本書ははしがきで「マーケティングに関心をもつ学生のうち,初めてマーケティングを勉強する人たちのために書かれています」と述べている。ページ数にして2百頁強,手頃なサイズであるし,二色刷で親しみやすい文体で書かれている。各章には演習問題も用意されている。
では,マーケティングの教科書が多くあるなかで,どのような特徴を持つのか。著者の山本さんは大学院でマーケティング・サイエンスを学び,その後消費者行動研究の研究でも活躍されている。しかし,本書では「戦略論」の視点が強く出ている。そこが意外であり,かつ価値のある点でもある。
第I部の冒頭でSTPについて解説したあと,コトラーの競争地位別の戦略の分類(リーダー,チャレンジャー,ニッチャー,フォロワー)について述べ,ポジショニングの章では主にポーターのファイブフォース・モデルを紹介,4Pの「製品」の章でもPPMやアンゾフが大きく扱われる。
マーケティングサイエンスの「狭い」視点に立つと,ポジショニングというと知覚マップ,製品戦略では製品属性への選好やその最適化が取り上げられがちだが,本書はむしろ経営者の視点に立っている。それは,初学者が経営学の一環としてマーケティングを学ぶには適切な構成だと思われる。
著者らしさが出ているのは「インターネットと広告」を扱っているセクションである。そこはマス広告に関するセクションなど比べてより詳細に,力をこめて書かれているように感じる。それはこの分野が著者の得意領域だということもあるが,時代の流れを反映しているといったほうがよいだろう。
初学者向けに書かれた教科書というものも,時代の変化を反映して着実に「進化」して行かなくてはならない。本書はそうした実践の1つといえる。ご恵投いただいた山本晶先生に御礼を申し上げます。
コア・テキストマーケティング (ライブラリ経営学コア・テキスト) | |
山本晶 | |
新世社 |
では,マーケティングの教科書が多くあるなかで,どのような特徴を持つのか。著者の山本さんは大学院でマーケティング・サイエンスを学び,その後消費者行動研究の研究でも活躍されている。しかし,本書では「戦略論」の視点が強く出ている。そこが意外であり,かつ価値のある点でもある。
第I部の冒頭でSTPについて解説したあと,コトラーの競争地位別の戦略の分類(リーダー,チャレンジャー,ニッチャー,フォロワー)について述べ,ポジショニングの章では主にポーターのファイブフォース・モデルを紹介,4Pの「製品」の章でもPPMやアンゾフが大きく扱われる。
マーケティングサイエンスの「狭い」視点に立つと,ポジショニングというと知覚マップ,製品戦略では製品属性への選好やその最適化が取り上げられがちだが,本書はむしろ経営者の視点に立っている。それは,初学者が経営学の一環としてマーケティングを学ぶには適切な構成だと思われる。
著者らしさが出ているのは「インターネットと広告」を扱っているセクションである。そこはマス広告に関するセクションなど比べてより詳細に,力をこめて書かれているように感じる。それはこの分野が著者の得意領域だということもあるが,時代の流れを反映しているといったほうがよいだろう。
初学者向けに書かれた教科書というものも,時代の変化を反映して着実に「進化」して行かなくてはならない。本書はそうした実践の1つといえる。ご恵投いただいた山本晶先生に御礼を申し上げます。