Mizuno on Marketing

あるマーケティング研究者の思考と行動

サービス産業のグローバル展開~グマ研

2010-11-19 12:48:04 | Weblog
経営学部の大石先生が主宰するグローバル・マーケティング研究会(グマ研),いつもは夜の授業がある曜日に開催されていたが,今回はたまたま水曜の夜に実施された。今回のテーマは「我が国サービス産業のグローバル展開」で,講師はジェトロのグローバル・マーケティング課長である北川浩伸氏。精力的に海外進出企業の調査と支援をされている。

いうまでもなく,日本企業のグローバル化というと,製造業を中心に考えがちである。だが,国内市場に頼っていただけでは成長できないのはサービス産業も同じだ。大手の小売業や外食産業のチェーンがアジアに進出していることはよく知られている。それだけでなく,地方の小規模サービス業者を含む様々な分野の企業が,積極果敢に海外進出している。

サービス産業のグローバル・マーケティングは,理論的に未確立らしい。製造業の場合,グローバル化は製品輸出から始まる。しかし,生産と消費の同時性という特徴を持つサービス産業は,基本的に最初から現地進出するしかない。しかも消費地のど真ん中に。通常,現地には既存企業があり,競争は激烈になる。国内産業を保護する規制もある。

サービス産業の海外進出において最重要な要素の1つはいうまでもなく人である。そこで懸念されるのが,最近若者が海外(特に途上国)に行きたがらないという傾向だ。それをめぐるフロアを巻き込んだ議論で面白かったのが,米国でグローバル経営研究が発達した背景に,米国人もまた海外勤務を嫌うという問題があったということだ。

日本のサービスは,ある種のきめ細かさが売り物である。だが,グローバル化には標準化が欠かせず,チェーン店が成功している背景にはそれがある。日本のホテルがグローバル化に失敗した理由を伺うと,北川さんはやはり標準化の失敗が一因ではないかと指摘された。だからというべきか,東横インなどは順調に海外進出を果たしている。

きめ細かな高品質なサービスと標準化のトレードオフ・・・ そう書くと教科書的に響くが,問題はやはりそこに帰着するということだろう。日本車の成功には製造品質面での標準化が大きく寄与している。しかし,いま日本車が直面しつつある限界は,ブランディングやサービスのような非モノ的な品質での標準化に関わっているように思える。

日本企業のグローバル・マーケティング
グローバルマーケティング研究会
白桃書房