先週のことになるが,10月24日から26日まで,静岡県掛川市のヤマハリゾートつま恋で開かれた合同エージェントワークショップ&シンポジウム(JAWS: Joint Agent Workshop and Symposium)2012に参加した。全部で100件近く発表があって,なかなかの盛会である。
ぼくが参加したのは「人工社会」関係のセッション。自分の関心に近いものとして,以下のような発表があった:
和泉潔他:可能世界ブラウザとしてのエージェントシミュレーション ~ ターゲットマーケティングへの応用
須藤勇一郎他: マルチエージェントシミュレーションによる政治的意思決定における序数的効用が投票に与える影響分析
小林知巳(発表者は寺野隆雄):エージェントシミュレーションでケースを説明する
最初の2つは,コンビニのID付POSデータ,世論調査という実データを用い,エージェント間の関係は仮想的に構成する。その点でぼくの発表した「消費者生成型広告のエージェントベース・モデル」とも共通する。こういう研究が増えるにつれ,方法論の精緻化が求められるだろう。
一方,最初と最後の報告では,エージェントシミュレーションの結果をいかに「役に立つものにする」かが議論されていたと思う。そのための方法として,和泉先生は「ブラックスワン」を見つけること,寺野先生はシミュレーション結果をケース分析することを提案している。
いずれもマーケティング,政治学,組織論という既存の学問に対するエージェントシミュレーションによる挑戦といえる。元々その分野を伝統的アプローチで研究する人々と対話し,win-win な関係を築けるだろうか・・・という思いが頭をよぎる。ぼく自身はそれが必要だと思っている。
自分の研究分野に近い和泉先生の発表は,相変わらずの華麗な語り口,ブラックスワンを探すという野心的な課題設定もあって,今大会の最優秀論文賞を受賞した。それに刺激されて,マーケティング領域でのエージェントシミュレーションに参入する工学系研究者が増えることを期待したい。
一方,伝統的なマーケティング研究者から見れば,細かいところで気になる点がいくつかある。カウントデータに主成分分析をかけていいのか,購買生起がポアソンなのに比べてブランド選択はあまりに単純化されていないか,マーケティング変数を入れないのはどうか・・・などなど。
つまり,領域科学の側からすると,いかに斬新なアイデアに満ちていたとしても,細かな流儀で問題があると受け入れにくい,ということがある。とはいえ,この研究が本質的にいいたい「可能世界のブラウジング」という提案に目を背けてしまうと,知的な停滞が加速されていくだろう。
工学系エージェント研究者と社会科学の領域別研究者が対話する場として,残念ながら JAWS はあまりに大きすぎる(工学色が強すぎる)。経営とかマーケティングに近い側でこうした研究の場があるといいのだが,工学系に比べあまりに層が薄い。自分自身の研究も力不足。課題が多い。
ぼくが参加したのは「人工社会」関係のセッション。自分の関心に近いものとして,以下のような発表があった:
和泉潔他:可能世界ブラウザとしてのエージェントシミュレーション ~ ターゲットマーケティングへの応用
須藤勇一郎他: マルチエージェントシミュレーションによる政治的意思決定における序数的効用が投票に与える影響分析
小林知巳(発表者は寺野隆雄):エージェントシミュレーションでケースを説明する
最初の2つは,コンビニのID付POSデータ,世論調査という実データを用い,エージェント間の関係は仮想的に構成する。その点でぼくの発表した「消費者生成型広告のエージェントベース・モデル」とも共通する。こういう研究が増えるにつれ,方法論の精緻化が求められるだろう。
一方,最初と最後の報告では,エージェントシミュレーションの結果をいかに「役に立つものにする」かが議論されていたと思う。そのための方法として,和泉先生は「ブラックスワン」を見つけること,寺野先生はシミュレーション結果をケース分析することを提案している。
いずれもマーケティング,政治学,組織論という既存の学問に対するエージェントシミュレーションによる挑戦といえる。元々その分野を伝統的アプローチで研究する人々と対話し,win-win な関係を築けるだろうか・・・という思いが頭をよぎる。ぼく自身はそれが必要だと思っている。
自分の研究分野に近い和泉先生の発表は,相変わらずの華麗な語り口,ブラックスワンを探すという野心的な課題設定もあって,今大会の最優秀論文賞を受賞した。それに刺激されて,マーケティング領域でのエージェントシミュレーションに参入する工学系研究者が増えることを期待したい。
一方,伝統的なマーケティング研究者から見れば,細かいところで気になる点がいくつかある。カウントデータに主成分分析をかけていいのか,購買生起がポアソンなのに比べてブランド選択はあまりに単純化されていないか,マーケティング変数を入れないのはどうか・・・などなど。
つまり,領域科学の側からすると,いかに斬新なアイデアに満ちていたとしても,細かな流儀で問題があると受け入れにくい,ということがある。とはいえ,この研究が本質的にいいたい「可能世界のブラウジング」という提案に目を背けてしまうと,知的な停滞が加速されていくだろう。
工学系エージェント研究者と社会科学の領域別研究者が対話する場として,残念ながら JAWS はあまりに大きすぎる(工学色が強すぎる)。経営とかマーケティングに近い側でこうした研究の場があるといいのだが,工学系に比べあまりに層が薄い。自分自身の研究も力不足。課題が多い。