Mizuno on Marketing

あるマーケティング研究者の思考と行動

在外研究、始めました。

2015-05-09 16:31:15 | Weblog
4月から、ニューヨーク市立大学バルークカレッジでの在外研究を開始した。最初の数週間はアパート探しや生活環境の整備で忙殺された。予想外のことが次々起きて不安な日々だったが、ようやく落ち着いて本来の目的、「研究」に着手し始めた今日この頃である。

バルークカレッジはマンハッタンの東25丁目にある。写真のように、どでかいビルに多くの学部・学科が入っている。そういう点で、私の本務校である明治大学に似ていなくもない。それに対してNYUは多くのビルを持ち、コロンビア大学は広大なキャンパスを持つ。


ニューヨークはいうまでもなく刺激に満ちた街である。しかし、今回は長期の滞在ということもあり、これまでそんなに出歩いていない。研究に集中できる貴重な機会であり、そこで研究生産性をどれだけ高められるか・・・純粋に意志と能力が試されることになる。

そんなときに当面の目標があると便利である。幸い6月に Marketing Science Conference、7月に ICServeFrontiers in Service Conference があるので、それに向けた研究作業は待ったなしである。前者では、阿部先生、新保さんとのTwitter研究を発表する。

この研究は実は、昨年も同じ会議で発表している。今回はパラメタ推定法を改め、シミュレーションも発展させた。目標は、ネット上の少数のインフルエンサーのインパクトを測定すること。研究が活発に行われている領域なので、そのレビューも欠かすことができない。

7月の2つの会議(サンノゼ)では、JST/RISTEX 戸谷Gで行っている金融サービスに関する研究を発表する。顧客収益、顧客調査、従業員調査という多元的なデータを組み合わせたモデル構築を行い、顧客間取引データを用いてエージェント・シミュレーションを行う。

この2つが、学会発表が予定されているプロジェクトだ。昨年度行ったプロ野球ファンの調査についても、発表に向けた場づくりが進みつつある。分担者となっている有権者の経済政策・政治・消費に関する選好調査の科研費プロジェクトは、今年度で最終年度を迎える。

また、自身が代表者となった科研費プロジェクトも最終年度を迎える。そこでは、創造的・美的なるモノ(たとえばAppleやDysonの製品)へのテイストの測定が研究目標である。方法論では、社会学における文化資本や社会関係資本の研究にインスパイアされている。

自分のなかで、それと一体的に位置づけているのが、ストリートファッションの長期観察データの分析だ。ファッションを普及現象としてみると、成功例もあれば失敗例(一時的ファッド)もある。そのダイナミクスの理解に、社会ネットワークの観点が欠かせないと思う。

他にも、意思決定に関する被験者実験や、大規模マーケティングデータの分析に関して、かねてから第一線の複雑系研究者(物理学者)と進めている研究プロジェクトがある。お互いのコミュニケーションが取りにくい状況になったが、何とか前進させて行きたい。

その一方で、せっかくの機会なので、在米のマーケティング研究者と新たに共同研究の機会が得られないかとも考えている。テーマは上述のプロジェクトと関連しているとうれしいが、そうでなくてもよい。重要なのは、自分がそこでどんな貢献ができるかだが・・・。

実は、在外研究の最終目標としているのは Complex Modeling of Consumer Behavior の執筆だ。上で述べた活動もそこに落とし込めればよいが、全般的な研究レビューなど、自分の研究を離れて行う部分も少なくない。そのための時間確保も、いずれ大きな課題になるだろう。