Mizuno on Marketing

あるマーケティング研究者の思考と行動

2012年後半 研究の抱負

2012-07-01 15:36:50 | Weblog
今日から今年の後半に入ったので,年初に掲げた「研究の抱負」を見直してみる。冒頭で当時申請中の研究プロジェクトへの期待を語っているが,いずれも採択されなかった。原発再稼働や消費税増税をめぐる社会的議論の「沸騰」を見ると,こうした研究の意義は大きかったのだが。

しかし,ソーシャルリスニングの研究については「民間ベース」(?)の共同研究が継続している。データは着々と収集され,ある程度構造も見えてきているが,最難関の「影響があることの証明」をどうするかが残る課題である。既存研究から学びつつ少しでも新しいことをしたい。

繰り越し中の研究テーマのうち「アフィリエイト広告」については助成いただいた財団への報告を行い,ABM の初期モデルについて学会報告を終えた。あとは WCSS2012 に向けてモデルの拡張を行い,論文を書く。他の学会で新たなデータ解析の結果を報告することも考え中。

若い共著者たちに申し訳ないのが「乗用車の重装備」に関する研究だ。論文を書き始めたところで「アフィリエイト」が忙しくなり,中断してしまった。現時点に至っても他の「締め切り」のせいで「復帰」できないでいる。邦文か英文かの悩みも消えない。「喝だっ!」

「クリエイティブな仕事意識と消費行動」については貴重な追加データをいただいたので,まずはその整理から。「鮮度」の高いデータを入手しても,分析が遅れるとまた鮮度が低下する。年内に一部発表したいという「野望」があるが,そうなると理論武装,周辺取材など課題が山積。

「顧客視点のロングテール・ビジネス研究」も昨年発表した予備的研究を前に進めたい。この研究の背景には,ニッチを含む需要の多様性,顧客の成長を視野に入れた CRM を提案するという構想がある。このプロジェクトにとっても,いろいろな意味で残された時間はあまりない(涙)。

まだまだ「在庫」はあるのだが,きりがないのでとりあえずここまで。これ以上課題を増やすのは明らかに愚行だが,新たに夢想している課題もある。それは「教科書」執筆で,これまで行ってきた「自分なりの」講義体系を世に問いたい気持ちがある。需要があるかは不明である。

現状自分を取り巻く制約を無視していえば,今後研究したいことの1つが消費者の「熱狂」である。自分自身を顧みて,なぜ弱小カープを応援し続けるのかは謎である。また,なぜアップルの提供する美しさにはまっていくかも,よく考えると不思議なことである。熱狂は究極の選好である。

したがって,このテーマは「選好の進化」という,自分にとって博論以来の関心の延長線上にある。「熱狂」と「進化」がどのようにつながるのか。そもそも消費者行動にとって進化とは何なのか。関連して,そもそも「複雑系」のビジョンがこうした研究構想にどう役に立つのか。

そう考えると,数年かけてじっくりと文献を渉猟し思索に耽りたい,という思いに駆られる。もちろん当面そんなことは不可能だし,仮にそれができたとして何を生み出せるだろうか?自分の研究も少しは「進化」しているのだろうか・・・複製(保持)と変異と選択の繰り返しのなかで。