以前、ライブ帝国シリーズとして発売されたDTBWBのDVDを取り上げたので、今回は
それ以外の2枚を。
掲載写真左は75年に日活によって制作されたドキュメンタリー、「ザッツ・ダウン・タウン・ブギウギ・
バンド」。「実録おんな鑑別所」の劇伴を担当した縁で知り合った小原宏裕が、構成・監督を担当。
劇伴担当後、『スモーキン・ブギ』がヒットし、「自分達のバンドの映画を撮りたい」というバンドの
想いを了解していた監督と会社の思惑が一致したために実現した企画ということで、この映画は
実現した。
収録時間は32分と短いため、それほど多くの映画館でかからなかっただろうと想像するが
これが商品化された時(2004年)は、嬉しかったものだ。
当初はDTBWBのツアー・ドキュメンタリーに「ヨーコ」の存在を絡めていく予定が、つくりものの
「ヨーコ」以上に宇崎達の日常が生々しく、リアルなノンフィクションにフィクションは対抗できないと
いうわけで、仕上がった映画は実にスリリングだ。多少のハッタリや粋がりは、御愛嬌。
ツナギに対する正当な思いいれを語る口調は真剣そのものだし、ベース・キャンプやストリップ劇場、
場末のバーといったシチェーションにハマる、或いはそこから生まれた曲を演奏するタフさには驚くばかり。
本編とは別に宇崎による回顧録のようなインタビューがあり、そこで宇崎は「世間は、
いつまでもブギウギを求めていたと思うが、そればかりだと退屈で違う事をやりたかった。
よって後半のDTBWBはどんどん変わっていくが、それがなければ今の俺はいなかった。」という
趣旨の発言をしている。
確かに同じ路線でいけば、しばらくはそれなりに売れても忘れられるのも早かったのではないかと
思うし、そうでなければ「横須賀ストーリー」「想い出ぼろぼろ」「硝子坂」なんて曲も世にでなかった
かもしれない。
ライナーには、シナリオも掲載されていて、それがどんなふうに変わっていって本編が出来たかを
比べるのも一興。
掲載写真右はライブ帝国シリーズで、バンド名にファイティングが入った時代の演奏を収録。
冒頭の泉谷しげるカバー『春のからっ風』は演奏のまとまりを欠いているような感じもするが、
全体に全盛期より、作為的に露悪的であろうとする感じがして、これはこれで面白い。
セックスとドラッグに堕ちた都会の生活者を描き切った曲は、それゆえになかなか受け入れられない
ことをわかっていながら、敢えてそれに挑んだ宇崎の挑発的な態度は刺激的すぎる。
『シャブ・シャブ・パーティー』では、かつてのルー・リードのように静脈に注射器をうつアクションが
あるのだが、カメラが絶妙にアングルを外すのが却って想像力を逞しくさせ、面白い。
ジャックス・カバー『堕天使ロック』も違和感無く収まっている。
DTFBWBに関しては、他に出して欲しい映像があるのだが、まずはオリジナル・アルバムと
ライブ「海賊盤」のCD化を待ちたい。