Mizuno on Marketing

あるマーケティング研究者の思考と行動

投資しない日本企業:通説への批判

2010-08-06 08:53:33 | Weblog
8/5 付の日経・経済教室「『通説』と異なる日本企業 有配企業の比率,高水準」は深く考えさせる。著者は一橋大学の野間幹晴氏,会計学や企業評価価値を専門とされているとのこと。その結論を一言でいえば,日本企業は欧米と比較して,90年代以降,利益を研究開発や設備投資に回すのではなく,株主への配当に回すようになったということ。その背後に,野間氏は日本企業のリスク回避傾向を見る。

少なくともある時期まで,欧米,特に米国の企業は株主の利益を重視しすぎており,そうでない日本企業はより活発に成長への投資を行ってきたというのが「通説」だった。ところが野間氏は,いまやそれが神話であることを統計データを用いて示す。90年代,上場企業中の有配企業比率は欧米では低下したが日本では一定だった。80年代後半,日本企業は欧米企業以上に設備投資や研究開発投資を減少させた。

その理由はいろいろ考えられるが,野間氏は日本企業(上場企業)がリスクをとらなくなってきたことを強調する。アニマル・スピリットの欠如,といってもよいかもしれない。最近の若者には覇気がない,と嘆く企業人は少なくないが,自分たちにそれをいう資格があるのかどうか。真の株主重視経営とは,配当よりは投資を積極的に行ない,長期的視点で企業価値を高めることなのである・・・そこが大事なとこ。