ピアニッシモの統一感を全24曲貫いた 近野賢一 + 岡原慎也「冬の旅」
本日発売のCDである。
シューベルト「冬の旅」作品89 D911 は、ピアニッシモに始まりピアニッシモで終曲する全24曲のミュラー詩に拠る歌曲集。CD1枚に収まるし、1晩の演奏会にぴったりのため、誕生以来「世界で最も歌われて来た歌曲集」である。
近野賢一は中部地方を拠点に活動しているバリトン歌手で、ナマで聴いたことは無い。このCDが初である。岡原慎也が24年ぶりに「冬の旅」を録音した、とのことで購入した。
第1曲「おやすみ」第24曲「辻音楽師」第12曲「孤独」(=第1部終曲、初出版時の終曲)が全てピアニッシモを基調とした曲なのだが、途中で「ffz」が轟く第18曲「嵐の朝」もあり、ここに「山」を持って来る歌手も多い。
近野賢一 は「ffz」を中心にしない。
近野賢一 は「ppp(ピアニッシッシモ)」が唯一現れる第7曲「川の上で」にピークの1つを持って来る
「冬の旅」の行先の寂しさを先行予感する。
岡原慎也が弾くベーゼンドルファー275(92鍵)はウィーンのピアノでシューベルトの美しさを際立たせている。
岡原慎也は近野賢一の先生の1人、とのこと。大学院時代の師とのことなので、長い演奏歴が記されており、息がぴったり。今後も演奏を続けて欲しい。
- 美しき水車小屋の娘 作品25 D795 → pp←→ff
- 冬の旅 作品89 D911 → ppp←→ffz
- 白鳥の歌 D957 → ppp←→fff
シューベルト「白鳥の歌」が聴いてみたい次第である。特にハイネ歌曲!