ぱたの関心空間

関心空間と徒然なるままに。

ベトナムからの笑い声@東福寺スペースイサン

2009-01-25 12:58:25 | 演劇レビュー
前回の公演は結婚式にぶつかって行けなかったのだ、と言い訳を代表の丸井君にしながら会場に入るのだ。

ちなみに前回の公演から新人さんが入っている。
こんなマニアックな劇団に新人として入る人たち、なんてステキに稀有な人物なのでせう。
それが見られなかったのがちょっと残念であったのが前回。

って、そーいえば、その前々回の公演くらいまで「新人募集!」ってしてたよなー。
ほんでもって「残念ながら新人応募ありませんでしたー」とかいっていたよなー。
募集終わってから新人さん来るとか、ベトナムらしいタイミングだよなー。

まぁ、何がベトナムらしいのか、全く根拠無く言っていますが。。。

さて、今回もオムニバス。
いや、もういっその事オムニバスしかしない劇団という事にしてしまえ(諦)
テーマは「ギリギリ」らしいが、ギリギリじゃなかったことが今まで何回あったのだろう。

じゅんぐりに見て行きますか

ACT;1
「アームストロング将軍」

深夜の悪のアジトでの出来事。将軍が寝返りを打った拍子に手に仕込んだアームストロング砲が暴発。登場人物(怪人)は他に鋼鉄の怪人(重すぎて動けない)、電気女(電気がないと動けないために電源コードをオニのようにぶら下げている)、体中から猛毒を発する怪人(猛毒すぎて点滴をして自分の体を中和しないと自分自身が溶けてしまう)など。改造された為に普通の暮らしが出来ない(というか、より不便な)怪人たちの悲喜こもごも。
この、怪人モノというか悪の秘密結社モノ?好きだねー。いや、見ているコッチも好きだけど。(前々回の公演で「夏恋」再演してくれてありがとう♪) 悪の秘密結社やのにめちゃめちゃ人間くさくて、逆に正義の味方の方が悪者に見えるところがなんとも。
今回のスパイスは淡々と親の七光を多少かざしながら怪人たちの感情を逆撫でする(死神?)博士の息子と、ヒーロー然としながらカワイそうな怪人をいじめるようにしか見えず、高慢ちきな感じが観客たちの感情を逆撫でする美少女戦士。新人さん、まだ、持ち味を十分に発揮してはいないと思うけど、なかなかにいい彩りを添えてくれています。

ACT;2
「バッティングセンター物語(舞台盤)」

一人芝居シリーズの新展開?探偵物語のパクリ?松村君新局面?
バッティングセンターの一角にある探偵事務所と言う設定がわからん、パロディ?低予算の為にドラマ本編はできないので、テーマに併せたストーリーダイジェストにドラマのエンディング部分だけくっつけるという展開はなかなかによろしい。次々ストーリーが進んで行くから、お客さんに疑問を持つ隙を与えないと言う正攻法。
でも御免。野球ネタも探偵物語ネタもあまり分からないの(汗)
とかいいながら3つのアクトの中で一番好きだったのはコレかも。ネタは分からないけど、ナンセンスに突っ走る潔さと悪ふざけ加減はわかります。「盤」の字は誤字?わざと?
一番受けたのは「パッティングセンター物語」

ACT;3
「ギリギリ❤キャッツアイ」

意外とバランスを大切にする(と勝手に儂は思っている)ベトナム。破壊度のデカイ演目はキチンと最後に持ってくる辺りが常識的である。
ってねー、基本この破壊度の高さというのは所謂エログロナンセンスよなぁ(比率としては1:4:5くらいですが、今回の「ギリギリ❤キャッツアイ」の比率がどうかは想像におまかせ☆)。
ご存知美人三姉妹盗賊キャッツアイのその後、そして知られざるその秘密。原作のカッコよさを期待していたら(そしてベトナムがナニモノか、免疫が無ければ)きっと手痛いダメージを受けるであろう内容。なんでも盗み続けていた愛、倒錯している瞳、珍しく内容のインパクトでも十分に勝負。いつもはビジュアルのアクの強さが勝っている事が多いけどね。そのビジュアル担当の泪のインパクトも、力技で押してくる歌のインパクトも突出せずにとてもバランスが良かったのではないかと思う。最後の最後までクールを装う3人の妙演が聞いてるのかもしんまい。
#おそらくこのバランス感覚は世間様とはベツモノです。あは。

おまけ
「奇跡の瞬間」

あれです。修学旅行のバスの中とかでよくやるヤツ。
お客さんが「いつ」「どこで」「だれが」「何を」「どのように」「どうした」ってカードを別々に作って、ランダムに引いて一つの話を作る。できあがった文に天の声が「何故!?」と聞いて、それに作家の黒川君が答えるという趣向。チラシには「演劇ではなくて演芸です」って書いてあったけど、まさに単なるお楽しみコーナーやなぁ。本気で「芝居」を見たいと思って来た人は怒りかねないかも。まぁベトナムをわかって楽しみに来てる人達は喜ぶね。
因みに儂等の回は1回目がうまく行かなくて2回目でうまい事行きました。
黒川君のしてやったり顔がなかなかににくたらしくってよかったっす。

とまぁ、「ギリギリ」をテーマにしていたわりにはフツーに笑えた今回の公演。
っていうか、ここ最近はフツーに笑える事が多くなってきたと思うのだけど、はたしてそれはベトナムにとって褒め言葉となっているのか疑問だ。
そもそも儂自身の感覚は麻痺していると思うのだが、ツレ(今回初観戦)も面白がってはいたし。

もうそろそろ実験的な事はちょっと休憩して、売り出す方向に持って行く?
#そんな気はさらさらないだろうけど(笑)

ベトナムからの笑い声@東福寺スペースイサンの画像

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!wagero!@神戸スタークラブ

2009-01-24 15:16:02 | ライブレポ
ふぁぁぁぁああああ、ホントに解散しちゃうのかい? 本当かい?倭ジェロよ!
開運するというのはあれはウソだったのかい? ねぇウソかい?Drコ○さんよ!

  どうやらホントに解散するのだと悟る今日この頃であります(哀)。
  そして、少なくとも儂らが思っているような開運ではなかったらしいと悟る今日この頃であります(悲)

さて本日を含めてライブは後2回! 泣いても笑っても後2回!

ラストライブは29日の木曜日、神戸チキンジョージ!
月末平日の神戸でライブ!ってなぁ~! ほぼ絶望的です(泣) 

ってなわけでどうやらラストになりそうなイヨカンの本日なわけであります。

ラス2ライブだっつーのに今日はぢつはイベントライブ。
まぁ、それはそれで倭ジェロらしく楽しいものになるにちまいないという予測どおりのライブだったわけで、その点では満足ですけどね。。。けどね、、、けどね...   さ、レポレポ。

ライブスタート16時。
会場到着16時10分(くらい?)

最初のバンド(多分Chaqq)がもう演奏してるかなー?
と思いながらスタークラブの扉を開けようとしたら中から人が!

「しゅ、シュウさん!?」

倭ジェロボーカルのシュウさんが黄色いTシャツ姿で飛び出してきたと思ったら「ども、ども」などと言いながら三宮方面へ颯爽と駆けていった。
よくよくチケットを見てみるとタイトル。

「ラジオ大酋長チクワステーションプレゼンツ『愛は恥丘を救う!』 大酋長の挑戦!新春100マンキロマラソン 果たしてライブ開始までに無事ゴールできるのか!祭り」

。。。。なげーよ
#それよりもこのタイトル、関空の放送コードにひっかからないか心配です(>_<)

で、ホントに走り出してるシュウさん。 ってゆーか、100マンキロって。。。。何故カタカナ<万

中に入るとステージ上では左からヒガシカワウチさん、風次さん(字が違うクサイ)、オオグリさん、松原さんと並んでウダウダ喋ってる。
おお、そういうことか。転換中はこうやって4人でグダグダMCやって喜んでもらおうという趣向なのね。いやん。
多分、ハタから見たら全然面白くも無いであろうグダグダ進行で嬉しくなってしまう儂は、きっと心の底から倭ジェロが好きなんだなーと嬉しく思う今日この頃。。。。変ですか?

てなわけでライブだ。

☆chaqq

初めて聞く若い勢いあるバンド。うん、勢いはある。勢いは大切だよ。と、いきおい勢いだらけのコメントでお茶を濁す。
#スンマセン、まだこの時点でライブモードでなかったので。。。

♪転換中のシュウさん
中継が入る。みんなでコール「しゅーさーん!」
中華街を走るシュウさんの映像。

☆セックスマシーン

情熱と股の間から愛を歌い上げる(失恋の歌のみ)セックスマシーン。どうやらメンバーが固定したらしい。初めて聞いたときはボーカルとドラムだけだったからなぁ。インパクトとMCの勢いばかりが印象に残るバンドだけど、ちゃんと音源で聴いてみたいなと毎度思う。え゛っ、そういうバンドぢゃないですか? ま、まぁいいや。
それよりも、多少解散直前バンドのライブという常時とは違うシチュエーションに多少まごつき気味の森田君がちょっと可愛かった。

♪転換中のシュウさん パート2
その後ルミナリエを走るシュウさん。。。。。って、なんでクリスマスやねん!っつーかなんで夜やねん!なんで中継やのに日付去年の12月やねん!と関東人ならブチギレそうなボケが。。。。。ステキ(愛)

☆スキップカウズ

ちっ、よっちゃんイカ忘れたぜ。
イマヤスさん、相変わらず声が上がらないよー。ホンマにねーイマヤスさんがもっとやる気を出してくれたらとてもいいバンドだと思うんだけどなぁ。カウズの演奏陣は本日もステキです。でも、ベースさん喘息の発作が起きていてシンドイ、ってそれベースなんか弾いてる場合じゃないんじゃぁ!??>儂も一応喘息持ち。
強引なスキンシップタイムは短めだったけど、なかなか美味しいキャラクターが発掘されました。にゃは。

♪転換中のシュウさん パート3
って、まだ夜かいっ!
って、しかもタクシー乗ってるし!!
って、喋ってるけど音出てないから何はなしてるか分かりませんっ!!!
ってゆーか、VTR......ぢゃなくて中継画像暗すぎて実は良く分かりませんでしたが。。。。

☆BLITZ AND SQUASH BRASS BAND

ニューオリンズスタイルのブラスバンド、と聞いたから、ブラックボトムみたいな感じかな、と思っていたらぶらっくぼとむみたいな感じでした。
倭ジェロ結成当時(めるぎぶそんず時代とか)からの朋友ということ。演奏はさりながらMCではストレートに「なんで解散するん?」とか「辞めた後どうするん?」とかPAのところにいるメンバーに投げかける。そうや、正直ファンとしては聞きたいところや。ホントのところどうなん?と。
「いろいろと暴露したろと思ってたけど流石に止められました、まだ1回残ってるしな」 まぁ、ごもっともです(^^
倭ジェロは「鰯系バンド」なわけだけど、やっぱり支柱の一つはホーンズだと思う。このホーンアンサンブルのカッコよさは倭ジェロをただの色物バンドで済ませない存在にしてる重要な要因だ。まぁ儂がブラス吹きだからそういう風に思うのだろうけど。

♪転換中のシュウさん パート4
あのー、次倭ジェロですけど!?
あのー、日付が1月3日になってますけど!?
あのー、Tシャツで雪の中って!?
あのー、しかもお約束でコケてそれでも笑顔って!?

☆!wagero!

というわけで倭ジェロです.....いや!wagero!です(面倒くさいな)
ここにきてスタクラ内ギュウギュウ。動けない、踊れないぞこれは!いや、めっちゃ人気やん倭ジェロ!なんで解散するかね、ホント。
さて、なんとも仰々しいSEと照明演出で登場したのはっ! たった今まで雪面を走っていた(はず)のシュウさん!

ではなく、ワタナベフラワーのクマちゃん!!!やー、くまちゃーん!くまちゃーん!(くまちゃんコール中)
って、おーい! この期に及んでそんなボケかいっ。

適度にい突っ込まれてクマちゃん退場。やり直し。 そして今度は正真正銘登場フクイシュウ!

以下セットリスト
  俺は希望の星
  あなたにラブレター
  キン肉マン Go Fight!
  SEXY SEXY SEXY
  パンチアウト
  花
アンコール-
  彼氏彼女の事情

アンコールでクワダさんが出てきて体に「あの曲やります」って書いてあるし、何かと思ったらこれだ!
っつーか、儂もこの曲聞いたの1回くらいちゃう?なんか記憶の片隅にしかないもの。
ツレが言うには以前は必ずこの曲を〆にやっていたと。ふやー、そうかぁ。

しかし本編で6曲。しかも最新のアルバム以降の曲のみ。
いいよ、楽しいよ、最高に。 でも今の曲をやって楽しいって現在進行形のバンドのライブやん!解散するバンドのライブのセットリストじゃないですよ!(涙目)
たくさんね、聞きたい曲があります。儂のiPodの中にも68曲がスタンバっております。全部とは言わないが、最後にもう少しだけ聞かせてください。お願いだから。

あ~!つまりね、とても7曲じゃぁ足りないって事ですよ!!!(爆)

29日 !wagero!(旧姓:倭製ジェロニモ & ラブゲリラエクスペリエンス その前:倭製ジェロニモ & メルギブソンズ)
     解散ラストライブ@神戸チキンジョージ
                                  デス。

!wagero!@神戸スタークラブの画像

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だいじょうぶであるように -Cocco終わらない旅-@京都シネマ

2009-01-22 09:32:53 | 映画感想
Cocco。

一昨年の音泉魂のレポでも書いたけど、儂は以前Coccoが苦手やった。
苦手と言うよりも、なんだろう。中途半端に触れてしまってはいけないような気がしていたのだ。

今回の映画でCoccoという人を畏れていた理由が分かった気がする。

あぁ、なんとまぁ、
とてつもなくストレート。
もう生半可じゃなくね、その素直さのなんと生々しいことか。

テーマは恐ろしく根源的である。
「言いたい事は一つだけ。生きろ。  生きろ。   生きろ!!。」
映画の終盤近く、広島のコンサートのMCの中での言葉だ。

六ヶ所村で見た姿も、ジュゴンの見える丘も、辺野古の浜も、ひめゆりの乙女達も、ヒロシマも神戸も、全てが生に繋がる問題だけど、あまりに問題は広くそれに向き合い繋げるにはとてつもない時間が必要だ。

ほんでもってそれをストレートに受け止めようとするCocco。
でも彼女は繰り返し言う
「あっちゃん、また何も出来なかった。」と

まだそんな事を言い続けるのかなぁ。

本当は言ってあげたいのだ。
あなたはやろうとしていた以上の事をやってのけているのだと、だからそんなに苦しまなくっていいのだと。
でもきっとその声はとどかない。儂なんかより彼女に近い何人もの人が、既に彼女に言っているであろうその言葉で、それでもまだ彼女は自分自身を楽にする事を許していないのだ。

びっくりした。
彼女へのファンレターには「助けて」と書いてあるものが多いと言う。わからなくはない。でもきびしいよなぁ。
だって、なんていうプレッシャーだろう。彼女は歌い手であり表現者ではあっても、教祖様や哲学者ではないのだ。
悩みをかかえたり苦しんでいる人達が、彼女の歌に救いを求めるのは構わないし自然なことかもしれない。だけれど彼女がそういった人達に応える責任を感じる必要は全く無い。それなのに、彼女はその素直さのゆえに対峙してしまうのだ。

映画はツアーバス(?)の中で黒砂糖をかじるCoccoの姿で始まる。テロップが言う
「この度の中でCoccoが黒砂糖以外のものを口にするのを見る事は出来なかった」と。

エンディングロールで伝えられる。
「5月 Cocco拒食症の治療のために入院」と。

タイトルに反して大丈夫そうに見えないCoccoが辛い。

彼女が今どういう状況なのか儂は知らないけれど、願わくばまた生で聞きたいと思うね、あっちゃんの声を。自由に楽に息をしてのびのびと表現をするCoccoを。

だいじょうぶであるように -Cocco終わらない旅-@京都シネマの画像

だいじょうぶであるように -Cocco終わらない旅-@京都シネマの画像

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ハンサム★スーツ@MOVIX京都

2009-01-07 19:50:02 | 映画感想
塚地いいよぉ~、塚地♪

ドランクドラゴンの塚地さん。
「キサラギ」とか「間宮兄弟」でもいい味だしてたけどなー。
この映画、塚地の為の映画とも言えるのでは?
映画の中の相方である、谷原さんの、「中身はブサイク」という設定の二枚目加減がなんともリアルでステキ☆

全体的に映画の作りはチープだけど、逆に狙っているという事でいいかな。
なにしろナンセンスコメディーですから。
そんなチープさをよそにそのまんま出てくる「洋服の青山」とか豪華ゲスト(?)陣とか。ちょっとちょっとの事がウズウズ来ます。最後の最後に渡辺美里本人が歌っているとか、いいなー。
そうです「My Revolution」はスイッチ入ります! (セーラー服通りだっけ?)

オチ(というか、話の落としどころ)は大島さんが出てきたところで大体想像できたものの、それでも納得できる明快さがいいです。はい。

あと、主題歌もそーだけど、儂ら世代の挿入歌がなかなか。久保田利伸に米米クラブに佐野元春にプリンセスプリンセスにユニコーン。

いやー、でもやっぱりハンサムスーツ欲しいな(笑)
うちの近くの青山は置いてないのだろうか。。。。(ぼそ)

ベタでナンセンスで予定調和で気持ちいいくらいストレートなメッセージで。
とっても安心してみていられる映画ですな。うん。
#褒めてます

そうそう、そういえば儂、ドランクドラゴンの相方さんがどの人だか、未だに分かりません(苦笑)

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青い鳥@京都シネマ

2009-01-07 11:01:49 | 映画感想
もしかしてこれはメルヘンなのかもしれない、と思った。

代用で来た吃音の先生が、すでに撤去されていた、いじめで自殺未遂を起こし転校した生徒の机を教室に戻させる。多くを語らないその先生は生徒・周囲の教員・親などから責められながらも頑なに机を教室に置き続ける。短い期間ではあるが確実に何人かの生徒の心に変化を引き起こす。

ストーリー的にはドラマティックだけれど、果たしてそんな都合のいい事が現実にはあるだろうか?そう感じたのだ。
だからメルヘンだと。

あ、メルヘンって言う言葉を否定的に使うつもりはありませんから、念のため。現実に対してのメルヘンという意味で使っているのです。

ただ、この映画はそんな夢物語で終わるような生易しいものじゃないのだ。
揺れ動く登場人物の姿、シーンの切り取り方は鋭くリアルである。

「原稿用紙5枚の反省文、全教員が読んで合格するまで書き直させた。だからみな十分に反省している」「一人で悩まないように青い鳥BOXをつくる」
学校という現場の事なかれ主義的な側面、偽善的な側面を自然な形でいやらしく映し出す。伊藤歩の不安気な表情はその教育現場の気持ち悪さをわかりやすく演出して見せた。

そして、その学校現場に絡め取られる子どもたち。
学校から強制された反省文で贖罪したと信じ、何事もなかったかのような日常に戻ろうとする。学校自身が「忘れろ」と言うのだから。

しかし、阿部寛演ずる村内先生は一言で言ってのける「忘れるなんて卑怯だな。」

村内先生が伝えるメッセージは2つあったと思う。
「忘れる事は無責任だ」ということ
「本気の言葉には本気で答えなくてはいけない」ということ

どちらも教育現場(少なくとも映画の中の)で忘れられている事である。
それを分かりやすく見せてくれたのだ。

生徒会室でのシーン。
「嫌うだけでもいじめですか?」と真剣に聞く園部君に対しての生徒指導教員の返答。
最低だったでしょ?

もう一つ。

いじめをテーマとして扱う本映画。
いじめが難しいテーマだと思われているのは何故か?

儂は、いじめの問題は基本的に加害者側の問題なのに、どうも被害者サイドからの視点で語られることが多い、というのがいじめの問題をわかりにくいもの(と思わせるもの)にしているのではないか、と考えていたのだ。

いじめられた側ではなくいじめた側の視線。めずらしくそんな映画だった。

この映画では、いじめにあった野口君はあまり出てこない。それよりも中心になるのは、いじめられた彼と比較的仲が良かった為に他の誰よりも良心の呵責に悩む園部君だ。
だけれども彼が重要なのではない。なぜなら、反省する人間は放っておいても反省するし忘れるという事はありえない。
真に反省する必要のある人を反省させることこそが難しい、なぜなら彼らは無自覚だから。

この話で大事なのは、いじめをしていた中心事物、井上だ。
彼は、もう免罪されたと信じ忘れようとしていたのに、野口の机を戻しクラスのみんなを無視して彼に話かけ続ける村内先生に反発し「これは罰なのか!?」と詰め寄る。当たり前だ。

村内先生の行為によって、もう一度いじめの事を考える。
「俺たちホントにいじめてたのか?だってあいつ喜んでいたじゃないか」
押し付けられる反省文とはきっと違う方向からいじめを考え直すきっかけ。

いじめの問題の多くは無自覚にエスカレートする。(それは異論はないよね?)
だから、「あいつだって喜んでいたじゃないか」の裏側に、ジブンが看過していた相手の本心と自分の慢心に気づかなくてはいけない。
でなければ、いじめの問題を理解する事なんてできない。

誰でも自己正当化は得意科目だ。
だから本気で考えないとどこかで「ジブンは悪くない」という結論を引き出して問題を忘れようとしてしまう。
それは仕方ない事なのかもしれない、人間てのは弱いから。けれど、そういう結論になったとしても「忘れない」となったらどうだ?
「忘れない」限りなんどでも思い返す。納得できなければ何度でも思い返す。認めざるを得ないのだ、自分がいじめをして人を追い詰める可能性がある事を。
まぁ、全ての人が持っていると思うのだけどね。

最後の方、園部君が井上君に言う
「野口、生きていて良かったな」
「。。。。。。あぁ、良かった。生きていてくれて」
園部君のセリフは奇跡だね。ほっとする。
井上君も単にフツーの中学生でしかないことにあらためて気づく。

一番最後の授業で村内先生は言う
「反省文を『今から書き直したい』人は原稿用紙をとりにきてください、その他の人は自習してください」と。
クラスの四分の一ほどか、反省文を書き直しに来たのは。

全員が書き直す、なんて劇的な事は現実にはありえない。それこそメルヘンだ。(でなければ本気でないかだ)
でも確実に何人かはいじめを忘れない事を決心した瞬間だ。
井上君がどんな反省文を書くのかは映画の中では明らかにはならない。けれど、もう先生の検閲なんて必要ない事は疑いが無い。

「教師が何かをできるわけではない。教師は生徒のそばにいることしかできない。」
もちろん、本気で話す事が前提条件ですね。

淡々とした見せ方は、映画としてはつまらない(をい。。。)し、見ていてじれったいけれど、この映画で村内先生にメッセージを伝えさせるならば、必要なことだったかもしれない。

阿部寛の変幻自在ぶりにあらためて驚きますな。

青い鳥@京都シネマの画像