HARRY’S ROCK AND ROLL VILLAGE

お気に入り音楽の紹介と戯言

JUDEE SILL / SAME

2005-05-21 23:32:33 | ROCK
71年発表の1ST。
生前は2枚のアルバムをリリースしたのみで、
35歳で夭折したその波乱万丈の生涯への思い入れと、
残されたアルバムの内容の良さから、好事家の間では大切に
聴き継がれてきたアーティスト、ジュディー・シル。
ニック・ドレイクとローラ・ニーロの魅力を併せ持つ
といえば、解っていただけようか?。
声や楽曲は私好みなのだが、歌唱に際しブレスがやたら
目立つところが気になる。これが気にならなければ、もっと
声高におすすめするのだが、些細な問題かもしれない。

彼女の家庭環境は複雑であった。父親がバーを経営していたため
子供の頃からそこにいることになり、様々な喧騒や違法な出来事、
両親の過度の飲酒といった場面に直面する。
8歳のときに父を失い、母親の再婚相手からは暴力を受ける日々。
学校を退学になり、盗みとドラッグ漬けの生活を送るようになり
刑務所に入ることにもなる。唯一の心の支えだった兄、そして
母親も次々に病死する。この時点でジュディはまだ19歳。

劣悪な環境の中で育った唯一の財産はバーにあったピアノを
弾く事を覚えた事であった。優れたソングライターであることを
認めたのはデヴィッド・ゲフィンで彼女はアサイラム・レーベルから
リリースされる第一弾のアーティストとなる。
ピアノ、ギターの弾き語りが主なスタイルだがとにかく曲が
絶品である。「THE LAMB RAN AWAY WITH THE CROWN」「LADY-O」
「JESUS WAS A CROSS MAKER」と続く流れは何度聴いても
胸が掻きむしられるほどの感動を私に与えてくれる。

過度のドラッグ使用、交通事故による脊髄損傷とその処置ミス等の
アクシデントが重なり、2枚のアルバムを出して表舞台から消え
79年にオーバードーズで亡くなるのだが、それは精神的不安と
怪我の痛みに耐えるための服用であったという。
ニック・ドレイクもそうだと思うが繊細ゆえに、彼女もまた
人より多くのものを短時間に見てしまったのかもしれない。

ライノ・ハンドメイドは限定5000枚で2枚のオリジナル・アルバムに
大量のデモやライブ・テイクをボーナスで収録した盤を発売している。
日本でもCD化されているが、購入するなら断然ライノ盤だ。
そして、驚くべき事に74年に録音していた幻のサード・アルバムまでが
CD化された。このサード・アルバムはエンハンスド使用で73年の
ジュディのライブ映像を見ることが出来る。グレイト!!!。
大量の文字からなるジュディ自身、関係者の発言も興味深いが
ジュディ自身の公式発言は72年までのものしかない。
今回紹介した1ST、そして2枚目、幻の3枚目の全てがお奨め。
まずはこの1枚目を聴いて欲しい。
ジョニ・ミッチェル、キャロル・キング、ローラ・ニーロらの
評価に対し、ジュディ・シルが如何に過小評価されているかを
あなたの耳で確認していただきたいのだ。


コメント
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