布施明と言われてすぐに思い浮かぶ歌は、人によって様々だろうが私の場合は
『君は薔薇より美しい』である。79年にリリースされたこの曲はCMソングとして
テレビから頻繁に流れてきたし、音楽を聴くことやレコードを買うことに興味を
覚えた時期と一致するので特に印象に残っている。
後付上等で言えば、この曲は作曲と編曲がミッキー吉野であり、私がゴダイゴを
好きだったのは何度もこのブログで書いてきたので、話の整合性は高まるというものだ。
歌謡曲フィールドの歌手のレコードを買う度量はさほど無かったが、日本のロックの
再発CDを買い進めるうちにLOVE LIVE LIFEに行き当たり、遂に布施明の歌唱を
収録した盤が我が家に来てしまったわけである。(笑)
私が購入したLLLのアルバム「LOVE WILL MAKE A BETTER YOU」は98年に
2度目にCD再発された際のものであるが、そこで聴くことができた幾分エフェクトが
かけられたかのような金属的でヒステリックな布施明の声に随分驚いたものだ。
その盤にはボーナス・トラックとしてアルバム・タイトル曲のライブ・テイクが収録
されていた。いつかこのライブ盤を聴いてみたいと思っていたのだが、遂にそれが
CD化された。
それが掲載写真の「日生劇場の布施明」である。恐るべき声量なのに甘く深い声で
ニルスンやフランシス・レイ、バカラックの曲を歌い、ライブ盤の後半では自身の
オリジナル曲を歌う。歌謡曲のショーに取り込んでも違和感の無い洋楽カバーは
この時代ならではだが、バックを務めるのが水谷公生や柳田ヒロのLLLであるのが
肝で、それ故に私はこの盤を手にしたのだ。
ロック者にとっての目玉はやはり『LOVE WILL MAKE A BETTER YOU』だろう。
曲の導入で客をリラックスさせ参加させるための軽いMCも今聴けば凄い(笑)のだが
何といっても曲に入る前のカウントで、それまで聴くことの出来なかった感じで
荒々しくシャウトする、その一瞬に鳥肌が立つ。続くGFRの『HEARTBREAKER』も
ロック者には嬉しい選曲。
LPだと盤をひっくり返して、この後に『LOVE STORY(ある愛の歌)』が聞こえて
くるのだから眩暈がした人がいても不思議ではない。ああ、『そっとおやすみ』って
布施の曲だったのか、と間抜けなことを改めて思い知りました。なんか、20代の頃
嫌々連れていかれたスナックとかで年齢不詳のお姉さまが歌っていた記憶しか
無かったので。(笑)
いずれにせよ、芸能界とロックあるいはジャズの世界の縺れ具合の不思議さと面白さを
見事に提示するライブ盤である。ああ、『遥かなる影』っていい曲だなぁ。(笑)