脈絡は無いけれど・・・

掲載写真はフランスのテレビで放映された様々なバンドの映像を
寄せ集めたブートレグＤＶＤ。番組も時代もバンドも特に何の脈絡も無く
収録されているのだけど、なかなか貴重なものが多い。
昔は英米やドイツでのテレビ番組でロックを取り扱った物がブートレグの
対象になっていたが、近年はあの「POP2」を例に出すまでもなく、
フランスの番組もオフィシャル並みとは言えないが、綺麗な映像で
見る事ができるものが多くなった。

１曲しか収録されていないが、フレイミン・グルーヴィーズの映像は
初めて見た。チャック・ベリー・ナンバーを演奏する様は、シンプルながら
いかがわしい雰囲気を漂わせている。
ＭＣ５は過去にもっと悪い画像のビデオで見たことがあるが、ここまで
綺麗なのは初めて見た。曲目は全く違うがオフィシャル発売されたＤＶＤ
『SONIC REVOLUTION』のボーナス映像なんか話にならないくらい鮮明な画像だ。
カラーで収録された「TONIGHT」も初めて。途中で切れるのだが
そんなことは些細なことに思えるくらい素晴らしい映像。
この豪華な面子の中で地味ではあるが、オブリヴィオン・エクスプレスの
映像も貴重なのは言うまでも無い。

ヤードバーズも熱心なファンは過去に見たことがあるだろうが、なかなかの
高画質で二つの番組から収録されている。ベックがギターでペイジが
ベースを弾く編成で３曲、ベックが抜けてペイジがギターを持った映像が
３曲収録されている。ペイジさんはベースを担当していた時代から
アクションが大きい。（笑）ペイジがギターを弾く映像は、キース・レルフの
表情が今までと全くのが興味深い。口髭を蓄え、笑顔が全く無く疲れた
ような表情は、この後にバンドが空中分解することを悟っているかのようで
袂を別つペイジの溌剌と自己主張する演奏振りと対照的だ。
この時の映像は「BOUTON ROUGE」という番組からのもので、白黒画像なのだが
ほぼ同時期の同番組にピンク・フロイドが出演した時の映像は、鮮明な
カラー映像で見る事が出来るので、もしかしたらカラーの映像が
あるのではないかと期待してしまう。

キンクスは６５年７月のパリでのライブ。ブートＤＶＤのタイトルに
偽りありということになりますね。（笑）これは昔のキンクスの数ある
コンピレーション・ビデオやＤＶＤにも収録されていなかったと思うので
近年発掘された映像だろう。尤も最近はキンクス名義のブートレグに
手を変え品を変え収録され始めたけれど。若きキンクスと観客の熱狂は
荒々しく暴力的で、この時期ならではの映像だ。ライブの１曲目が
デイヴ・デイヴィスのボーカルでスタートするって一体・・・。（笑）

ピンク・フロイドの「アーノルド・レイン」の映像も珍しいのでは。
フロイドの映像を集めたコンピレーションＤＶＤに「LET'S ROLL ANOTHER
ONE」という２枚組があるが、そこに収録されているプロモ映像は
お面を被ってマネキンを抱え、海辺で飛んだり跳ねたりする映像だ。
これは日本のＭＴＶでも見る事が出来た。ここに収録されているのは
その２枚組ＤＶＤでも見る事ができない映像で、屋外でロジャーとシドが
取っ組み合いをする横を歩き回るリック・ライトに棒立ちのニックというのが
まず可笑しい。うなだれていたかと思うとキメの部分をリップ・シンクする
シド・バレットの格好良さに誰もが見惚れるだろう。全体の構成もなかなか
よく出来た映像で、「LET'S ROLL・・・」で見られる映像よりこちらの
方が数倍格好いいと思うのは私だけでは無いだろう。

適当なコンピレーションではあるが、収録されているのはどれも好きな
バンドなので私には価値のある１本となった。