ぴか の観劇(芸術鑑賞)日記

宝塚から始まった観劇人生。ミュージカル、ストレートプレイ、歌舞伎、映画やTVドラマ等も書きます。

06/09/16 文楽通し上演「仮名手本忠臣蔵」第一部の感想

2006-10-09 23:58:18 | 観劇
昨年9月国立劇場小劇場での「文楽デビュー」から一年。今年の9月は国立劇場開場40周年記念公演の文楽の通し狂言「仮名手本忠臣蔵」。歌舞伎でも観たことがない。せっかくの通し上演なので一気に全貌を把握しようと、二回に分けて三部とも観た。文楽の感想はなかなか気軽に書けなくて後回しになっていたのだが、書かないのは勿体ない公演。簡単ではあるがまずは第一部の感想から書いてみる。
9月文楽の簡単な報告はこちら
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通し狂言『仮名手本忠臣蔵』〈第一部〉
【大 序  鶴が岡兜改めの段/恋歌の段】
《大序》《鶴が岡兜改めの段》
10時30分開演に間に合わず冒頭から観ることができなかったのは残念。顔世御前が登場する前には着席。塩冶判官の妻である顔世御前がなぜ兜改めによばれたのかわかっただけでまずフーン状態。元は後醍醐帝の官女だったので帝が新田義貞に賜った兜を見分けられるのだという。さらに官女には綺麗どころが揃っていただろうから顔世御前が美女であるということ、高師直も横恋慕するのも無理はないというつくりになっているのだった。よくできた話だ。
《恋歌の段》
高師直の顔世御前への言い寄り方がすごくて感心。「くどいてくどいてくどきぬく」とな。そこを救ったのが桃井若狭助。師直はその腹いせに若狭助をいびるのだ。

【二段目  桃井館本蔵松切の段】
若狭助が家老の加古川本蔵に明日の意趣返しの決意を明かす。歌舞伎で勘九郎が若狭助を演じている写真をガイドブックで観ていたのでそのイメージが強く頭にある。気が短い若殿のはやる気持ちの人形の動きに頭の中の勘九郎が重なる。すごくハマっていたんじゃないかと勝手に思う(写真から勝手に舞台を想像するのがけっこう好き)。
よくできた家老の本蔵が若狭助の気持ちを受け止めて支持する態度をみせる。そう見せておいて次の段で若狭助の登城前に先回りして手を打って若殿の暴挙をくじくのである。本蔵が馬でかけつける場面がとてもカッコいい(また文楽の馬というのも歌舞伎の馬とまた違って面白い。一人が下から潜っていて馬飾りがそれを隠すような感じかな)。飛び乗る動きもあざやか~。

【三段目  下馬先進物の段/殿中刃傷の段/裏門の段】
《下馬先進物の段》
師直とその家来鷺坂伴内の主従のやりとりはチャリ場のように楽しい。本蔵が若狭助の引き立てを師直に賄賂つきで頼む。その間にたつ伴内にもちゃんと袖の下。話はトントンとすすみ、その効果は絶大。なんと師直の方から前日の非礼を詫びるので若狭助の意趣返しの意気はくじかれてしまうのだ。
顔世御前の腰元おかるは御前から師直への文使いを頼まれた。ところが勘平と逢引したさに指示されたタイミングより早く主人に届けてしまったという運命のいたずら。内容も知らずに判官が顔世の文を師直に渡す。横恋慕の拒絶を意味する古歌だったのだ。師直は腹いせにさんざんに判官を罵倒。「鮒侍」いびりでついに判官の堪忍袋の緒が切れる。
《殿中刃傷の段》
忠臣蔵の松の廊下の場面は大河ドラマとか古い映画で観たことがあるが、判官が抜刀してすぐに抑えられるというイメージ。今回の文楽の舞台では舞台の奥も廊下の向こうの方というつくり。御簾もぶっとばしてかなり長いこと追い掛け回すという迫力の場面になっていて見ごたえがあった。ここも文楽ならではという場面だと思う。
《裏門の段》
騒ぎの最中の逢引を終えた勘平とおかるが戻ってきて異変がわかって城中に入ろうとしても判官はすでに罪人用の網乗り物で送り出されてしまっていた。
行く手を阻もうとする鷺坂伴内らを勘平は簡単に押さえこみ、主人の敵と成敗しようとするとおかるがとめる。命拾いした伴内のチャリ場もまた楽しい。こういう喜劇味を適宜加えることで観る方は気分がほぐれて有難い。

【四段目:花籠の段/塩谷判官切腹の段/城明渡しの段】
《花籠の段》
沙汰を待って蟄居している判官の心を慰めようと、妻の顔世は大きく桜の花枝をいけた籠を腰元に用意させた。とても綺麗な場面だが、桜は吉凶いずれかの象徴か。顔世は師直への拒絶の仕方が悪かったと自分を責める切ない場面。
《塩谷判官切腹の段》
そこに使いが現れて判官が着流し姿なのを責める。ところが判官は下に死装束を着こんでいたのだった。沙汰の内容は判官のみに切腹という上意。国家老の大星由良之助が来るまではと待つ判官。遂に切腹用の九寸五部を腹に突き立てたまさにその時。由良之助が駆けつけてくる。これがいわゆる「遅かりし由良之助」の場面か。判官は由良之助に短刀を形見に渡して果てる。
蓑助が操る由良之助がここで初めて登場。緊迫感を持った出。客席にも緊張感が高まる。さすがにこれまで観た女方の時の顔つきと全く違うなと思った。
切腹して果てた判官の人形は本当に魂が抜けてしまっていて、その亡骸を下に敷いていた布ごと籠に入れて菩提寺に運ぶ場面はなんともいえないものがあった。
《城明渡しの段》
扇ヶ谷の塩谷の上屋敷は大竹が斜めにかけられて閉門となっている。その屋敷(城と見立てる)を明け渡して去る由良之助。舞台装置はさっと遠景の門塀に変わるところが見事だった。
夜なので写真のように提灯を持っていた由良之助だが、形見の九寸五部をじっと見つめ、それで提灯についた家紋(違い鷹の羽)を切り抜き、それを再び持ち直して去っていく。無言の中に決意のほどが伝わってきていい場面だと思った。

写真は公式サイトより今回の公演の由良之助版のチラシの画像。
追記
夜中にアップしたものを翌日目を通してみると不備なところがいっぱい。もう一度筋書も確認すると間違いもたくさん。恥じ入るばかり。修正を入れましたm(_ _)m
関連の感想記事はこちらですm(_ _)m
9/16「仮名手本忠臣蔵」第二部(五・六段目)
9/16「仮名手本忠臣蔵」第二部(七段目)
9/16「仮名手本忠臣蔵」第三部


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3 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
文楽の笑い (お園)
2006-10-10 23:23:49
歌舞伎と比べて文楽は、うまいこと笑いの要素をちりばめてくれて

笑いを大事に考えるワタクシには嬉しい限りです。

長い道のりですが、2、3部記事も頑張ってくださ~い!

(^o^)/

後ほどTBさせて頂きます!
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TB&コメントありがとうございます。 (かしまし娘)
2006-10-12 10:55:58
ぴかちゅう様、まいど!

TB&コメントありがとうございます。

私は、文楽を先に書き始めたら時間がかかっちゃって、歌舞伎が後回しになっちゃってます~。私こそお恥ずかしい状態です。

記憶は脳みそからポロポロ落ちるばかりだし…。トホホ。

お互いに頑張りましょ~!(笑)



人形って本当に魂抜けるんですよね!イイね~。
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皆様TB、コメント有難うm(_ _)m (ぴかちゅう)
2006-10-18 00:02:50
★あいらぶけろちゃん様

何回もTB返ししてみたのですがうまくいかず。完結編を先ほどTBしてみたら今度はうまくいきました。

ご一緒できた10/8幕見の仁左さまの勘平の感想も書かなければ~!

★お園さま

>文楽の笑い.....私も気に入りました。文楽のチャリ場はかなり楽しいですね。これも人形だから面白さ倍増なんだと思います。

★かしまし娘さま

>人形って本当に魂抜けるんですよね!イイね~。

これがけっこうグッときますよね。立ち回りもかなりオーバーにやってくれるし、人形劇のいいところだと思います。
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