ぱたの関心空間

関心空間と徒然なるままに。

ベンダ・ビリリ!~もう一つのキンシャサの奇跡@京都シネマ

2010-11-17 20:51:56 | 映画感想
スタッフ・ベンダ・ビリリはアフリカ・コンゴ出身。
メンバーはポリオの後遺症で障害を持つ者と路上生活者からなるバンドだ。
今年の秋に来日公演を果たしたが、残念ながら行けなかった。

そんな彼らの海外公演を果たすまでの5年にわたるドキュメンタリー。
ライブに行けなかったのでせめて映画ででも、と思い見に行くことに。

うたい文句では「これは音楽映画ではない」と言っているが、いや、紛れもなく音楽映画でもある。
映画内で使用される(演奏される)彼らの音楽は、深刻なものや切実な現状を歌っていたりするのだけれど、なんだかどれも格好良く、前向きで、そして人懐っこい。これはいい。

コンゴ民主共和国(元のザイール)は世界の中でも最貧国に位置づけられ、長引く内戦のために治安も政治も不安定だと。いや、不安定どころか国土の半分は無法地帯、とまで伝えられている国だ。
そんな国に生活する社会的弱者である彼らの生活は、そりゃぁ地を這うようなものなのだろう。映画の最後にはいっぱしの姿でヨーロッパツアーを回る彼らの姿を見ることが出来るが、スタートは(障害者のシェルターはあるようだけれども)、背中合わせの路上生活。「トンカラ(段ボール)」の歌にあるような生活を地で行く様はなんとも言えない。
そんな生活の中で、さぞ彼らの生活は荒廃している?と思いきや常に明るく前向きな様は、これはザイール人堅気なのか、はたまたリーダーリッキーの人徳か?お手製の車いす(独特な三輪車)や、やはり手製の楽器を持ち寄り、あまりうるさくないからと動物園でバンドの練習をする彼らの、少なくとも表に、暗い表情は見られない。

ただし、確実に彼らのおかれている現状は厳しいのだ。
彼らに好意的な人ばかりではない。メンバーは突然失踪する。お金のトラブル。
綺麗事ではない、リアルな現実がそこにはある。
そういった生々しい現実も包み隠さず映しだすこの映画は、綺麗事ばかりのドキュメンタリーなんかより、よっぽど信用できるってもんだ。「売れて良い生活しようぜ」的な発言だってちょっとゲンキン過ぎてアレだけど、それはそれでリアルな彼らの気持ちに違いない。

いろいろと考える事が出来ると思うのだ。

音楽に酔いたいだけならばライブに行って踊ればいい。それだって悪くない。
#悪くないどころか、それは正しい楽しみ方の一つだね
けど、この映画が教えてくれるのはそれだけじゃぁないってこと。彼らのバックボーンには何がある?現実の世界はまだまだ過酷なものだという事を思い出させてくれるのではないのか?

そして、なによりも圧倒されるのは、やっぱり彼らの明るいポジティブさなのだ。

音楽を楽しむという事。前向きに生きるという事。
それは密接に関係しているように感じられる。いや、もちろん実際にはそんなに単純な事じゃないんだけど。
単純じゃない事をやってのけているヤツらがここにこうしているから驚くのだ。

困るじゃないか、音楽から離れられなくなって。
でもうれしいよね、素晴らしい音楽がこの世界にあふれていて。

邦楽ばかり聞く機会の多い儂に新しい音楽を教えてくれてありがとうですな。うん。

ベンダ・ビリリ!~もう一つのキンシャサの奇跡@京都シネマの画像

ベンダ・ビリリ!~もう一つのキンシャサの奇跡@京都シネマの画像