HARRY’S ROCK AND ROLL VILLAGE

お気に入り音楽の紹介と戯言

タージ・マハル旅行団 / 「旅」について

2008-12-21 19:51:10 | 日本のロック・ポップス
5,6年前の夏、ネット上で「タージ・マハル旅行団」がライブを行なうかも
しれないという書き込みを見た。「このご時勢にまた物好きな・・・」と
思いつつも、「野外でのんびり聞ければいいな。」と思ったのも事実。
噂レベルの書き込みは、やはり信憑性の無いもので文字通り真夏の「昼」の夢と
なって消えた。
活動期間も短く録音物もそれほど多くないタージ・マハル旅行団の映像が
あることを知ったのもその頃である。いつか見たいなあと思っていた
その映像こそ、こうしてDVD化された掲載写真の『「旅」について』である。

一切の演奏の取り決めをしない即興演奏・・・。
今の私には最も興味の無い演奏形態である。ロックのライブというのは
演奏者と客が共有できるものが多いほど、幸福な実りが多いという考えに
基づくからである。それは例えばライブにおいて「知っている曲」や
「知っているメロディ」を確認したいという客の甘えに寄りかかる部分の
比重の割合が大きくなってきていて、それに応えないと多くの集客が
見込めないという現実問題がそうさせるのかもしれない。
「何年何月何日の誰それのノイズは凄かった」といっても話にならないだろう。
しかしながら、タージ・マハル旅行団の存在意義の大きさを認めないほど
狭量ではない。

音楽的リーダーの小杉武久のヴァイオリンが中心になっているのがいいのかも
しれないし、自然音や石や木の音を生かすという発想が気に入っているのかも
しれない。石や木の音を生かすということは他の楽器が無闇に大音量で
演奏しないことを意味している。それゆえ聴き手はそれほど多くない音数で
奏でられる「音楽」に集中せざるを得ない。いつ終わるともわからない音楽が
心地よければ、例え耳に残る歌やメロディが無くてもそれに勝る物は無い。

即興演奏ゆえに世界で演奏することが出来ただろうとは言え、71,2年当時に
これだけの映像を残すのがどれほど大変だったか、容易に想像がつく。
日本を出て欧州からインドへ向かう旅の様子と、行く先で行なわれた演奏の
断片を見る事が出来るだけで素晴らしいものだ。
ドン・チェリーと演奏するシーンは映像と音がシンクロしていないようにも
思えるが、インタビューを含めて記録されていると言うだけで価値がある。
欧州での演奏旅行が終わり、タージ・マハルへ向かうメンバーは3人になり
人前で演奏するシーンはこれ以降無いのだが、映像に合わせて音楽は
流れているし、何より3人の映像を見ているだけで音楽が聞こえてきそうな
気にさせるのがいい。
尚、今回のDVD化にあたり、当初の映画には無かった冒頭と最後の映像が
同じという編集が施されている。

永遠に鳴り止まない音を探せ・・・。
コメント
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