HARRY’S ROCK AND ROLL VILLAGE

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YOU CAN DO A LOT WITH MORE 100 WOMEN - 33

2014-12-06 19:38:20 | 日本のロック・ポップス

掲載写真はエルザが75年にリリースしたファースト・アルバム「HALF & HALF」。
ポーランド系アメリカ人の血をひくハーフで、72、3年ころにはCMやグラビアで
活躍した人なのだが、私はリアル・タイムでは全く覚えていない。

何故この盤を手にしたかといえば、至極明快な回答が出てくるわけで、つまりは
ジャケ買いである。(笑)気負わずに聴いたのだが、これが一筋縄ではいかない盤で
あった。魅力的な美貌とボーカルである以上に単純なモデルやアイドルが歌う盤とは
重みが違ったことは、初めて聴いた時から今に至るまでその印象は変わらない。

芸能界に入ったのは音信不通の父を捜すためであったという。アルバムのリア・ジャケには
父がいないことが書かれていて、もうこれだけで単に歌わされているだけの人の
レコードではないことが容易にわかる。モデル出身なのに(という表現もおかしいが)
デビュー・シングルの契約先がエレックであったというのも妙に意味深な気がする。

セカンド・シングルは『父よ』のタイトルでトリオからリリースされ、アルバムも
トリオから出た。CD化の際にシングル『父よ』の両面がボーナス・トラックとして
追加収録され、作詞だけでなく作曲もできた人なんだということを知る。

収録された曲はバラエティーに富んでいる。穏やかなフォーク・ロックがあれば
ブルーズ調のものあるし、ブギーもある。アルバムは全体に「喪失」をテーマにしたの
ではと思えるようなトーンで貫かれている。今あるものが無くなること、初めから
無かったものといった違いはあれど、穏やかに時に皮肉交じりの毒が効いた歌唱は
心地よく傷跡を残す。一つ残念なのは曲としてはよくできているはずの『唄は私の
小さな人生』の後半が、個人的には最悪なフォークのコンサートでよくある
エコーソング的になるのが残念で仕方がない。

「何年かかるかわからないが、君の笑い声が泣き声に変わる時がくる」

エルザがそう揶揄した天才少女とは一体誰なのだろう。天才少女が誰でその末路が
どうなったかわかりもしないが、この後アルバムをもう1枚つくりエルザ自身も
おそらくはそれを見届けないまま表舞台を去った。その退場を早すぎると思った人も
いただろう。かくいう私も「HALF & HALF」を聴きながらそう思う一人である。

コメント
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