ぴか の観劇(芸術鑑賞)日記

宝塚から始まった観劇人生。ミュージカル、ストレートプレイ、歌舞伎、映画やTVドラマ等も書きます。

07/07/27 夏休み親子のための狂言の会①「二人袴」

2007-08-11 23:59:10 | 観劇

夏休み狂言の会の情報をさちぎくさんのブログで教えていただいて、気軽に狂言デビューをすることにした。7/27金曜日だがフレックスで早上がりして国立能楽堂へ。

あぜくら会の会員割引もあるし、チケットセンターに電話したら脇正面1列目がとれた。ただ、柱に近いのでやはり見えない部分もあり、残っているのも納得した。

国立能楽堂に「紅天女」でお能デビューした時にはなかった「字幕表示機」が入っていたのも楽しみにしていった。日本で初めてのパーソナルタイプの字幕システムということで話題になっていた。最前列の字幕は前の椅子の背ではなく、肘掛の中に「手持ち字幕表示機」が入っていた。それを出して膝の上に置いて見ることになっていた。そして今回は親子のための会だったので、台詞をそのままではなく、おおざっぱに現代語訳した文章が表示された。画面のコントラストもけっこうよかった。機械があったかくなってしまうのが夏だけにちょっと困った。冬は逆にいいかもしれないが(笑)椅子の後ろだとどうだろうか?その体験はまた次回以降。

お子様向きのプログラムにお金を出すのも読むところが少ないので、会場内の書籍売り場で『狂言ハンドブック(三省堂)』を買って、帰りの電車で観た演目のところをしっかり読んだ。

今回は狂言3本立て。そのうちの1本目をまず書こう。
狂言(大蔵流)【二人袴(ふたりばかま)】
あらすじ
聟が挨拶に来そうだというある最上吉日。舅は聟を迎えるために太郎冠者その用意を申し付ける。聟の家では父親が息子に舅に挨拶に行くように言うが、恥ずかしいからできないと言うので、父についてきてもらう。一人で挨拶の予定だったので正装の袴は1つしか持って来ていない。妻の実家の門前まで着て息子に袴をつけるように言うが袴のつけ方を知らないという。ようやく身に付けさせ、挨拶にいかせる。父は門前で待っていることになるが、付いてきた供は家来だと言えと言い含めて行かせると…。なんと太郎冠者が婿の父の顔を知っていた。太郎冠者がそのことを舅に知らせてしまう。婿が父に知らせに出て父が袴を履いて挨拶に伺う。ところが舅は婿がその父と揃わないと杯事はならぬと言う。いよいよ困った二人は袴を取り合ううちに袴の縫い目がさけて前後の2枚に!その片身をそれぞれが前掛け丈につけて後ろを見せないように振舞うことで急場をしのごうとする父と息子。
舅は杯事の後で祝に舞いを所望する。後ろを見られないように苦心惨憺。4人での連れ舞も所望され、舞っているうちに太郎冠者にふたりの事態を気づかれてしまい、面目をなくした父と息子は逃げ出してしまう。舅はそんなことは気にしないでくれと後を追っていき、皆退場。

配役は以下の通り。
シテ/婿:茂山茂 アド/父:茂山千五郎
アド/舅:丸石やすし アド/太郎冠者:茂山千之丞
TVで京都大蔵流の茂山家のドキュメンタリーをやっていたのを途中から見て、観劇仲間のおひとりにビデオも借りてしっかり見たので茂山家の皆さんとは少し馴染みがある気がしていた。今回はしっかり確認もしていなかったので直前に配役を調べてびっくりした。えっ?ご当主自ら次男さんと共演なのね?!

やはり千五郎が立派。あまり息子のできの悪さに嘆きあきれながらも放っておけないという人間味あふれる父親像に引き込まれる。そのあまりにも精神的に幼いまま身体だけ大人になってしまっている息子を茂が好演。実の親子だけに雰囲気もぴったり!婿入り(=挨拶にいくこと)を承知させるために欲しいものを買ってやるからという父とそれに喜んで弁慶(武者だったかな?)の人形を買ってくれという息子の「この親にしてこの子あり」という芝居がありそうでありそうで共感を持った笑いがこぼれてしまう。袴も長袴なので初めてつけた息子がこけそうになりながらも歩いていく様を心配そうに見送るのにもほだされる。
舅が父の挨拶も所望したと戻ってきて交替する時のドタバタも可笑しかったが、二人揃ってと言われた時にはまず自分が正装をと、息子を二の次にしようとする本性が出てしまうところも可笑しい。(それで取り合う末に袴がさけるのだが、流派によっては知恵をめぐらしてわざと割くという演出もあるらしい。)とにかく、この人間の本性が思わず出てしまうというような場面がすごい。
二人揃ってまともな袴でないところがバレないようにする工夫も笑えた。とにかく、この3本立て、いきなりの大笑劇だった。

ドキュメンタリー番組で、千作と名乗って千五郎の名を譲った父の偉業のプレッシャーを乗り越えて茂山千五郎家の当主となった姿を見ていただけに、今回の舞台を観ることができてとても感動。確かご贔屓の会では住んでいる地名を踏まえて「今出川(だったと思う)のジュリー」と呼ばれているそうな。白のスーツが決まっていた!元祖ジュリー贔屓としてもこれは応援しなくてはいけない。
千五郎親子の狂言で狂言デビューができた私はすごく幸運だったと思えるスタートとなった!!

写真は会のおみやげの団扇。終演後、出口で手渡された。絵:ヤマグチタカシと名が入っていたが、チラシやプログラムにも同氏のイラストがあってなかなか可愛かった。
②「附子」「菌」に続く