Piano Music Japan

シューベルトピアノ曲がメインのブログ(のはず)。ピアニスト=佐伯周子 演奏会の紹介や、数々のシューベルト他の演奏会紹介等

新国立劇場バレエ「アラジン」批評(No.1848)

2011-05-03 20:20:13 | 批評
 2年前に「世界初演を東京で行った」上、大成功を収めた、と評判の「アラジン」を聴きに行った。実は私高本は

新国立劇場バレエは、チャイコフスキー3大バレエ + プロコフィエフ2大バレエ しか、ビントレー芸術監督就任以前は聴きに行ったことが無かった


が実績。理由ですか?

初代&第2代の新国立劇場バレエ芸術監督が、ストラヴィンスキー3大バレエ も ラヴェル「ボレロ」「ラ・ヴァルス」「ダフニスとクロエ」も10年以上に亘り1回も上演しなかったから


である。これマジです!


稀代のインプレサリオ = ビントレー を芸術監督に招聘出来た新国立劇場バレエ


  「ビントレー」の名前は、バレエに興味が薄い私高本も何となく知っていた。新国立劇場バレエのチャイコフスキー3大バレエとプロコフィエフ2大バレエの振付はしたことが無かったので、新国立劇場バレエ「カルミナブラーナ」(振付日本初演)「アラジン」(演目世界初演!)の案内を「アトレ」で見ていた記憶が残っている。他には、「コヴェントガーデン王立バレエ」来日公演のチラシに「ビントリー」の表記で掲載されていた。今回英語の綴りを1文字づつ追って同一人物と理解できた。なぜ、表記が違うのかは謎だ(爆
 過去2名の「新国立劇場バレエ芸術監督」は私高本は全く興味が湧かなかった。上演演目の問題が最大である。他の在京バレエ団が上演しているストラヴィンスキー3大バレエくらいは(1演目だけで良いから)上演できて当たり前! と常々思っていたからだ。作曲されてから、ほぼ100年も経過しているからなあ。
 そんな折、昨年10月「ペンギン・カフェ」を聴きに行った。プログラムタイトルに ストラヴィンスキー「火の鳥」が無かったので直前まで気付かず、「アトレ」11月号を読んであわててチケットを購入した記憶あり。初日まで1週間を切っていたにもかかわらず、どの日もガラガラで座席が選べたことも(オペラでは珍しいので)新鮮だった。会場は半分くらいの入り。2日目10/28の公演批評 を書いてあるので興味ある方はご覧下さい。


 「アラジン」は3年前の世界初演が人気高く、今回の再演も「ペンギンカフェ」のような入りではなく、95%の入り。聴衆の心を掴んでしまったことがわかる。
 幕が開くと色彩感豊かなアラビアの市場! 音楽もアラビア風で快速なテンポが心地よい。次から次へと色とりどりの人々が現れてくる様はチャイコフスキー「くるみ割り人形」を思い起こさせるほど情緒豊かだ。第1幕だけで

  1. 昔々のアラビアの市場


  2. 砂漠への旅


  3. 財宝の洞窟


  4. アラジンの家


  5. 王宮の外



と場所がめまぐるしく変遷するのだが、音楽もバレエも途切れる感触なく、次から次へと続いて行くのには感心! どうも過去の名作バレエを研究しているだけでなく

古典派名作交響曲の楽章構成やテンポ設定も研究して構想を練った作品 → 「アラジン」


に感じる。ゆっくりと歌い上げるフレーズもあるのだが、不必要に伸ばさず(私高本の耳には、一流とは言い難いバレエ作品は長過ぎる作品が多い)さっとアレグロのフレーズに移行する。いろいろと奇抜な「煙から人出現」「宙吊り」なども鮮やか! 出てくるキャラクター設定は意表を突く面白さ。「竜」は中国か日本のような気もしたが「日本の聴衆へのサービス」なんだろう、多分(爆

指揮=マーフィー、アラジン=八幡顕光、プリンセス=小野詢子、マグレブ人=トレウバエフ、ランプの精=吉本泰久 全員が素晴らしい出来


であった。

「音楽作り」は全て指揮者マーフィーに任されていてソリストがテンポに食いついて行く、を徹底


が功を奏した。第1幕、特に第1場で主役アラジン=八幡 が遅れ気味だったが、マーフィー は全く手綱を緩めなかった。相手役や脇役陣は「テンポはマーフィーの棒!」がはっきり認識できたであろう。八幡 も第1幕後半以降はきちんと食い付きができていたことを明記しておく。さらに特筆したいのは

東京フィルハーモニー交響楽団 と 新国立劇場バレエ「コールドバレエ」 がこれまでよりも良かったこと!


を挙げておく。「世界初演して、大評判を取った アラジン再演」と言うことで「意気」が格段に高かったように感じる。ストラヴィンスキー3大バレエ世界初演時の「バレエ・リュス」のような感触なのだろうか?


 新国立劇場バレエは「振付師」としてだけの ビントレー を芸術監督に迎えたのではなく「インプレサリオ 兼 芸術監督」として招き、狙いは見事に命中した。来シーズンも ビントレー が「新制作」でオープニングを飾る。これはもう目を離せなくなってしまったではないか!

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