大河ドラマ「新撰組!」の山南役から注目していた堺雅人の映画の主演が続いているが、全部観るつもりはなく、これならばといいかなぁという作品を選んで観る。「南極料理人」はよかった!「ゴールデンスランバー」は冤罪サスペンス物ということでまぁいいかなぁと観てみたら・・・・・・。
【ゴールデンスランバー】
以下、MOVIXサイトよりあらすじ等を引用、加筆。
<あらすじ>
「伊坂幸太郎の同名ベストセラー小説(Wikipediaの記事)を、「アヒルと鴨のコインロッカー」「フィッシュストーリー」に続き中村義洋監督が映画化したサスペンス」
「凱旋パレード中に首相が暗殺された仙台、宅配ドライバーの青柳(堺雅人)は、久々に再会した大学時代の友人(吉岡秀隆)の謎の言葉を聞いた直後、警官から突然銃を向けられる。訳もわからず逃げ出した彼は、身に覚えのない証拠と見えない力によって無実の首相暗殺犯に仕立てられていく。絶体絶命の中、青柳は大学時代の仲間たちに助けられながら逃亡を続けるが・・・・・・」
あまり現代小説を読まない私は伊坂幸太郎という名前も初めて認識したくらい(^^ゞ興味がないことは視野に入ってこない方かも(笑)
政争の中で首相が暗殺され、その犯人に仕立て上げられる宅配ドライバーの青柳。妻の借金帳消しの代わりにその先棒を担いだ友人が、「お前、オズワルドにされるぞ」というわかりにくい言葉を使いながら必死に状況を説明し、逃げて生きろというメッセージを受け取って同乗していた車を出た途端に爆発炎上。その殺人の罪も負わされての逃亡が始まる。
なかなか緊迫感たっぷりで面白いスタートだ。数年前にアイドル凛香(貫地谷しほり)を助けて一躍注目されたとにかく人のいい男が、わけのわからない状況に追い込まれてパニクって情けなく、それでも友人たちや関わる人達が放っておけずに助けたくなるというキャラクターに堺雅人ほどハマル役者はいないだろうと思える。
オズワルド=ケネディ暗殺犯だが、本当の犯人は別にいてその身替りにされて消された男ということだが、警察は首相暗殺犯が逮捕できなければショットガンで撃ち殺してもいいという乱暴なやり方をおしすすめる。香川照之が主人公を追い詰める警察陣の指揮をとるのだが、これまた偏執的でいい。ところが最後になって、本当に犯人だと思っていたのが間違いだったと県警本部長(竜雷太)の一言で気づかされるところは実に皮肉が効いている。
青柳の無実を信じ、逃亡を助ける人たちとのドラマも実に面白い。タイトルの「ゴールデンスランバー」はビートルズの名曲由来らしいが、彼らのベストアルバムの赤と青バージョンに入っていない曲は知らないので初めて聞いたように思うし、私にはその曲への思い入れができない。とにかく大学時代のサークル仲間が信頼に結ばれていた共通の懐かしい思い出の象徴になっている。
その中の一人が指名手配中の通り魔殺人犯のキルオという設定が現実離れしている。演じる濱田岳はTVドラマの「3年B組金八先生」での生徒役が印象深く、彼のイメージで書かれた役らしく、その存在感も魅力のひとつになっているのだろうと思うのだが、やっぱりなぁ。
青柳の父役が伊東四朗で、マスコミの批判にも屈せずに息子は犯人ではないと言い切って、とにかく「チャッチャと逃げろ」というのがキーワードのようだった。
主人公は地方マスコミに公開取材をさせて無実を訴えようとするが、それも失敗。そこからはとにかく逃げる。彼を助ける人たちもとにかく逃がす。
その先は?青柳は逃走の末に海に浮かび、濡れ衣を着せようとする巨悪は暴かれなかった。ところが青柳は社会的には死んでも生きていた。途中でも出てくるが「整形」もまたキーワードになっている。彼を心配する人達には生存を知らせるので観ている方も少しは落ち着くのだが、なんだなんだ?この結末の肩すかし感にびっくりする。
感想未アップの「崖の上のポニョ」と同じエンディングの疑問「主人公の戸籍どうすんだよ~」(笑)(まぁ、戸籍と住民票でダブル管理している国は日本とその旧植民地国くらいらしいので戸籍制度も見直していいとは思っているのだが・・・・・・脱線m(_ _)m)
確かに、巨悪とは闘い切れるような状況ではない。だったらせめて「生き残ること」が庶民のとるべき最上の手段なんだろうなぁというように思うようにした。そうして初めてなんとなく落ち着いた。まぁ今の世の中的にはアリだろうねぇ。
しかし、カタルシスがないまま終ってしまうので、私的には好みではないかなぁ。
以上、ようやく書けた感想でしたm(_ _)m
<他の出演者>
竹内結子、劇団ひとり、ベンガル、相武紗季、大森南朋、ソニン、柄本明、香川照之、永島敏行、木内みどり、他
写真はこの作品のチラシ画像。
「?」でしたが、映像の迫力で・・・
まあ、いいっか~~~♪になりました!
迫力あって面白かったですよね~!
>まぁ今の世の中的にはアリだろうねぇ。
そうそう!これから、こういうなんとなくスキッとしないけど
まあアリか・・っていうの増えてくるんじゃないでしょうか?!
時代についてけるかなあ・・・(笑)
「のだめカンタービレ 最終楽章 」と 「Dr.パルナサスの鏡」 を観ました。
いかに「逃げ延びる」かというところに
主眼の置かれた作品ですね。
どうせ、黒幕は 新首相になったエビハラ陣営なのだし、
工作する方としては 海で上がった遺体が 本当は
誰であろうと構やしない...
描かなくても分かる部分は 見事に割愛して、
「逃げる」に焦点を当てたのが面白い。
ハラハラしたり 伊東四朗の台詞や花火に
ホロッとしたり...登場人物も過不足がない。
時間軸が交錯する組み立ても、見せたい事柄が
はっきりしていて エピソード一つひとつに
ちゃんと意味があって ぴたーッと嵌っている。
中村義洋作品の特徴だろうと思うけれど、
整合性があって 丁寧に撮る監督という印象です。
生き延びはしたけれど、顔が変わってしまっている...
切なさが残ります。
そんな感想を持ちました。
私は曖昧な部分も含めてこの映画、結構好きでした。
ミステリーというより青春映画のようでしたが。
>ところが最後になって、本当に犯人だと思っていたのが間違いだったと県警本部長(竜雷太)の一言で気づかされるところは実に皮肉が効いている。
ここはちょっと私は見方が違っていて、香川照之の警視正は巨悪側の息のかかった人間で、最初から青柳を犯人に“仕立て上げる”側だったと思います。だから整形をした偽者の存在も百も承知。口封じのために青柳本人を射殺したかったのではなかったのでしょうか。
逆に竜雷太の県警本部長の方は命令されてのでっち上げに付き合い切れなくなったための発言と受けとりました。
ま、そんなふうにどちらとも取れるところにこの作品の緩さがあるのかもしれませんが。
返事が大変遅くなってしまってごめんなさい。できる限りTB返しと皆様のブログへのお返事を先にさせていただいているのですが、恐縮至極ですm(_ _)m
★「月明らかに星稀に」のかずりん様
とにかく巨悪はあばかないっていう結末にビックリしてしまって、このドラマをどうやって受け止めるかにしばらくかかってしまいました。首相暗殺の首謀者は次に首相になったヤツの陣営だろうなぁというのが臭ってくるくらいでした。
巨悪にどうしても立ち向かえない場合は、逃げおおせても生き残るのが正解。明石屋さんまの「生きてるだけで丸儲け」ってことですかねぇ(^^ゞ
本当に時代についていくのが大変に思えてきました。まずは「生きてるだけで丸儲け」、その次に何をしようかってことでしょうか。
★hitomiさま
>龍馬伝の面々が出ていますね......いま芝居がうまい役者を揃えるとあっちでもこっちでも同じ顔が並んじゃったりするように思います。
「のだめカンタービレ 最終楽章」は感想を書いていますので、hitomiさんの記事がアップされたらTBさせていただきますね。
★mayumiさま
>いかに「逃げ延びる」かというところに主眼の置かれた作品......そうだと思います。ただそれが最初からわかっていれば私は観なかったかなぁとも思います。
>生き延びはしたけれど、顔が変わってしまっている...切なさが残ります......ここの後味があまり好きになれなかったせいもあって、しばらく感想を書かずに反芻していました。
元の話も何も知らないで、エピソードの積み上げの緻密さをなるほどなるほどと観て楽しめたので、それはそれで面白かったのだからよしとしましょう(^^ゞ
★スキップさま
私、実はいま青春ものってあんまり興味がないのです。若い頃の懐かしい時代の感傷にひたることに興味がないのかな。それよりも今つながっているお仲間たちとの関係の方が大事って思ってしまうんです。そのための力になるものを求めているという感じでしょうか。
>香川照之の警視正は巨悪側の息のかかった人間......このご指摘は面白いと思いました。現地の警察には知られないように動いていたのに、県警本部長が気づいていたことを知って「エッ」と反応したとするとそれもまたコワイですよね。
>この作品の緩さ......確かに完璧にくみ上げたパズルのような緻密さの一方、巨悪を暴くというというところに決着しないことに物足りないくせに、香川照之の役にヘンに救いを求めてしまったために私が曲解したおそれがあります。スキップさんご指摘のコワイ解釈の方が面白いと思えます。
★TBのみいただいた皆様
有難うございましたm(_ _)m