出された「富の独占を進める富裕層エリート達」という冊子があります。破綻してしまいましたが、Credit Suisseの集計を用いて、2014年の段階で地球上の富の48%が富裕層トップ1%の所有であると示しています。それは2020年には54%にまで増加するだろうと予想されました。

2015年の段階で世界のトップ1%の富裕層が世界の富48%を所有し、2020年までには50%を超えるとした集計

 

2023年1月に出されたOxfamの「富者生存(survival of the fittestにかけたrichest)」という冊子ではコロナ禍の2020年から2021年にかけて、新たに生まれた富の63%が上位1%の富者に渡った(Credit Suisse Global Wealth Reportによる)と報告されています。Forbesの集計によると、億万長者の富の集中が20世紀に比して、近々10年に凄まじい勢いで増している事が解ります。世界的に格差の拡大、中間層の喪失、2極化が進んでいる事を表しています。

コロナ禍で儲けたのは結局富裕層1%だけという集計 富の集中はこの10年で著しく進んでいる。富を持つ者が「富と権力の持続」を望むのも自然と言える。

 

II.  富裕権力者の総意を実働部隊に会議で披露する

 

富裕層1%のそのまたごく一部の超富裕層の人達は、自分たちの経済支配の現状を継続させるために予め内々にごく一部の人達で(これら表に出ている人の他に、実際は土地などの計り知れない資産を持つ少数の貴族や王家の家系があってそちらが本命)方針を決めた上で、非公開のビルダーバーグ会議などを開いて方針を固め、ある程度公開性であるダボス会議などで、世界中の政治家、メディア、有力者などに方針を徹底させます。金の流れを支配できれば、社会の流れを支配することは可能です。一見「被支配者が自分たちで進んで選んだ様に見える政治体制」も実際には金の流れに従って決まった体制であり、これらの体制を決めている総称が「DSと表現される物」と言えましょう。

 

III.  被支配者が多すぎるとやりにくい

 

1%の支配者にとって、99%の被支配者の数が多すぎるのはやりにくいものです。その他大勢が反乱を起こして支配者を追い出されては困ります。そのためには被支配者は弱者で大人しく、全体主義的に抑圧されて、適度な娯楽や幸福で満足して働いて支配者に奉仕し続ける事が望ましい姿と言えます。

 

藤井 聡氏 「全体主義としてのグローバリズム」講演から引用   全体主義的グローバル資本主義の行き着く先と本質を示すスライド

 

被支配者が団結しない様、戦争をさせ、憎しみ合わせ、分裂させて支配する(divide & rule)。定期的に病気を流行らせてワクチンなどで体力を弱らせる。ナラティブという手法で、自分たちが納得して服従するように仕向ける、といった手法を取らせる事が現在行われています。ただ思惑通りには進んでいない様にも見えます。やり方が露骨すぎるからでしょうか。

増田悦佐 氏 (2022年刊)

 

IV.  サイエンスをナラティブ(自ら納得して選択する)の手段に用いる

権力者が決めた政策を、暴力に依らず進んで民衆に従わせるには、従いたくなる動機としての権威、畏怖の念、或いは「権威に従わない時に被る被害への恐怖の感情」などが必要になります。古来より為政者は様々な方法で民衆を従わせる手法を考えてきました。その主な変遷を図に示します。

 

古代には「自然の力」を利用し、その意思を伝える「巫女」の預言が用いられました。原始的宗教を用いた王制の時代です。

ユダヤ教、キリスト教、イスラム教など一神教の教義が完成すると、「神の名の下」による宗教的権威による支配が行われます。神の権威による支配で、これは今も一部有効と言えます。

民族国家の概念が確立すると、「民族の優位性」「血の純潔」といった漠然とした概念に「価値と権威」を持たせ、それらが個人の生活よりも優先されるという思想で民衆を従わせる手法、「民族主義による支配」は現在でも使われています。

資本主義が発達して経済的格差が決定的になると、「所有を否定」する原始共産制が「人類の平等を実現する究極の思想」であり、資本主義を否定して人類進化の終わりには共産主義に到達する、という経済理論が大きな権威を持っていた時代がありました。「革命」の名(権威)の下にあらゆる個人の自由を制限する政策が正当化され、それに従わないことは「反革命的」であり糾弾・弾圧されても仕方ないとされる思想で、「経済理論による支配」と言えます。

20世紀は科学の時代であり、科学の進歩によって人類の文化的生活は大きく発展しました。国家の枠を超えて、人類全てを従わせる手法として「科学の権威」が用いられる様になったのが21世紀の現在と言えます。そしてその権威を偽装して、まるで正統な科学である様に詐欺的手法で用いたのが「科学の衣を着た政治的プロパガンダ」なのです。つまりコロナ感染症、温暖化、ワクチンなどを反論を封じた上で科学的に一部真実であることを交えて政策全体が科学的真実である様見せかけると言う、サイエンスをDSが被支配者を進んで従わせる「ナラティブの手段」と化しているのです。

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戦争に勝つということ

2023-08-24 15:28:02 | 政治

日本では「戦争」というとボロボロに負けて原爆まで落とされた「太平洋戦争」の事しか論じられません。

終戦の日や原爆忌に戦争について語るのは大事ですが、非常に「皮相な内容」で本気で今後起こるかもしれない戦争を避ける方策を真剣に議論している様には見えません。戦争体験者の方々は本気で「戦争はやってはいけない」と考えていると思いますが、教えを受け取る我々戦後世代、特に40代以下の若い人たちが本気で戦争を避ける方策を思案している様には見えません。

戦争を論ずる時、負けた戦争だけ考えれば良いのでしょうか、勝ったとされる戦争「日清」「日露」「第一次大戦」について深く論じられているのを見かけません。戦争の「存在自体を全否定して後は考えようとしない」で済ませてないでしょうか。本当に非戦を誓うのであれば、「戦争」という相手のある「外交の一形態」で戦争まで発展しないための方策を考える。また戦争になってしまった場合の終わり方、「戦争の勝ち方(負け方)」について検討しておくべきだと私は思います。その意味で我々にとって傍観者(第三者)的立場で見ていられる「ウクライナ戦争」について上記に関する議論を尽くす事は有用と思うのですが、メディアで出てくる話は「ロシア悪い」だの「ウクライナがんばれ」という幼稚園児レベルの話ばかりです。そこで今回は「戦争に勝つ」という内容を論考したいと思います。

 

Ⅰ.  戦争に勝つとは

 

戦争に勝つという意味には以下の3通りがあると思われます。

 

(1)相手が全員死亡・絶滅して戦う相手が消滅することによる終戦。

今時これはないと思われますが、「テロとの戦い」は実はこれを目指しています。

(2)相手が無条件降伏(unconditioned surrender)を受け入れて終戦。

第二次大戦がこれですが、その後の戦争も相手国の政治体制を変革させるという点ではこれに近い。

(3)自国にとって有利な条件で双方が終戦(休戦でなく)を受け入れる。

第一次大戦までの外交の一形態としての戦争の一般的なありかたでした。この場合、「休戦による相手のリベンジ」を誘発しない工夫が必要です。「次は勝とう」と思わせる終戦では平和はやってきません。そのためには「有利な条件」なるものが「誰の利益になるのか」が問われます。利益には次の3通りがあります。

 

a)  国民全員(将来含む)に明確な利益になる。

b)  支配者や資本家だけの利益になる。

c)  軍産複合体、武器商人だけの利益になる。

 

この利益は、紛争内容が自治権(領土)なのか資源なのかによっても、国民に分配されて受ける利益の内容が変わってきます。戦争で苦労するのは国民です。国民が利益を感じない戦争(士気が上がらない)に勝ち目はありません。増して「テロとの戦い」の様に一体何と戦争しているのか不明な場合は、国民の利益と言えるものがあるのかさえ不明であり、b、cの利益だけだね、という結論になります。今テロとの戦いは知らないうちに終わっているようです。

 

II.  戦略と戦術

 

戦争の目的を達成するために建てるのが「戦略」であり、個々の戦闘に勝つための方策が「戦術」です。個々の戦闘は戦略に沿って要否や戦い方が決まるのであり、戦略と戦術は関連しています。個々の兵士にとっては自分の生死にかかわる「戦術」は非常に大事ですが、大きな視野での戦略に沿って戦争は進むので兵士は「コマ」でしかありません。結局「政治」が最も優先され、大事なのです。

 

III.  ウクライナの悲劇(攻撃=戦争の主導権という勘違い)

 

1) ウクライナ戦争における戦術の大変革

 

ウクライナ戦争は「正規軍同士の戦争」における「戦術」の常識を大きく変えました。第二次大戦におけるバルバロッサ作戦(独ソ戦)との比較が戦車や機械化歩兵を用いた戦争の例として持ち出されますが、戦術を検討する上でのISR(情報、監視、偵察)の在り方が全く変わり、衛星、ドローン、通信傍受を用いた現在「すべての軍の移動、集合は相手に筒抜けである」という前提で戦術を検討する必要があります。

 

西側にはロシア軍はISR、近代装備、士気、機構ともに「西側よりも劣っている」とする神話があります。特に専門家と称する人たちや軍の上層部にもロシア軍が圧倒的に勝っている現在においても「この神話」を信奉している人たちがいます。メディアがこれらの人たちの法螺をそのまま放送するので軍事音痴の一般の人たちも「弱いはずのロシアがなかなか降参しないのはおかしい」と思っています。現実にはロシア軍はISR、近代装備、士気、機構ともに西側より優れています。劣っているのは水上海軍力位でしょう。ウクライナ戦争についての解説が現実を反映していない「ちんぷんかんぷん」な内容なのはこのためです。ウクライナの春季(夏季)攻勢が圧倒的敗退をきたしたのはロシアISRがすべてを把握して防御したからに過ぎません。ゲームボードの様に俯瞰で眺めながら相手の戦力や出方を全て把握しながら防御(攻撃でなく)を用意周到十分な戦力で行えば自軍の犠牲を最小限にして相手を全滅させる事が可能です。

 

2)「攻撃=戦争の主導権」という勘違い

 

西側は当初ウクライナ戦争支援の目的を「プーチン体制の崩壊」に置いていました。ロシアはウクライナへの「特殊軍事行動(SMO)」の目的をドンバスの独立、ウクライナの中立化、非ナチ化、に置いていました。ゼレンスキーはロシアのクリミアを含む全領土からの完全撤退に目標を定めているようです。当初述べた「戦争に勝つ」定義において西側は体制変革2)を目指し、ロシアは有利な条件での終戦3)を目指している事が分かります。

当然戦争目標に向かう「戦略」にも違いがあり、西側はロシアプーチン体制が崩壊するよう「経済制裁」を行い「ロシアの休戦提案を拒否」して、ウクライナに近代兵器を援助し続け、「ロシア軍は弱いという神話」を信じ続けてロ軍が負ける事を期待しました。

ロシアの戦略は自軍の犠牲を最小にしつつウクライナ軍を叩き、戦争継続不可能にして有利な条件で終戦締結できる様にすることです。終戦後ウクライナ国民にリベンジ心を持たれないよう民間への攻撃損害は極力避けてきました。また降伏したウクライナ兵も保護してきました。この目的を達するために、防御を完全にしつつ相手の攻撃を誘う戦略を取ってきました。この1年戦線が膠着して動かない理由を「ロシア軍の弱さ」と解説する大馬鹿者がいますが、「戦略や戦術ISRの変革」をまるで理解していない事を露呈しています。

ロシアの侵略を受けたウクライナは、自軍の犠牲を少なくしてよい条件で終戦に持ち込むためには本来「防御に徹する」必要があります。ロシアは、現在ウクライナが春季攻勢をしているヘルソン地区を2022年秋から1年かけて3重の防御陣地を構築してきました。西側が本気でロシアに勝ちたいのならば、完全な防御陣地ができる前に徹底的に攻撃する必要がありました。現在「侵略」したロシアが防御を固めて、侵略されたウクライナが「攻撃」を続けています。この戦略の違いは「攻撃を続ける側に戦争の主導権があり、勝っていると印象付けられる」という思い込みがあります。実態は圧倒的強力な米軍を相手に勝つ見込みの無くなった日本軍が万歳突撃を繰り返していた太平洋戦争末期と同じ状態と言えます。「敵が見える状態で厳重な守りに付いている側が圧倒的に強い」のです。

 

追記:

ほぼ毎日更新してウクライナの戦況を解説しているWeeb Union氏が2023年8月25日の解説で「何故ウクライナが勝てないのか」について今までの戦い方の誤りを指摘しながら論説していました。結論的には私と同じ「攻撃を続けている」からというものでした。ロシア軍が半年かけて攻撃をしていたバクムート攻防戦においても、ウクライナは「撤退戦術」を取らず、ワグネルの小規模な攻撃に反応して「Head to head」で戦ったので、「ウ軍の状況をISRで全て掌握したロシア軍が強力な砲撃で殲滅する」戦法を取り続けて毎日数百人の損害を出し続けたと批判しています。小国は攻撃してくる大国を撤退しつつゲリラ戦で戦う(北ベトナムやアフガンムスリムの戦法)のが唯一勝利を得る方法であると喝破しています。

Weeb union氏の解説。戦争初期にキエフに侵攻したロシア軍にウ軍は集中。その間南にロシアが進撃した後ずっとロシア側が守りを固めてウ軍の攻撃を撃退する戦法を取っている。

 

3) 攻撃型兵器はゲームチェンジャーにならない

 

オランダなど一部の国は旧式化したF-16戦闘機の供与を決めたと報道され、ウクライナはモスクワ中心部へのドローン攻撃を繰り返しています。攻撃型兵器や細々とした攻撃を続ける事が戦争の大成を変えるゲームチェンジャーになると信じている人たちがいる証拠ですが、上記の様に実現不可能な戦略に基づく政策に効果はありません。万歳攻撃を続けるウクライナは2)の国家体制の消滅に向かっていると言えます。ウクライナは全部隊を一度退却させてドニエプル河の西側で防御態勢を組めば、ロシアは当初の目的を達することになるので双方に有利な条件で終戦に持ち込むことができるでしょう。誰の利益のための戦争か、我々日本人は第三者としてよく見ておきましょう。

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ウクライナの万歳突撃称賛は犯罪

2023-06-10 11:22:09 | 政治

広島G7で停戦宣言をしなかったウクライナはいよいよ破滅に向かって「捨てばち」(desperateと欧米評論家は形容している)と言える攻撃を開始しています。西側メディアが「春季反転攻勢」などという戦略的にもっともらしい名前を付けてウクライナに実行を迫っていますが、「停戦を促さず攻撃を称賛する事」は、ウクライナの未来ある若者を無駄死にさせ、戦略も勝算もないまま万歳突撃を強制する「犯罪」に加担していると断言できます。日本の堕落メディアを見ていても一向に真実が見えないので、海外の客観的軍事解説から、この一週間の悲惨なウクライナ軍の現状をまとめておきます。

 

I.  数日間の春季攻勢開始で3700人の犠牲

ウクライナの兵力展開図 東部には多くの部隊がいるが、消耗激しく実効戦力に乏しい

2023年6月4日から6日にかけて、ウクライナ軍は6日に破壊されたノヴァ・カホフカダムの場所より東側のザポリジャ方面を中心に、数か所の本格的攻撃を仕掛けました。それは、4月に機密暴露された「西側各国で整備訓練された10個旅団」を用いた所謂「春季反転攻勢」に相当する内容で、ゼレンスキー大統領も攻勢開始であると認めていました。

春期攻勢の図  虎の子の10個旅団を用いた無謀な攻撃でわずか3日間で多くの死傷者を出した

ウクライナ軍はオレホフスキー線からメリトポリへの突破口を作るために、10個旅団のうち3個旅団を用いて複数個所から攻撃を仕掛けました。その大きな戦略自体は、将来的にクリミアへの補給路を断ち、ロシア軍を分断孤立させる狙いであるので正しいものではありますが、昨年夏ヘルソンからロシア軍が退却して以来、この戦線は動いておらず、半年以上かけてロシア軍はこの地域に誰にも邪魔されずに2重3重に防御陣地を構築してきました。一方ウクライナ軍は3ヶ月足らずの訓練を素人同然の若者に欧米各国バラバラに施して、合同演習もせずにいきなり実戦に投入しているのであり、通常第一線攻撃部隊の裏にはそれを支える後方部隊(logistics)が前線の3倍は必要であるのに、それらの準備もなく(初めの図参照)前線にただ投入されています。これを自殺同然の万歳突撃と言わず何と表現できるでしょう。米国の軍経験者で自由に物が言える人達は異口同音にウクライナ軍の無謀を「兵士達の人命軽視」と批難していますが、表のメディアや日本でも表面的に人権を口にする連中が一切口を閉じている欺瞞は永久に記録に残さねばなりません。

ウクライナ軍はまずはいくつかの攻撃地点に3万人を投入してロシア軍の弱そうな陣地を見極め、突破できそうな重点に後方で待機する残り7個旅団を集中して投入し、メリトポリへの進入路を確保するという作戦です。

6月4日から6日にかけて、この3個旅団が攻撃を開始したのですが、全ての戦線で完全にロシア軍に撃退され、多大な損害を出した。というのが結果でした。ロシア国防大臣のショイグ氏は、この3日で71名のロシア軍死亡、210名が負傷という数字を公表しましたが、ウクライナ側の損失は、3,715人の兵士、52台の戦車、207台の装甲車両、134台の車両、5機の航空機、2機のヘリコプター、48台の砲兵システム、53機のドローンであると発表しました。敵方の損失を多めに見積もる事はあり得るのですが、攻撃失敗であれば人員の10%程度の損失は妥当な所であり、バクムートで一日200-500名のウクライナ兵が損傷(戦死または負傷)していた事実、各所に上がって検証されているビデオ映像などからも真実の様です。つまりウクライナ軍は多大な損害を出しただけでメリトポリへの突破口は開けなかった(数百人が無駄死して、数百メートル前進した後、完全に押し戻された)のが結論です。ドイツ製のレオパルド戦車は確認できませんでしたが、暴露された機密書類に記載されていたフランス製の旧式AMX10等の戦闘車両は多数破壊された事が明らかになっています。

多くの犠牲が出た事を報ずる6月8日のCNN記事

 

II.  ダムを決壊させたのもウクライナ軍の攻撃

 

ドニエプル河のカホフカダムが破壊されて、下流の広い地域が水害にあっており、日本も500億円分の救援物資を緊急で送ると報道されました。ウクライナはあくまでロシア軍がダムを破壊したと主張していますが、客観情勢から判断する人達は結果的にウクライナ軍(ウクライナ国民には不利益だが、基本的にロシア語圏のウクライナ国民は犠牲にするのがキエフ政権の基本姿勢)に利益がある事から、決壊させたのはウクライナ側であると判断しています。

昨年夏の段階でウクライナ軍はダムの破壊を計画していました。また今回も破壊前から、上流のウクライナ側が管理するダムの水を放出させ、カホフカダムの水位を記録的に上昇させていました。ダムが決壊した後も下流の村落が水没する中、ウクライナは上流のダムの水門を閉じていません(つまり水害が大きくなる作為がある)。カホフカダムを管理しているのはロシア軍であり、水害を起こしたければ破壊せずに水門を開ければ良い。しかもダムからはロシアが管理するクリミア半島への水の供給が行われており、それを犠牲にする必然性がロシアにはありません。破壊したのはウクライナ側以外ないのです。

ウクライナ側がダムを破壊する準備があると報ずる昨年8月のワシントンポスト記事と実際に砲撃があったとする昨年8月BBCの記事

 

米軍が破壊したノルドストリームパイプラインも、当初ロシアが破壊したというヨタを平気で西側は報道していましたが、シーモア・ハーシュ氏に米軍が破壊したと暴露され、ウクライナ側がヨットで破壊したという無理筋な作り話を後付けで出しました。

 

III.  NATO加盟国の一首脳であるヴィクトル・オルバンの言葉

 

G7の項でも述べた様に、戦争開始以降ウクライナに勝算がなく、無辜の若者達が無駄死するばかりである現状から、責任ある政治家が取るべき行動は「停戦」と「平和交渉」以外ありません。しかし哀れな事にこの小学生でも解る「当たり前の事を堂々と主張する政治家」が数えるほどしかいません。NATO加盟国ハンガリーの首相であるヴィクトル・オルバン氏はその一人で、BBCの番組でロシア寄りの発言を引き出して批判しようとするインタビュアーに対して、堂々と「事実に基づいて判断すれば、ウクライナに勝ち目は一切なく、NATOは参戦もしない。国際政治が行うべき事は命を救う事だ。まず停戦して平和交渉をすることだ。」と明言しました。CNNの番組に出演したトランプ元大統領も、「殺し合いは直ちに止めるべきだ。私が大統領なら24時間以内に停戦させる。」と発言して聴衆から大喝采を浴びています。日本でも鳩山元総理や鈴木宗男氏が停戦を公の場で明言していますが、彼らを「ロシア寄りの怪しからん政治家」と印象づけようとするインタビュアーらの知性の軽薄さと品性の薄汚さが目立ち、私はこれらの犯罪者達に嫌悪感以外感じません。

政治家のやるべき事は戦争で失われる命を救う事だ      唯一の解決策は「停戦」であるとインタビュアーの誘導尋問に乗らずに堂々と答えるオルバン氏

 

全てのヒトに「戦争で死んで行く事」は止めねばならない。 私が大統領なら24時間以内に停戦させる、と明言するトランプ氏

 

グローバリストに嫌われて、表舞台から降ろされる結果になっても、堂々と当たり前の自説を述べる政治家やジャーナリストが増えれば、社会は変わる(実際西側社会以外の世界は既に変わって来ている)と期待するのは私だけでしょうか。

まず戦争を止めさせよ、と説く鈴木宗男氏 全ての政治家は見習うべきだ。

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