Mizuno on Marketing

あるマーケティング研究者の思考と行動

巨人軍の「闇」、プロ野球界の「闇」

2016-11-16 22:37:25 | Weblog
今年の日本のプロ野球(NPB)は、メキシコとオランダを相手にした侍ジャパンの強化試合で終わりを告げた。最後の試合における、ドームの天井に突き刺さる大谷翔平のホームラン、そしてタイブレークでの鈴木誠也の満塁ホームランは、NPBの明るい未来を象徴する出来事だといえる。

しかし去年の今頃は、巨人の選手が野球賭博に関与した事件が世間を騒がしていた。今年の3月には、巨人と縁の深い清原和博氏が覚醒剤の所持で逮捕されている。本書は、巨人軍の周辺で起きた様々な事件や醜聞を取り上げる。著者は、それらを長く取材してきた週刊文春の記者である。

巨人軍「闇」の深層 (文春新書)
西﨑伸彦
文藝春秋

本書でも取り上げられているが、様々な事件のなかで最も不透明なのが、原辰徳氏が女性問題で脅迫され、反社会勢力と思しき相手に1億円を支払った事件である。このとき原氏のタニマチが球団には無断で対応したことへの反省から、読売巨人は強力なコンプライアンス体制を築いたという。

アンチ巨人の野球ファンからすると、だから巨人はダメなのだという話になる。しかし、これは決して他人事ではないのだ。上述の巨人選手が闇の勢力と最初に接触したのは、遠征先の名古屋や広島だったりする。ということは、そこを本拠地とする球団の選手は大丈夫とは言い切れない。

いうまでもなく、巨人の選手は知名度が高く、収入も多いので、反社会勢力としては利用価値が高い。だから、こうした事件が起きやすい。しかし、それは他球団の選手にとっても、相対的な問題でしかない。12球団で情報交換を緊密にして、事件・不祥事の再発を予防していただきたい。

なお、本書の後半で不思議な話が紹介される。阪神の応援団の関係者が東京に出した飲食店を、巨人のコンプライアンス部隊が応援しているという。仕事上の何らかの事情で関係が生じ、野球の上での敵対関係を乗り越えて謎の連携をしているとは、プロ野球界の「闇」はあまりに深い(笑)。