前期の3年生のゼミでは,アイデア発想の本を何冊も輪読した。そしてチームごとに,それぞれお気に入りの手法を使って与えられた問題を解決することを夏休みの宿題とした。その成果は,9月のゼミ合宿で発表してもらう予定である。ここでは,ゼミで読んだ主要な本を紹介することにしたい。どれもこれも有名な本ばかりだが,その筆頭に来るのが,ジェームス W.ヤング『アイデアのつくり方』である:
この本の原著("A Technique for Producing Ideas")は1975年に発行されている。非常にコンパクトな本で,しかもその半分近くを竹内均氏の解説が占めている。本書の主張の要点は,アイデアとは既存の要素の組み合わせであること,そしてアイデア生成には無意識の力が大きいということだ。前者の考え方はシュンペータ,後者はポアンカレまで遡ることができる(あるいはそれ以前・・・)。
本書の興味深い点はもう一つあって,思いついたアイデアの断片をカードに書いて並べ替えるアプローチが提唱されていることだ。竹内氏が指摘するように,これはまさに KJ 法と軌を一にする。ヤング氏(あるいは米国人のどなたかが)がこの方法を独自に開発したのだとしたら,海を越えて同時多発的に KJ 法的手法が登場したことになる。つまり,深く考えると誰もがそこに行くつくということか・・・。
それから20年後に登場したのがフォスター『アイデアのヒント』だ。著者は,上述の本の著者と同様,広告業界で活躍してきた御仁。そして,明確にヤングの本を出発点に掲げながら,より具体的なアイデア発想法を探っていこうとする。本の厚さが2倍以上になっているぶん,事例が豊富で説明が詳しくなっているが,基本的な考え方は同じである。つまり,アイデアとは既存の要素を再構成してつくるのだと。
基本的には同じような考え方に立ちながら,よりオシャレな装丁に包まれているのが『スウェーデン式 アイデア・ブック』だ。いずれも1ページほどにまとめられたメッセージを,絵本を読む感覚で読んでいけばよい。ぼくはまだ目を通していないが続編も出ている。発想法がまさに教えるように,個々の要素をシャッフルして再構成すれば,発想法の本はいくらでも生成できるということなのか・・・。
発想法の画期的なイノベーションはむしろ日本で起きたと思わせるのが,加藤昌治『考具』だ。この本では情報収集や発想の個性的な手法がいろいろ紹介されているが,そのなかに,著者のオリジナルではないが「マンダラート」と名付けられた手法がある。実は,冒頭で述べた課題解決の演習にあたり,学生が最も多く選んだのがこの手法なのである。ぼくはこの本を読むまで,マンダラートなるものを知らなかった。
学生たちがマンダラートをどのように使い,どのような成果を上げたかは,いずれ時期が来たら報告することにしよう(多分・・・)。もちろんこの手法は本書で紹介される「考具」のほんの一部でしかない。著者の加藤氏は,ぼくがかつて勤務していた広告会社でプランナーとして活躍されているとのこと。残念ながら面識はないが,こういう素晴らしい方と同僚だったということを誇りに思いたい。
アイデアのつくり方 | |
ジェームス W.ヤング,今井 茂雄 | |
阪急コミュニケーションズ |
この本の原著("A Technique for Producing Ideas")は1975年に発行されている。非常にコンパクトな本で,しかもその半分近くを竹内均氏の解説が占めている。本書の主張の要点は,アイデアとは既存の要素の組み合わせであること,そしてアイデア生成には無意識の力が大きいということだ。前者の考え方はシュンペータ,後者はポアンカレまで遡ることができる(あるいはそれ以前・・・)。
本書の興味深い点はもう一つあって,思いついたアイデアの断片をカードに書いて並べ替えるアプローチが提唱されていることだ。竹内氏が指摘するように,これはまさに KJ 法と軌を一にする。ヤング氏(あるいは米国人のどなたかが)がこの方法を独自に開発したのだとしたら,海を越えて同時多発的に KJ 法的手法が登場したことになる。つまり,深く考えると誰もがそこに行くつくということか・・・。
それから20年後に登場したのがフォスター『アイデアのヒント』だ。著者は,上述の本の著者と同様,広告業界で活躍してきた御仁。そして,明確にヤングの本を出発点に掲げながら,より具体的なアイデア発想法を探っていこうとする。本の厚さが2倍以上になっているぶん,事例が豊富で説明が詳しくなっているが,基本的な考え方は同じである。つまり,アイデアとは既存の要素を再構成してつくるのだと。
アイデアのヒント | |
ジャック フォスター | |
阪急コミュニケーションズ |
基本的には同じような考え方に立ちながら,よりオシャレな装丁に包まれているのが『スウェーデン式 アイデア・ブック』だ。いずれも1ページほどにまとめられたメッセージを,絵本を読む感覚で読んでいけばよい。ぼくはまだ目を通していないが続編も出ている。発想法がまさに教えるように,個々の要素をシャッフルして再構成すれば,発想法の本はいくらでも生成できるということなのか・・・。
スウェーデン式 アイデア・ブック | |
フレドリック・ヘレーン | |
ダイヤモンド社 |
アイデア・ブック2(トゥーボ) | |
フレドリック・へレーン,テオ・へレーン | |
ダイヤモンド社 |
発想法の画期的なイノベーションはむしろ日本で起きたと思わせるのが,加藤昌治『考具』だ。この本では情報収集や発想の個性的な手法がいろいろ紹介されているが,そのなかに,著者のオリジナルではないが「マンダラート」と名付けられた手法がある。実は,冒頭で述べた課題解決の演習にあたり,学生が最も多く選んだのがこの手法なのである。ぼくはこの本を読むまで,マンダラートなるものを知らなかった。
考具 ―考えるための道具、持っていますか? | |
加藤 昌治 | |
阪急コミュニケーションズ |
学生たちがマンダラートをどのように使い,どのような成果を上げたかは,いずれ時期が来たら報告することにしよう(多分・・・)。もちろんこの手法は本書で紹介される「考具」のほんの一部でしかない。著者の加藤氏は,ぼくがかつて勤務していた広告会社でプランナーとして活躍されているとのこと。残念ながら面識はないが,こういう素晴らしい方と同僚だったということを誇りに思いたい。