「ORK RECORDS SINGLE BOX」でプリックスの7インチを聴いたものだから
久々に引っ張り出したのが掲載写真の「HISTORIX」。プリックスはバンド存命時に
2枚の7インチしか残していないのだが、その全曲にコロンビア・レコードでの
オーディションの為に録音された曲を加えてアルバムの体裁をとってCDで
リリースされたのが02年。
デモ・テープのほとんどは、籠った音でお世辞にも「いい音」ではないが、バンドの
演奏はラズベリーズかバッドフィンガー、いやビッグ・スターのようで琴線を擽る
メロディーが満載である。しかし、76年という時代はこういう音を望んでいなかった。
この手の音は流行に関係なく聞かれても良さそうなものだが、レコード会社は常に
商業的成功を求め流行に敏感である。商売であるから当然なのだが、一過性の流行で
手にした莫大な金で、こういうバンドをフォローする余裕があってもいいのでは
と、昔も今も思う。
レコーディングにはアレックス・チルトンとクリス・ベルが参加している。
プリックスはバンド名であるが実質はジョン・ティヴェンとボーカリストのトミー・
ホーエンのプロジェクトであった。ジョンがチルトンの「BACH'S BOTTOM」を手伝った
繋がりでチルトンがレコーディングに参加し、自身のソロのキャリアを諦めかけていた
クリス・ベルがプロデュースを担当と、微妙ながらもビッグ・スターの影を感じる
ことができる。
書き殴りの三流ポップスと言われるかもしれない。しかし、ビッグ・スターに思いを
馳せるような人なら、プリックスの音に理解を示してくれるのは間違いないだろう。
ジョン・ティヴェンは後に、プリックスをもう少しハードにしたヤンキース(笑)
というバンドでアルバムを出す。私はアラン・メリル絡みでヤンキースを知ったのだが
ここにも美しい連鎖があるのだなあと思わずにいられない。