ぱたの関心空間

関心空間と徒然なるままに。

「戦争は女の顔をしていない(小梅けいと/ スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ / 速水螺旋人)」

2021-03-13 15:57:56 | 漫画
「戦争は女の顔をしていない(小梅けいと(漫画) / スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ(原作) / 速水螺旋人(監修))」1巻&2巻読了。



なんとも的確な感想を言える自信がない。
とにかく読み終わった今、このなんとも言えない重みをどうしたものかと思案にくれる感じ。

とにかくあまりにも知らなさすぎるのだ。当時のソビエトについてもあの戦争についても。そしてもちろん、女性が戦場に出ていたという現実についても。
読んでいない原作の描き方との違いがわからないけれど、断片的な書き方は描かれていることに対して描かれていない空白も多くそれなのに饒舌なのだ。そして儂等が知っている(気がしている)戦争の現実を女性の視点とスターリン時代のソ連という馴染みのない情景との両面から打ちくだく。明らかに儂が今まで見聞きした「日本人」の戦争とは違う世界がそこにはある。でも、人間臭さは強烈にあって、決してどっか知らない遠いところの話とは思えない。(コミックというメディアのなせる技かもしれない)
とにかく、いろいろ考えることのできる(考えなくちゃいけないんじゃないかと思う)材料(しかも今まで目にしたことのないようなヤツ)がドンと目の前に置かれて、どう手をつけたらいいものやら?という感じなのだ。

絵のタッチが優しいだから残酷な感じはあまりしないし、そもそもあからさまに残酷なシーンもほとんどない。けれどそれが逆に過酷な戦争の現実をイメージすることも可能にしている。

一方でオーラルヒストリーの難しさ。最新話(第十三話、3月27日まで公開)で主人公(著者?)が言うように当事者による「書き加え」や「書き直し」が行われていたり、「時代の常識」に影響を受けていたり、シチュエーションによって証言される内容の正確さに違いが出たり、聞いた話を記事にしても後からそれを否定するかのような態度をとられたり(第十一話)。全てがそうとは言わないが、史料による歴史とは異なる点でありだからこそ人間くさく(いいか悪いかは別として少なくとも)物語としては興味深く深みのあるものとなる。

ネット上で更新が続いているので続刊があるのだろう。
原作も読みたいが、続刊もまた続けて読みたい。