6月7日、ボブ・ウェルチが拳銃自殺でこの世を去った。享年66歳。
長い歴史を誇るフリートウッド・マックにおいては、話題に上ることの少ない時期を牽引した功績は
実のところ大きいと私は思っている。60年代のブルーズを基調にしたアルバムを出したバンドと
75年の「ファンタスティック・マック」以降の、マス・セールスを記録した時代のアルバムを
出したバンドは、名前こそ同じだがスタイルは大きく異なる。ブルーズからポップスへの変革は
極端なものであったが、そこに至るまでの間に緩衝材のような役割を果たしたのがボブ・ウェルチだと
思うと、彼の果たした役割は小さいものではない。
もっともウェルチは、当時活動に行き詰っていたマックを抜けて自由に活動したいと考え、
実際に脱退するのだが、マックもレコーディング・スタジオを探している最中にキース・オルセンが
録音したバッキンガム・ニックスのデモを聴き、バンドに二人を迎え入れて大成功するのだから
運命というヤツは不思議なものだ。
最初のソロ・アルバム「FRENCH KISS」からのファースト・シングル『SENTIMENTAL LADY(悲しい女)』は
好きな曲だ。マック時代のアルバム「BARE TREE(枯葉)」に収録された曲で、ウェルチのポップな
センスが炸裂した曲だ。B面に収録された『HOT LOVE , COLD WORLD』はタイトなロックンロールで
この曲は米国では次のシングルになった。因みに掲載写真右はスペイン盤。
マックやソロ時代以上に忘れてならないのがパリスだ。
マックのAOR化を嫌って、ハード・ロック・トリオを結成したのがパリスで、ここでは地味ながらもファンキーな
味わいの音を聴くことができる。そのパリスも2枚しかアルバムを残さず、その後ウェルチはAOR色を強くした
ソロを発表するのだから、これもまた不思議な因縁というか歴史の捻じれを感じずにはいられない。
ウェルチが拳銃自殺に至った理由が何なのか不明瞭なのだが、早すぎる死は残念である。