Mizuno on Marketing

あるマーケティング研究者の思考と行動

2018年の年頭にあたり

2018-01-04 15:51:52 | Weblog


2018 年の年頭にあたり、抱負を書いてみたい。今年は私にとって、2年間の在外研究を終えて平常営業に戻るプロセスを終え、新たなステージに入ったことを示す1年にしたい。そのためには、在外研究を機会に生まれた研究の種を開花に向かわせることが重要になる。そうした研究を結ぶキーワードは「市場の進化」になるかと思う。

最初の一歩は、新製品に関する「普及の失敗」の研究だ。進化が淘汰によって起きるとしたら、多くの普及モデルが「失敗」の可能性を無視してきたのは問題だ。オンラインレビューやファッションのデータ分析も「進化」の研究と呼べそうだ。消費者側に着目することから、これらは「顧客の進化」といったほうが正確かもしれないが。

もう1つの重要目標は、エージェントベース・モデリング(ABM)による理論志向の研究へ回帰することである。まずは懸案の "Complexity Modeling of Consumer Behavior" が、出版社のサイトに記されているように2019年に刊行されるよう頑張りたい。なお、この本と連動するよう大学院の講義を体系化することも課題である。

研究とティーチングの連動という点では、学部の講義で教科書として用いている『マーケティングは進化する』を改訂する準備を進めたい。マーケティング環境は急速に変化している。もちろん、ファッドを追いかけてもすぐ陳腐化するので、ある程度は持続するトレンドを捉え、理想をいうならさらに不変の「真理」に迫りたいところ。

もちろん、仕掛品の論文投稿も進める。ゴール(or 締切)が間近に迫っているのは以下の3つだろう:

・Twitter 上のインフルエンサーの研究 w/ 阿部誠 …昨年8月のネットワーク生態学シンポジウムなどで発表

・複素ヒルベルト主成分分析によるカスタマージャーニーの分析 w/ 青山秀明、藤原義久 …昨年12月、JIMS研究大会経済物理学2017で発表

・デジタル・メディア環境でのマーケティング・コミュニケーションに関するレビューワークショップ w/ 大西浩志、澁谷覚、山本晶 … 昨年6月の JIMS研究大会で発表

次に論文投稿が課題となるのが以下の2点:

・期間限定が購買に与える影響の研究 w/ 石原昌和 … 昨年12月、行動経済学会大会で水野が発表

・購買行動の潜在オケージョン分析 w/ 石原昌和, Jessica An … 昨年8月の INFORMS Marketing Science Conference で第一著者である石原さんが発表

昨年5月に発表した「クリエイティブ-文化資本」の研究については、理論面の考察を深める必要がある。「熱狂」「イデオロギー」に関する研究もそうだが、テーマが狭義のマーケティングを超えて広がるほど、諸学問に立脚した理論武装が必須になる。自分の研究がそちらに向かうにつれ、文献を読むことがかつてなく重要になりそうだ。