ぴか の観劇(芸術鑑賞)日記

宝塚から始まった観劇人生。ミュージカル、ストレートプレイ、歌舞伎、映画やTVドラマ等も書きます。

07/02/25 歌舞伎座千穐楽夜の部「仮名手本忠臣蔵」11段目

2007-02-26 01:20:10 | 観劇

昨年9月、文楽の「仮名手本忠臣蔵」通し上演を国立劇場小劇場で初めて観た。
その時の感想はこちら)。

歌舞伎の「仮名手本忠臣蔵」通し上演は今月初めて観た。あちこちのブロガーさんおすすめの関容子さんの文春文庫『芸づくし忠臣蔵』もアマゾンで在庫1冊とあったのを買って目を通してから観劇。
昼の部は18日に観たが感想アップが遅れた。そしてもう今日は千穐楽で夜の部観劇となってしまっていた。充実感あふれる夜の部を打ち出されて帰ってきた。
今日は一番短い最後の討入りの場の感想を書く。そこから大序に戻って書いていこう。

【十一段目 高家表門討入りの場】
《同 奥庭泉水の場》
《同 炭部屋本懐の場》
討入り決行は12月14日。塩冶の浪士たちは47士ということで「いろは」の文字を一文字ずつ書いた札を背に刺した揃いの火事装束に身を包み、高師直の屋敷の前に勢揃いし、暗い中での敵味方の区別のための合言葉「天(あま)」「川」を確認。由良之助率いる表門組、力弥の裏門組に分かれ、由良之介の陣太鼓を合図に討ち入る。
これまでの様式美あふれる芝居と異なり、この場面は実録風といわれるリアルな演出だった。11段目は上演のたびにけっこう違った演出だったらしい。今回の立ち回りも歌舞伎で見慣れた様式的なものではなく、時代劇風のチャンバラ風。
ついに炭部屋に隠れていた師直を見つけ、呼子笛で全員が集まる。由良之介は判官が切腹した九寸五分で切腹をせまるが、師直が手向かいするので首をはねる。首級を槍に掲げて勝どきを上げて、大団円。
今回の主な配役は以下の通り。
大星由良之助=吉右衛門  原郷右衛門=東蔵
小林平八郎=歌昇  竹森喜多八=松江
磯貝十郎左衛門=種太郎  大星力弥=児太郎
高師直=幸右衛門

浪士の竹森喜多八と高家の剣豪小林平八郎との立ち廻りが圧巻だったが、菊五郎劇団系忠臣蔵の名物だという。昭和27年の立師八重之介が振付けたものらしい。互角すぎて剣を投げ捨てて柔道の巴投げのようなものまで入った殺陣だったが、歌昇と松江が気合十分に見せてくれた。
討ち取られる師直を本役の役者がつとめることは珍しいらしく、立派に見える名題さんが選ばれるということで、今回は幸右衛門だった。
夜の部の大星力弥は児太郎で、前の段などでも子どもの台詞回しすぎた。御曹司の子だからとキャスティングの際にどの家のお子をということでバランスをとるのだろうと推測している。しかしながら若手での上演ならよいが、あまりに周りとのバランスがとれていなかったので、私にはかなり物足りなかった。
イヤホンガイドによると、実際の討入りの時に鎖帷子を下に着こむということはされていたが、揃いの装束ではなく、それぞれの自前の着物に暗い中に目印になるように袖口に晒布を縫い付けたのだという。それが黒い着物の袖口の白い雁木模様というようになっていったのだろう。

それにしても敵討ちまでのつらいつらい日々を描いた後で、揃いの衣装で討ち入って本懐をとげるというのはドラマの終幕として観客側にもようやく胸のすく思いをさせて絵にもなる。舞台の終幕としてはここの場面や橋のところの引き上げの場面がふさわしい。浪士の切腹の場面までつきあうとなるとちょっと厳しいものがある。私が「元禄忠臣蔵」を観なかったというのは、そういう場面での終幕を観たくなかったという心境があったのも本音。

文楽といい、歌舞伎といい「仮名手本忠臣蔵」は周期的に通し上演を観たいと思える作品だった。

写真は、今月の筋書の表紙の討入りの錦絵より由良之介部分のアップ画像。
以下、この公演の別の段の感想
2/18歌舞伎座昼の部「仮名手本忠臣蔵」大序
2/18歌舞伎座昼の部「仮名手本忠臣蔵」三・四段目