ぴか の観劇(芸術鑑賞)日記

宝塚から始まった観劇人生。ミュージカル、ストレートプレイ、歌舞伎、映画やTVドラマ等も書きます。

07/08/19 納涼歌舞伎一部②「越前一乗谷」

2007-08-30 23:59:32 | 観劇

納涼歌舞伎一部2つめの演目は長い舞踊劇なので居眠り防止にイヤホンガイド!眠気にも襲われることなく、けっこう楽しんで観ることができて大正解!!
【越前一乗谷(えちぜんいちじょうがたに)】
本興行では初めての上演で、水上勉が台本を書き上げ、尾上菊之丞が流麗な舞踊劇に仕立てた作品とのこと。あらすじは公式サイトよりほぼ引用。
「越前領主の朝倉義景は、織田信長方に寝返った従兄弟の式部大輔景鏡らに追いつめられ、妻の小少将と一子愛王丸を残して自刃。非業の最期を遂げた義景も壮絶なら、生き残りながらもわが子を奪われ、景鏡や羽柴藤吉郎に引き渡される小少将も地獄。」
今回の配役は以下の通り。
小少将(こじょうしょうと読む)=福助 
朝倉義景=橋之助 愛王丸=鶴松
式部大輔=亀蔵 羽柴藤吉郎=勘太郎
郎党=勘三郎、三津五郎、七之助、松也、新悟、市蔵、高麗蔵、彌十郎

朝倉義景は浅井父子とともに織田信長に討たれ、頭蓋骨の頭頂部を黄金に塗った杯にされてしまった人物というくらいの認識だった。小少将とのエピソードは今回初めて知った。
開幕は尼の姿の小少将が幸せだった頃を回想するところから。米がよくとれて小京都と呼ばれるくらいの栄華を誇った越前一乗谷での朝倉義景の公家のような暮らし。それも優雅な舞で表現される。
それも織田方の軍勢が攻め入ってきて破られるのだが、戦を舞踊で表すというのがけっこう面白かった。朝倉方、織田方のそれぞれの武者たちが馬に乗って駆けていく様子を足でステップを踏む群舞で表現。太棹三味線に乗った舞踊というのも迫力。ご贔屓の葵太夫の語りもいい。双方の郎党の一騎打ちを勘三郎と三津五郎が踊りで見せてくれたのはなかなかの見ものだった。

あえなく敗れた義景は「必ず生きよ小少将」と一族の菩提を弔うためにも生き残るように申し付ける。立腹を切った義景が襖に血文字で辞世をそれも漢文で書き付けるところが凄かった。相当に教養高い人物だったわけだ。しかしながら武将としての才能はあまりなかった感じがする。

小少将は愛王丸の命は助けるという言葉を信じてまずは景鏡の側女になり、次には藤吉郎の側女にされてしまう。北国一の美人だけに勝利者は当然のように自分のものにするのだ。その愛王丸も信長の命令で殺されていたことを知って自害しようとしてできず、その刃で髪をバッサリ切って出家。
最後は小少将が冒頭と同じ尼の姿で出てきて一族を弔う思い入れで幕。アレ、これも「夢幻能」のスタイルをとっているんじゃないかな?!

福助の小少将は美しく抑制もきいていて嘆き悲しむ場面も情感たっぷりで◎!橋之助の義景と並ぶと本当に見栄えがする。兄弟で立女方と立役というのも息が合っていて良い。橋之助は9月演舞場の「憑神」に備えて一部だけの出演。一部は勘太郎も橋之助も立腹を切るという共通性のある演目というのもあらためてスゴイと思ってしまった。成駒屋も中村屋も兄弟でいい役者になっているのがこれからも楽しみ。

勘太郎の藤吉郎はまだまだ雰囲気が出ていない感じだったが熱演。郎党は若手から中堅までずらっと揃って元気に踊っていたのが観ていて気持ちよかった。
台詞もあってきちんとした芝居仕立ての舞踊劇だったので、睡魔が襲ってこなかったのかもしれない。けっこう満足して一部を打ち出されてきた。

写真は歌舞伎座正面の「納涼歌舞伎」の垂れ幕。
一部と二部の間はけっこう時間があったので、小諸そばで冷たい蕎麦を食べ、クレムリに回ってソフトクリームも食べた。ハシゴの備え十分?(笑)
8/19一部①「磯異人館」の感想はこちら