HARRY’S ROCK AND ROLL VILLAGE

お気に入り音楽の紹介と戯言

WAITING FOR THE LIGHT

2012-06-07 19:42:04 | 日本のロック・ポップス

今も現役で活動しているバンドに対して失礼な物言いになるが、90年代の日本のロックを
云々する時、或いは日本のロックの中でサイケデリックという範疇を云々する時、dipもしくは
ヤマジカズヒデという文字は大文字で記されなければならないと常々思っている。

そんなdipのトリビュート盤「9 FACES」がリリースされた。
私にとってトリビュート盤を購入する最初の動機は、当然ながらトリビュートされるバンドや
ミュージシャンを気に入っていることが第一で、その次が参加した面子である。
今回のトリビュート盤も気になる名前がちらほらあったので、購入と相成った。

トリビュートというのは、普通は後進が先達を敬ってするものだが、今回は先達にあたる
「花田裕之・井上富雄・池畑潤二」が参加し、尚且つ取り上げたのが、dipの前身である
DIP THE FLAGの曲『SLUDGE』であるというのが、なんとも面白い。

    

個人的に一番気に入ったのは近藤智洋の『13階段の荒野』。もともとdipのレパートリーの中では好きな
曲なので、この曲を選んだ時点で1/3くらいは勝利を収めたも同然(笑)なのだが、今回のカバーの
アレンジがまたよかった。ピアノを含むほとんどの楽器を近藤が演奏しているのだが、ギターを
ピアノに置き変えた音がとてつもないリリシズムを感じさせ、その歌詞を見事に解釈した歌唱とともに
胸に響く。全トラックの中でベスト・カバーだと断言したい。

自身のトリビュート盤なのに、全9曲の収録曲中1曲ならず2曲も名前を連ねたのは、ヤマジの
「俺トリビュートを締めくくるのは、やはり俺」という気分の表れなのか、或いはトリビュート盤を買った
ファンへのサービスなのか。

ザ・バースデイのチバやクハラにヤマジを加えたdip JAPANは、今回限りのプロジェクトなので、
チバのファンにも見逃せない盤になったであろう。ヤマジ自身は『GARDEN』をカバー。ヤマジが
ニール・ヤングのことを好きなのは、彼のソロ・アルバムでのニール・ヤング・カバーを聴けば
明白で私はその解釈が好きなのだが、今回は曲のアレンジが皆が好きな70年代のニール調で
なんともニヤけてしまう。

それにしても『13階段の荒野』といい『GARDEN』といい、この2曲がミニ・アルバム「13 TOWERS DIP」に
収録されていることを踏まえれば、廃盤になって久しいこのCDが2イン1仕様であるものの、先日再発
されたことは実に喜ばしい。

dip(ヤマジカズヒデ)が発表した全音源を入手するのは現在ではとても難しい。何しろ自主制作での
CD-Rが山ほどあるのだ。それでも、たまたま店頭で目にした1枚を手に取り聴いたならば、
眼前には気が遠くなるような荒野が開ける。そして、その盤を気に入り何度も繰り返して聴けば
それでいいのだと私は思っている。

   因みに私が一番好きなdipの曲はこのシングルである。

コメント (6)
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